第4回:チェンマイ女性の理髪事情
2013年06月21日
【written by 馬場容子(ばば・ようこ)】東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。【最近の私】暑い毎日! 近所にできたドイツ人が経営するカフェ&レストランでマンゴ・ミント・スムージーを満喫。うちで採れたミントで今度トライしてみようかな。
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今でこそチェンマイの女性たちは様々なヘアスタイルを楽しんでいますが、伝統的なスタイルは、長い髪を束ねまとめ上げて生花を飾るというもの。
タイ風の髪結いスタイル
日本同様に、昔はまっすぐの長い髪が美しいとされていたようで、髪のお手入れはタイ人女性の大事な身だしなみの一つです。かつてはマクルッ(コブみかん)の果実を使って髪の毛の艶出しやトリートメントをしていました。その名残なのか、スーパーなどではマクルッを使ったシャンプーなどのヘアケア商品をよく見かけます。
マクルッのシャンプー
数年前のこと。私がいつも縫製をお願いしているおばさんは、まっすぐな黒髪を腰まで伸ばしているヘアスタイルでした。でも、ある日突然バッサリと短くカットしてきたのです。驚いて理由を尋ねてみると、「髪の毛を売ってきたの」。
彼女は自分の髪の毛をかつらや付け毛用に500バーツ(1500円)で売ったのでした。価格は長さやまっすぐかどうかなどの状態で変わるそう。きっと今頃、彼女の髪はタイの舞踊用のカツラなどに変身していることでしょう。
■自由気ままななご近所理容室
さて、私もチェンマイで髪をカットすることがありますが、パーマやオシャレなカットはちょっと怖くてリクエストする勇気がありません。言葉の問題に加えてカット技術がまだ心配・・・。なので、ふだんはまっすぐ揃えるだけのカットやカラーリング、特別な日でも髪結いをお願いするくらいにしています。
家の近所にもいくつかの理容室があります。街にはオシャレな美容室ができていますが、ご近所はなんといっても気軽なのが魅力です。
最近の行きつけはウアンさんがやっている小さな理容室です。
ご近所の理容師、ウアンさん ウアンさんの理容室
平日は暇そうで、たまにウアンさんの子どもが順番待ちのための椅子で寝そべって本を読んでいたり、お店と隣接している彼女の家からお昼ごはんを持ってきて食べていたり。一家の生活が垣間見られる所がいかにも地元らしい理容室です。
チェンマイの理容室ではシャンプーの時に水を使うことが多く、初めての時はいろんな意味でヒヤッとしました! 仰向けに寝ている時の顔にシャワーの水がかかってきたりして、日本の至れり尽くせりなサービスからは程遠いと言えます。それでも、地元の理容室ならではのおおらかさはここでしか味わえない居心地のよさを感じさせてくれるのです。
混んでいる日はいろんな光景を見かけます。
パーマのロットを巻いたままおしゃべりに夢中の女性客たち、タオルを頭に巻いたまま外の屋台でお昼ごはんを食べている人、スーパーで買ってきたカラー液をそのまま渡して染めてもらっている人もいます。シャンプーなしの簡単カットだけの人、お出かけ前の髪をブローセットする女性も・・・。
日本の理容室はもちろんチェンマイの街中の美容院では見られない、女性たちの自然な姿にふれることができます。そしてウアンさんもそんな自由さを楽しみ、一人ひとりのリクエストに応えてくれるのです。私も以前、遠方の知り合いの結婚式に出席するために、朝5時過ぎにわざわざお店を開けてもらい髪を結ってもらったことがありました。
そんな地元密着型の理容室。相場価格は日本円で500~600円と、街中の美容院の半額。ウアンさんに聞くともっと儲かるような仕事の仕方もできなくもないと言うのですが、お客さんとのアットホームな関係が好きだし、そして何より家族といつも近くにいられる働き方に十分満足しているそうです。
ウアンさんのおおらかさが息づいているチェンマイの理容室は、地元の女性たちの井戸端会議の場として、そして家庭の財布を切り盛りする女性たちの強い味方として必要とされ続けているのです。さて、次のタイ風髪結いはどんなふうにしてもらおうかな!?