そのおじさん、凶暴につき。
韓流アクション映画『アジョシ』の予告編。
2011年09月22日
【written by 鈴木純一(すずき・じゅんいち)】映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。【最近の私】夏の映画では『トランスフォーマー』『ハングオーバー!』が面白かったです。 もうすぐ公開される映画で期待しているのは『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』と 『ゴーストライター』です。
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"韓流"という言葉はすでに日本で定着し、現在ではレンタルビデオ店で韓国映画やドラマのDVDが数多く置かれている。"アクション"や"ラブストーリー"のように"韓流"というジャンルの棚が出来るぐらいの勢いだ。韓国映画では『カンナさん大成功です!』(2006年)などのラブコメも面白いが、個人的に好きなのはサスペンス『殺人の追憶』(2003年)や『母なる証明』(2009年)、それからアクション『甘い人生』(2005年)である。今回紹介するのは、『母なる証明』に出演していたウォンビンが主演の映画『アジョシ』の予告編である。
予告編は、2010年韓国No.1興行収入のテロップ。そして少女ソミ(キム・セロン)が
「おじさんだけは、私を分かってくれるよね」のセリフで始まる。
タイトルにもなっている"アジョシ"はハングル語で"おじさん"の意味である。
そして"おじさん"と呼ばれているのはウォンビン。ちょっと待って!ウォンビンは1977年生まれで、まだ33歳である。おじさんと呼ぶには、ちょっと若いのでは?
そして予告編は、タイトルが出た後、おじさんの普段の仕事が明かされる。
孤独な少女の味方は、隣の質屋のおじさんだった。
質屋のおじさんに扮するのはウォンビン。
でも、ソミはおじさんには何かあると気づいていた。「おじさんはヤクザ?」と問うソミは、
「もしおじさんが悪い人でも嫌いにならない。もしおじさんを嫌いになったら、私の好きな人がいなくなる」。泣かせるセリフですね。ソミを演じるキム・セロンは『冬の小鳥』(2009年)で繊細な少女を演じて注目された若き俳優である。
そしてソミが謎の男たちに誘拐される。男たちの目的は、ソミの母親が質屋に預けたカバン。そのカバンの中身は何なのか?中身と思われる、白いモノが入ったビニール袋。さらにソミが誘拐されて...一気に緊張感が高まる。
そして、おじさんが髪の毛を剃る。『タクシードライバー』(1976年)では世の中に不満を抱えたロバード・デ・ニーロがモヒカンにし、『狼の死刑宣告』(2007年)で復讐に燃えるケヴィン・ベーコンが髪の毛を剃るシーンがある。いつの時代でも、怒る男たちは髪の毛を剃るんです。
『アジョシ』予告編は、ここから質屋のおじさんが実は恐るべき戦闘能力を持つ人物であることが判明する。ソミを誘拐した男たちが、おじさんの経歴を見て言う。
「この男には、過去の記録が何もない」
過去のない男って『ボーン・アイデンティティ』(2002年)のジェイソン・ボーンみたいだ。そして残念ながら悪党たちが気づいた時にはもう遅い。おじさんがアジトに殴りこみをかけるのだ。
「お前は何者だ?」と問われたアジョシは、ひと言だけ答える。「隣の家のおじさん」と。
そして、おじさんVS悪い集団の激しいバトルが繰り広げられる...。
この予告編を見て思ったのは二つ。まず『アジョシ』と『レオン』(1994年)の共通点ですね。孤独な質屋と少女の友情って、『レオン』の孤独な殺し屋と少女の友情の物語という点で似ている。もう一つは予告編の構成だ。アジョシと少女が出会う。やがて2人は親しくなる。しかし少女が誘拐され、アジョシの意外な正体が分かる。そしてアジョシが少女を救うために悪のアジトに殴りこみをかける。という起承転結に沿って作られた分かりやすい予告編だ。分かりやすいので、もう本編を観なくても内容が分かったよと思う人もいるかもしれない。でもアクション好きとしては、韓国映画で『レオン』がどう再構築されているか観てみたい。ということで、映画館まで行って確認してきます!
今回注目した予告編
★『アジョシ』
監督・脚本:イ・ジョンボム
出演:ウォンビン、キム・セロン
9月17日より公開
公式サイト:http://www.ajussi2011.jp/pc/