【悪役を語るコラム】無敵な悪のヒーロー、『ターミネーター』
2011年12月15日
【最近の私】話題の小説『ジェノサイド』を読みました。期待を裏切らない、一気読みの面白さでした。来年も面白い映画や本と出会えますように。
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『ターミネーター』が公開された時、アーノルド・シュワルツェネッガー扮するターミネーターの姿は衝撃的だった。撃たれても起き上がり、爆発でも死なず、どこまでもしつこく追い続けてくる様子を観て、当時中学生だった僕は「ターミネーターって怖いな...」と感じたものだ。しかし怖いと思う一方で、映画を見終わる頃には、僕はこのターミネーターに魅了されていたのである。その魅力とは、シュワルツェネッガーの強面な顔と屈強な筋肉が、ターミネーターそのものであるということ。彼は見事に不死身のサイボーグになりきっていたのだった。
シュワルツェネッガーはもともとオーストリア出身のボディビルダーで、アメリカに渡った後に俳優を目指す。しかしオーストリア訛りが抜けず、代表作といえば『コナン・ザ・グレート』ぐらい。そんな彼の英語をサイボーグという無口な設定で封じたのが、『ターミネーター』の成功のポイントだった。今では信じられない話だが、シュワルツェネッガーは最初、ターミネーターと戦うカイル・リース役をオファーされていたという。それが、監督のジェームズ・キャメロンの判断でターミネーターを演じることになった。
シュワルツェッガーをサイボーグ役にした時点で、この映画の成功は約束されたといっていい。ちなみに当初ターミネーター役の候補だったのは、『ターミネーター』では刑事役のランス・ヘンリクセン。後にキャメロンが撮った『エイリアン2』でヘンリクセンがアンドロイドを演じているのは、キャメロン監督の粋な計らいだ。
『ターミネーター』で僕の1番のお気に入りのシーンは、ターミネーターが警察署で警官たちを相手に大暴れする場面だ。大勢の警察官を銃で撃ちまくる姿はヒーローのようにカッコよく、悪役でありながら「いいぞ、やってしまえ!」と声援を送るほどだった。日本で『ターミネーター』が公開された時に配給会社が考えたキャッチコピーは「悪のヒーロー」。悪いのにヒーローとは矛盾しているが、うまい表現だ。『ターミネーター』はパート4まで製作されてドラマ版も放送されたが、僕にとってはシュワルツェネッガーの個性を最大限に生かした第1作目がシリーズ中のベストである。
『ターミネーター』が日本で公開されてから26年経った今年、シュワルツェネガーに10歳の隠し子がいることが判明。夫婦は離婚するという結果となった。スクリーンでは無敵の男を演じたシュワルツェネガーだったが、実生活では浮気という弱い一面を見せられることになってしまった。ファンとしてはなんとも複雑な心境である。