【悪役を語るコラム】この悪女が怖い! レナ・オリンin 『蜘蛛女』
2012年10月12日
【written by 鈴木純一(すずき・じゅんいち)】映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。【最近の私】銀座シネパトスとシアターN渋谷の閉館が決まり、お気に入りの映画館が消滅しています。そんな中、11月に新宿にミニシアターが11月に開館するという嬉しいニュースもあります。がんばれ映画館!
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映画には、これまで数多くの悪女が登場してきた。思いつくだけでも『氷の微笑』のキャサリン(シャロン・ストーン)、『ゆりかごを揺らす手』のペートン(レベッカ・デモーネイ)、『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』のエレクトラ(ソフィー・マルソー)などがいる。今回はその悪女の中から、『蜘蛛女』のレナ・オリンが演じたモナを紹介したい。
この映画の主人公は、ニューヨーク市警の刑事ジャック(ゲイリー・オールドマン)。彼はマフィアと密通して金を稼ぎ、妻がいながら愛人との関係を楽しむ堕落した男だ。そしてジャックは、1人の女の殺害を命じられる。女の名はモナ(レナ・オリン)。モナは相手が刑事だろうがマフィアだろうが構わず殺してしまう、恐ろしい人間だ。そのため、彼女はマフィアから命を狙われていたのだった。
しかしジャックはモナに会った瞬間、魅了されてしまう。真っ赤な口紅を塗った彼女は不敵な笑みを浮かべ、タイトなスカートにセクシーな下着という姿で脚を広げてジャックを誘惑する。その様子は、獲物を捕らえようとする蜘蛛のよう。まさに、タイトル通り"蜘蛛女"だ。この状況に女好きのジャックが抵抗できるわけもなく、まんまとモナの手に堕ちる。
それでも映画の後半、ジャックはモナの腕を銃で撃ち、何とか彼女を捕える。後ろ手に手錠をかけ、車で連行するジャック。ここでまたもやモナが"蜘蛛女"ぶりを発揮する。後部座席に乗っていた彼女は脚を広げて、運転しているジャックの首をギリギリギリッ!と締め上げる。走っている車の運転手を襲うなんて、事故を起こされたら...と思えば普通はしないはずだ。にもかかわらず、もがくジャックの首を締め、そのうえ高笑いまでするモナ。案の定、車は街灯に激突し、ジャックは気を失う。モナは、血まみれで手錠をかけられたまま、脚で車のガラスをぶち破る。そしてハイヒールを脱ぎ捨て、無人の道路を走り出すのだ。撃たれても事故に遭っても死なない"蜘蛛女"の姿が印象に残るシーンだ。
モナは自分が生き残るためには手段を選ばない。そのために犠牲となる人間には同情もしない、冷酷でサイボーグのような女だ。レナ・オリンが演じるモナは、まれに見る悪女だ。その極悪非道のキャラクターのおかげで、『蜘蛛女』は忘れがたい映画となっている。