気ままに映画評

ジェームズ・ボンド映画の新たな幕開けとなる『007 スカイフォール』

Text by 鈴木純一

007.JPG2012年は、ジェームズ・ボンドの映画『007』シリーズ50周年となる"ボンド・イヤー"。その50周年を記念する最新作『スカイフォール』を一足早く、ジャパン・プレミアで観てきました。これまでのシリーズ作同様、見どころ満載ですが、今回はその中から僕が注目するポイントを3つ挙げてみました。

◆ポイントその1:ボンドを人間として描くリアルなドラマに
今回の『007』では、イギリスの諜報機関MI6に所属するスパイのリストが盗まれてしまう。そのリストを取り返そうとするボンドだが、奪還作戦は失敗に終わる。ボンドと上司のM(ジュディ・デンチ)はその責任を負うこととなり、「現代にスパイが存在する理由があるのか?」という問いを突き付けられるのだ。ボンドやMの苦悩する姿を描く人間ドラマとして、深みのある物語となっている。

◆ポイントその2:今回の敵は元MI6のスパイ!
本作でボンドと対決するシルヴァは、かつてMI6に所属していた優秀なスパイだった。しかし悪の道に堕ち、Mにスパイとしての存在を抹消されてしまう。Mへの復讐に燃えるシルヴァを演じるのは、『ノーカントリー』でアカデミー主演男優賞を受賞したハビエル・バルデム。スパイからテロリストに変貌した男を、狂気を漂わす演技で見事に演じています。

◆ポイントその3:原点への復帰、そして新たなる展開へ
本作はトルコや中国、マカオがロケ地となっているが、主な舞台はイギリスだ。これにより、ボンドの本拠地であり、原点でもあるイギリス色が強く打ち出されることになった。また、ロケ地だけではなく、他にも『007』の原点に戻ろうとする様子が感じられる。まず、かつてのボンド映画には登場していた秘密兵器担当のQが、グレイグ版ボンドでもついに姿を見せる。これまではデズモンド・リュウェリンやジョン・クリーズなど、年配の俳優が演じてきた役柄だが、今回のQは若手俳優ベン・ウィショー。他にもボンド映画でおなじみのキャラが出てくるが、それは観てのお楽しみ!そして『007/ゴールドフィンガー』などに出てきたボンドカー、アストン・マーチンDB5も再び登場するなど、シリーズファンにはうれしい見どころとなるだろう。

『スカイフォール』はボンド映画への原点に戻り、そして新たなシリーズの幕開けとなる作品になった。次回作は2014年に公開予定というが、早くも続きが観たくなってくる。

シリーズの中継ぎ!? でもやっぱり面白い!『バイオハザードⅤ:リトリビューション』

Text by 鈴木純一

バイオハザード.JPG今作『バイオハザードⅤ:リトリビューション』は、大ヒットゲームを映画化した『バイオハザード』の第5作目となる作品。2002年に第1作目が公開されてから10年間で5本が製作されているとこのシリーズは全作観ているので、今回は最新作の紹介とともにシリーズの魅力についても考えてみた。

バイオの魅力はまず作品毎のストーリーの変化だろう。ⅠとⅡでは都市を舞台にアンデッド(ゾンビ)との戦いが繰り広げられたが、Ⅲでは砂漠を舞台に『マッドマックス』のような世紀末感を出している。さらにⅣは、シリーズ初の3Dで製作され、刑務所を舞台に『プリズン・ブレイク』のような展開にするなど、常に新しいテイストを加えている。

次は何といってもアリスを演じるミラ・ジョヴォヴィッチの存在感だ。ミラ本人もゲームの「バイオハザード」の大ファンで、第1作が製作されると聞き、自ら出演に名乗り上げたほどだから、全裸に布をまとっただけのセクシーでショッキング姿を披露したり、ほとんどのアクションも自分で演じているなど、とにかくそののめり込み方というかアリスを演じることへのエネルギーが見ているこちらにも伝わってくる。そんなミラの情熱的な演技やアクションを観るだけでも価値はある。

もう一点、このシリーズが人気なのは、その"楽しさ"だろう。アクションとホラーを適度にちりばめており、『ダークナイト ライジング』のように重厚さ大作ではないが、まるで遊園地のアトラクションに乗っているようなワクワク感がある。終わった後には何も残らないが(褒めてます・笑)、とにかく楽しいのだ。シリーズのほとんどは上映時間が90分台で、鑑賞には適度な長さだ。「アクションでも観ようかな」と思う時にはおすすめである。昔、CMで「おせちもいいけど、カレーもね」というのがあったが、それと同じ。「『ダークナイト』もいいけど『バイオ』もね」である。

さて、最新作の『リトリビューション』だが、ホラー色は薄まって、激しい銃撃戦と爆発の連続で戦争映画のようになっている。冒頭から終わりまでアクションのつるべ打ちだ。加えて、第1作目のレイン(ミシェル・ロドリゲス)、Ⅱのジル・バレンタイン(シエンナ・ギロリー)といった名キャラクターたちも再登場するのもファンにはうれしいところだろう。そして全作同様、3D映画となっており、スクリーンに向かって投げられる武器や、弾丸が飛んでくるシーンにビクッとさせられる。Ⅳでは雨が降ったり、水しぶきを立てて戦うなど、"水"が印象的だったが、本作では雪の中でアリスとジルが『キル・ビル Vol.1』ラストのユマ・サーマンVSルーシー・リューのような迫力ある肉弾戦を繰り広げる。『バイオハザード』は次作で完結といわれている。『リトリビューション』は終わりに向けての中継ぎ映画の感はあるが、アクション映画として健闘している。完結編に期待したい。

ミステリーからラブ・ストーリーに昇華する『ドラゴン・タトゥーの女』

                                                 Text by 鈴木純一

ドラゴンタトゥー.JPGデヴィッド・フィンチャー監督の『ドラゴン・タトゥーの女』予告編を観て、「世界的ベストセラー三部作、完全映画化!」のテロップで「もう映画化されているよ!」と思ったのは自分だけではあるまい。

スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンが書いたミステリー小説『ミレニアム』3部作は、2009年の『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』を始めとする映画三部作としてすでに製作されている。『ドラゴン・タトゥーの女』はリメイクなのだ。自分は原作の小説を読んでいないが、オリジナル版の映画を観て、それほど面白く感じなかった。これは長い原作をすべて描ききれていないのが原因かもしれないが。というわけでフィンチャーは好きな監督だが、一抹の不安を持って観た。その結果、リメイク版は期待を(いい意味で)裏切る面白さでした。

まずオープニング・タイトル。黒い人影がうごめく不気味な映像と、レッド・ツェッペリンの曲「移民の歌」のカバーがうまく交わっている。フィンチャーはミュージック・ビデオの監督出身なので、音楽と映像を組み合わせるのは得意だ。このオープニングで観客の心をグッと掴みます。

40年前に富豪一族の娘が失踪した事件を追うというストーリーは、それほど目新しい設定ではない。しかし事件を捜査するジャーナリストと天才ハッカーを演じる2人の俳優が素晴らしい。まずは挫折したジャーナリスト、ミカエル演じているダニエル・クレイグ。ダニエルはジェームス・ボンドに扮して強いヒーローの印象がある。本作では挫折して枯れた雰囲気で、なかなかいい味を出しています。そして最も魅力を発しているのが天才ハッカーのリスベット役のルーニー・マーラだ。つらい過去を背負い、他人との触れ合いを拒絶する孤独なリスベットを見事に演じている。ルーニーのリスベットは、オリジナル版を超えていると言っても過言ではない。ルーニーは本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのも納得だ。

オリジナル版とフィンチャー版を比べると、フィンチャー版ではいくつかのエピソードを刈り込んでおり、スッキリした感じがする。フィンチャー版で印象に残ったのは、ミカエルが拷問を受けるシーンで流れる曲がエンヤの「オリノコ・フロウ」という点。癒し系といわれるエンヤの曲を残酷な場面で流すフィンチャーの皮肉な演出で、不謹慎ながら笑いそうになった。

あと、終盤の展開だが、フィンチャー版はオリジナル版とはで大きく異なっている。富豪一族で起こった事件を解き明かすミステリーは、恋の物語として終わるのだ。このエンディングも含めて、深い余韻を残すフィンチャー版の方が好きです。原作を読んだ人もそうでない人も、映画館で観ていただきたい作品である。

挫折した異端者の抵抗が
やがて大きな変化を起こす映画『マネーボール』

                                               Text by 鈴木純一    

マネーボール01.jpg『マネーボール』というタイトルから「ビジネスと野球を結びつけた映画なの?野球も詳しくないし、『もし高校野球のマネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』も読んでないし」と思った人、安心してください!ビジネスに疎くても『もしドラ』を読んでなくても『マネーボール』は楽しめます。

主人公のビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は野球チーム、アスレチックスのゼネラルマネージャーを務めている。ところが、アスレチックスは予算が少ないため、成績が良い選手を雇いたくても、お金を持っているチームに高いお金で先に契約されてしまう。そこで「お金の無いチームでも勝てるチームを作る」ために彼が考えたのが「マネーボール理論」だ。これは、ホームランを打てる年俸の高い選手を雇う代わりに、年俸は高くないが出走率の高い選手をスカウトするというもの。そして過去の打率などの詳細な数字上のデータを基に選手をトレードして強固なチームに変えていく、という理論だ。
イエール大学卒業のピーター(ジョナ・ヒル)をアシスタントにし、「マネーボール理論」を元に次々とチーム改革を行っていくビリー。誰の目から見ても無謀な彼の戦略は「数字や理論だけで野球に勝てるものか!」とチームのスタッフや監督から反発を買うが、そんな中アスレチックスに少しずつ変化が起こってくる...。

ビリーはかつて将来を約束され、大金でメジャーリーグにスカウトされた選手だった。しかし周囲から期待される重圧に勝てず、好成績を残せずに挫折してしまう。過去の経験から「大切なことはお金で判断しない」を自分に課してチームを育てるビリーを、ブラッド・ピットが好演している。


マネーボール02.jpg『マネーボール』は実話を基にした映画。脚本を手がけたのは『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソーキンと、『シンドラーのリスト』のスティーヴ・ザイリアン。どちらも実在の人物を主人公にした映画だ。そして本作の監督ベネット・ミラーも『カポーティ』で実在の作家トゥルーマン・カポーティを描いていた。3人の共通点は、実在の人物を描くことに長けていることだ。『カポーティ』でアカデミー主演男優賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマンが『マネーボール』ではアスレチックスの監督役で登場している。せっかくアカデミー賞俳優を出演させているのに、彼は常に腕を組んで唸っている役なので、もったいない感じもするが。

『マネーボール』は、挫折した異端者が独自のアイディアを持ってメジャーリーグ界に大きな変化をもたらす人間ドラマとして、野球が詳しくなくても見応えのある作品となっている。ビリーが行ったチーム改革の結果はどうなったのか?その結末は映画館で観てください。

『トーキョードリフター』 トークショー潜入レポート&映画レビュー

                                                  
2011年5月、過ぎ去った東京の姿。
『トーキョードリフター』

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第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」作品賞を受賞した『ライブテープ』を制作した松江哲明監督と主演の前野健太のコンビが帰って来た。今回、2人が引っ提げてきた作品は『トーキョードリフター』。3月11日の東日本大震災から2ヵ月たった後の「ネオンの消えた東京」をテーマにした作品だ。
この映画を今年の10月22日(土)~10月30日にかけて行われた第24回東京国際映画祭の上映会に日本映像翻訳アカデミーの修了生が潜入。
映画を観ての感想をここでレビューする。

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                                                text by好中由起恵

トーキョドリフタ.jpg3月11日の東日本大震災から7ヵ月が過ぎた。その爪跡はまだ残るものの、東京や関東近辺の人々の多くは日常を取り戻しつつある。しかし、震災直後はこうではなかった。きっと皆さんも覚えているだろう、ネオンが消えて暗くなった東京の街を。

『トーキョードリフター』で描かれているのは、まさにその「傷ついた東京の姿」だ。震災から約2ヵ月がたった5月の東京の街で、陽が落ちてから昇るまでの約10時間、アーティストの前野健太がバイクで移動を続けながら歌い歩く。そんな前野さんの姿を追い72分間の映像にまとめ上げたドキュメンタリーだ。ただし、そこにセリフは一切ない。あるのは前野さんの歌と傷ついた東京の姿。その2つだけだ。

なぜ、「傷ついた東京」と「前野さん」なのか。一見ミスマッチに思えるこの2つを組み合わせた監督の意図は何なのだろうか。前野さんが歌う歌詞も震災そのものとは関係なく、"この街が好き"とか"おっさんの夢"とか"ファックミー"とか、どれも前野さんがいつも歌っている歌だ。このミスマッチの第一印象にも関わらず、私は最初から最後まで飽きることなく画面に見入ってしまった。そして不思議なことに、観終わった後にとても温かい気持ちに包まれた。一体、なぜなのだろうか。最初は分からなかったその理由が、上映後に行われた前野さんの挨拶で明らかになった。

映画の上映後の挨拶で、主演の前野さんはこう語ったのだ。

「撮影中は、きっと面白い映画になるだろうという予感はあったものの、正直言って具合も悪かったし、やりたくないという気持ちが強かった。雨でずぶ濡れになるし、すごくつらかったから。こんなことをやらせる、松江さんはなんてひどい人なんだと思っていたくらいです。でも、さっき映画を観ていたらやっぱりよかったんだなぁ、と思って思わず隣にいる松江さんに握手をしてしまいました(笑)。きっと、このスタッフ陣以外だとこんないい作品にならなかったと思うし、僕はこのメンバーじゃなければ映画には出なかったと思います」

前野さんがメンバーと呼ぶのは総勢7名のスタッフだ。共に「ライブテープ」を作り上げお互いに厚い信頼関係で結ばれた7人。恐らく私は、この7人の「絆」を映画の世界観の中に感じたのだろう。特にドラマのようなストーリー性のないドキュメンタリー作品においては、カメラを回す人間の息遣いや現場の空気感までもがもろに伝わってくる時がある。ましてや、セリフが1つもない『トーキョードリフター』では、言語を超えて心や体で感じ取れるものしか存在しない。そして私はそこに、「信頼のおける人同士の強い結びつき」を感じ取ったのだ。

震災後、多くの人が考えさせられたのは「人生における優先順位」だろう。あらゆるものを失った時、人にとって一番大事なものが見える。もちろん、この優先順位は人それぞれでいい。でも、震災後に私が人生で一番大事にしたいと思ったのは「家族や、身近にいる大切な人との繋がり」だった。それだけに、「信頼のおける仲間たちの絆」が垣間見える本作を観て、とても温かい気持ちに包まれたのだろう。

「信頼のおける仲間同士の絆」が描かれた『トーキョードリフター』は、12月10日より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開となる。震災発生時からしばらく時間が経って記憶が薄れつつある今こそ、ぜひ観てほしい映画だ。


『トーキョードリフター』の公式HPはコチラ
http://tokyo-drifter.com/


東京国際映画祭の公式HPはコチラ
http://2011.tiff-jp.net/ja/

『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』
トークショー潜入レポート&映画レビュー

                                                  text by 鈴木純一

『ドラゴン 怒りの鉄拳』にオマージュを捧げたカンフー・アクション大作
『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』!


ドニー表.jpg新宿武蔵野館で"香港アクション列伝BIG4"と称し、香港映画4本が連続上映されている。その第2弾として上映されている『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』を観てきました!『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』は、ブルース・リー主演の『ドラゴン 怒りの鉄拳』の続編だ。『怒りの鉄拳』のラスト、虹口道場で宿敵の日本人を倒したチェン・ジェン(ブルース・リー)は銃弾に倒れたが、『レジェンド』ではチェンは生きていて......という物語である。

『レジェンド』の舞台は、1925年に日本やイギリスなど各国が策略を進める上海。チェン(ドニー・イェン)は日本軍に対抗する運動を進めるが、日本軍は抵抗する人間たちを次々に処刑していく。EXILEのAKIRAが日本軍の暗殺隊長として出演しているが、この時代に髪型がポニー・テイルの軍人はいないだろ!というツッコミはやめましょう。これは映画ですから(笑)。しかし、日本軍が中国人に対して非道の限りをつくすシーンは日本人の自分から見ても「日本人って、ひどい......」と思わせるほどだ。

そしてチェンは黒い詰襟服とマスクをつけた仮面の戦士として、日本軍人たちを倒していく。この黒ずくめの衣装は、60年代のテレビドラマ『グリーン・ホーネット』でブルース・リーが演じたカトーの衣装にそっくりだ。今年になって映画版『グリーン・ホーネット』が公開されたが、ドニーが「カトーをやるなら、こうやれよ!」といわんばかりの大活躍である。でも、もしドニーがカトー役だったら、強すぎてグリーン・ホーネットは必要ないんですけれどね。映画の中盤、新聞社の室内でド派手に周りのモノを壊しながら繰り広げられるバトルは凄い迫力。ここで展開されるドニー対AKIRAの対決は見ものです。

そしてクライマックスでは、チェンは白い詰襟服を着て再び虹口道場へ向う。白い衣装は『怒りの鉄拳』の冒頭でリーが着ていた白い詰襟服と同じである。そして大勢の日本人たちを相手にただ1人、最後のバトルを繰り広げる。アクション映画好きとしては、このシーンで興奮が沸点に達しました。チェンが「アチョー!」というリーばりの怪鳥音と共に蹴りやパンチを繰り出す。そしてヌンチャクを振り回すのも『怒りの鉄拳』でリーがヌンチャクを使っていたことへのオマージュですね。自分は日本人なのに「ドニーがんばれ!日本人を倒せ!」と応援しました。そしてドニーが「中国人はアジアの病人ではない!」とオリジナル版でリーが言ったセリフを発する。そして戦う途中でジャケットを脱ぐが、48歳とは思えない筋肉!宇宙最強の48歳です。
『レジェンド』はドニーが敬愛するブルース・リーの『怒りの鉄拳』にオマージュを捧げた"怒りの続編"となった。そしてアクションだけではなく、『インファナル・アフェア』のアンソニー・ウォンやショーン・ユー、『トランスポーター』のスー・チーなど豪華な共演者たちが脇を固めて、歴史に翻弄される人間ドラマとしても見応えのある作品になった。香港映画ファンだけではなく、映画好きなら見逃す手はない。


EXILEのAKIRAは20歳のバンドマン!?
出演者によるトークショーは笑いが盛りだくさん

11-09-30_006.jpg上映後は、『レジェンド』で山崎中尉を演じた舟木壱輝さんと、武術指導を担当した谷垣健治さんが登場してトークショーが始まった。谷垣さんは1993年に香港に渡り、香港映画でアクション指導を担当してきた。日本でも数多くの映画で活躍しており、現在撮影中の実写版『るろうに剣心』でアクション監督を担当している。

谷垣さんは「ドニーは1995年に香港で放送された人気ドラマ『精武門』(『怒りの鉄拳』の原題)に主演し、それから再び『怒りの鉄拳』を作ろうとしていた。1999年に製作する話が出て、日本で製作の準備もしていた(共演者の候補は中山美穂だったそうだ)。しかしその話がなくなり、2009年に『レジェンド・オブ・フィスト』として製作されることになった」と、ドニーの本作にかける情熱を語った。舟木さんはドニーについて「ドニーさんはクライマックスで服を脱ぐので、このシーンのために撮影の合間に腕立て伏せをするなど、絶えず筋肉を鍛えていた」と、彼の俳優としてのプロフェッショナルぶりについて話した。

そしてEXILEのAKIRAが出演したことについて谷垣さんは「中国のスタッフから、日本人のバンドマンが出演することになった、年齢は20歳と言われていた。でも来たのはAKIRAさんだった。EXILEはバンドじゃないし、それに彼は20歳じゃないから(笑)!
でも、アクションシーンでのAKIRAのリアクションは予想外で面白いってドニーがほめていたよ」と撮影の様子について話した。

ドニー裏.jpgまた、ドニーはAKIRAと戦うシーンで、AKIRAに最後の一撃を打たずに終わるのだが、この理由としてドニーは「あまりAKIRAを殴ったら、日本のAKIRAファンに俺がひどいヤツだと思われるから」と話していたのだそうだ(谷垣さん談)。しかし映画が完成し、AKIRAの悪役キャラぶりが際立っているのを観ると、「もっと殴っとけばよかった」と思わず後悔の声を漏らしていたのだそうだ。

さらに『レジェンド』でドニーは黒い仮面と服を着た仮面の戦士となるが、谷垣さんは「当初はドニー演じるチェンはバットマンのようなヒーローで、彼の妹役のチョウ・ヤンがバット・ガールになって、ドニーと一緒に活躍する予定だった」と意外な裏話も教えてくれた。

このように、トークショーは現場の裏話が満載の中身の濃い時間となった。『レジェンド』以降も、武蔵野館では『アクシデント』『密告・者』が上映される。香港映画が連続して上映されるイベントは少ないので、この機会に観に行ってはいかがでしょうか。

第4回したまちコメディ映画祭クロージング作品
『モンスター上司』のジャパンプレミア上映は大盛況の内に終了!

                                     Text by 日本映像翻訳アカデミー編集部

IMG_0808.jpg9月19日(月・祝)、浅草公会堂にて第4回したまちコメディ映画祭のクロージングとして特別招待作品『モンスター上司』のジャパンプレミア上映が行われた。当日は、映画祭の最終日ということもあり、大勢の来客でにぎわった。映画の上映前には本映画祭のチーフディレクター大場しょう太氏ら関係者4名が登壇。『モンスター上司』という映画にちなんで、自分だったらどういう上司が嫌いか、という話に及んだ際には「ずっと仕切っていたくせに、事業がうまくいかなくなると、部下に責任を押し付ける上司」などと話して、会場を沸かせていた。


また、来場者プレゼントとして、ジェニファー・アニストンと部下役の主演3名のサイン入りポスターが提供され、じゃんけん大会が急遽行われることに。接戦の末、コリン・ファレルが好きだという女性が見事獲得し、歓喜の表情を見せていた。

IMG_0833.jpg映画の内容はまさにタイトル通り。ニック、カート、デイルの3人は、パワハラ、セクハラ、バカハラ上司と、それぞれ耐えがたい上司の下でうんざりする日々を送っていた。自ら会社を辞めるつもりはない3人は少しでも仕事をマシにするため、バーで知り合った見るからにムショ帰りの強面の助言を受け「上司殺害計画」を練る。ところが、いざ計画を実行に移そうとすると、そこには大きな落とし穴が待っていた......。


イメージ画像.JPG見所はなんと言ってもニック、カート、デイルのおバカ3人による連携の取れたコメディだが、同じくおバカな3人の上司も見逃してはならない。自身の権力を誇示したいがために、部下にめちゃくちゃな要求を浴びせるパワハラ上司に、毎日息をつかせぬほど部下にワイセツ行為を働くセクハラ女上司。そして、先代の社長の急死により社長の座につくことになった放蕩息子のバカハラ上司。それぞれ、絵にかいたようなとんでもない上司だ。

特に注目したいのは、ドラマ『フレンズ』のレイチェル役でもお馴染の人気女優ジェニファー・アニストン演じるセクハラ上司だ。歯科医師である彼女のセクハラぶりは、とにかくぶっ飛んでいる。突然、部下を呼び出し、裸にエプロンならぬ裸に白衣で迫ったり(しかも遠隔操作で部屋に鍵をかけて部下を逃げられなくする。一体、どんな病院だ・笑)、麻酔薬を悪用して悪戯したりと「ジェニファー、本当にそこまでやっちゃっていいの!?」と思わず心配してしまうが、コメディの女王の貫録を堂々と見せつけている。ある意味、ジェニファーファンにとっては嬉しい映画かもしれない。

作中に登場する3タイプのダメ上司は三者三様だが、その中にきっと誰もが「私の職場にもいる!こういう人」と、あなたの身近なダメ上司の姿を見つけられることだろう。

本作は10月29日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにて全国ロードショーになるため、ぜひ映画館に足を運んで自身の目で確かめてみてほしい。

『モンスター上司』公式HP

最強のアクション『導火線(FLASH PONT)』で
心の導火線に火をつけろ!

                                              Text by 鈴木 純一


B5チラシ-1-01.jpg中国では"宇宙最強"と呼ばれるほどの人気を博しているアクション俳優ドニー・イェン。しかし日本では2007年の『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』以降、ドニーの映画が劇場で上映されていない。このままでは日本はドニー後進国になってしまう!と思っていたら、今年になって『イップ・マン 序章』『イップ・マン 葉問』『孫文の義士団』『処刑剣』とドニー映画が立て続けに日本で公開される。そしてDVD『導火線 FLASH PONT』が6月にリリースされる。この『導火線』をスクリーンで観たいというファンの声と、映画を上映したいという映画館の思いが実を結び、奇跡の上映が実現した。スクリーンで観る機会を逃してはならぬと、シネマート六本木に行ってきました!

映画はドニー演じるマー刑事が「悪党を捕まえるのが警官の任務」と言うシーンから始まる。マーは毎月40人の犯罪者に重傷を負わせるという、正義のためなら暴力もためらわない男だ。

このマー刑事が追っているのはベトナム人のアーチャー、トニー、タイガーの凶悪3兄弟。前半は、3兄弟の組織に潜入した刑事ウィルソン(ルイス・クー)のおとり捜査が描かれるが、ウィルソンが兄弟に瀕死の重傷を負わされ、ついにドニーの怒りの導火線に火がついた!中盤以降はドニーの怒りの鉄拳が炸裂して、一気に熱い展開になっていく。

3兄弟とのバトルは、食堂でのタイガーとの戦いで始まる。『導火線』では総合格闘技を取り入れたアクションが登場するが、柔道、関節技、寝技などを取り入れた映画は珍しいのではないだろうか。しかもマーとタイガーはビシバシと本気でパンチとキックの応酬、さらにマーが素早い動きでタイガーのバックを取って、アスファルトの上でバック・ドロップ!危険すぎてあり得ないですよ。タイガー役のシン・ユーは、この映画の撮影中に耳の鼓膜が破れたというが、それも納得できる激しさである。

B5チラシ-裏面カラー.jpgそして、クライマックスはドニー対トニー(コリン・チョウ)のバトルである。これは本当にすごいです。コリン・チョウは『マトリックス』シリーズなどに出演し、現在ハリウッドで活躍しているが、『導火線』で7年ぶりに香港映画に帰ってきた。ハリウッド映画と比べて『導火線』の撮影はかなり厳しかったので、コリンは「もう香港映画には出演したくない」と言ったほどだ。ドニーとコリンが力の限りを尽くして戦うシーンは、映画で表現できる肉体アクションの限界に到達したと言っても過言ではない。観ている自分も熱くなって、心の導火線に火がつきました。

シネマート六本木での上映は7月16日~22日(好評のため24日まで延長した)の期間限定だったが、でも大丈夫!『導火線』はDVDで観ることができる。ちなみに、このDVDは日本映像翻訳アカデミー(JVTA)の修了生が制作に携わっているので、その点も注目だ。そして『イップ・マン 序章』『イップ・マン 葉問』もDVDで観られます。ドニーの新作『レジェンド・オブ・フィスト -怒りの鉄拳-』も9月公開が決まったので、この機会にぜひドニーの最強アクションを堪能していただきたい。
            

『ザ・キング・オブ・ファイターズ』
トークショー潜入レポート&映画レビュー

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7月9日(土)、六本木ヒルズのTOHOシネマズにて映画『ザ・キング・オブ・ファイターズ』の上映会が開催された。当日は猛暑にも関わらず、大盛況。たくさんの観客がヒルズに訪れた。この日は映画の上映前に吹き替えを担当した声優の小清水亜美さん、杉田智和さん、手塚ヒロミチさんの3人が壇上に登場してのトークショーも行われた。このトークショー及び上映会にJVTAの修了生ライターの鈴木純一さんが参加。当日の様子をレポートする。
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                                        Reported by 鈴木純一

■モデル並みのスタイリッシュな声優陣による
トークショーは笑いが盛りだくさん

ko-1.JPGトークショーが始まると、3人の声優陣が順に登壇。すると、まずそのオシャレさに驚いた。「この人たちはモデルですか?」と思うほど、なんともスタイリッシュな3人なのだ。手塚さんは、オシャレ眼鏡をかけ、男性用ファッション雑誌に出てきそうなパーマのかかったアシンメトリーな髪形に原宿や代官山で見かけそうな服装に身を包んでいる。紅一点の小清水さんはスラリとのびた足を大胆に見せて、これから「パリコレ」に参加してきます、とでも言うような雰囲気。髪もアップにしていて、夏らしい。最後に杉田さんだが、ボーダーシャツに薄いデニム、リストバンドなど、同じく格好良さ満点なのだ。

最近の声優さんはこんなにオシャレなのかぁ、と驚きつつも、様子を見守っていると更に驚かされることに。この3人、オシャレなだけじゃなくトークが上手いのだ。ちょっとした会話の間で杉田さんが「(映画の主人公の)舞は陰のある男に惹かれる偏愛な役柄だから、(声を担当する)小清水さんにピッタリだよね」などと言うと、小清水さんはすかさず「なに~?」と突っ込む。絶妙な3人の掛け合いが、3人のスタイリッシュな感じを更に洗練された雰囲気に見せていた。

ko-2.JPG本作の見どころとして杉田さんは「テリーさんが浮浪者を殴って帽子を被るシーン」とコメント。テリーさんって誰ですか?と疑問が湧いたが、映画を観たら分かりました。テリーさんはCIA捜査官として登場する人ですが、このシーンについては映画を観てください。
手塚さんは「収録ではゲーム『ザ・キング・オブ・ファイターズ』が好きな出演者やスタッフたちがいたので、それで絆が深まった」とゲームでつながった現場の様子について話していた。小清水さんは「映画はゲームとは設定が異なっている。そしてギャグがちりばめられている。映画ではゲームのキャラ、アンディーが登場していないので、パート2が製作されると思う」と話していた。確かに笑えるシーンはあった。例えばゲームでは日本人の設定である草薙京が、映画では明らかにアメリカ人だろ!な俳優ショーン・ファリスが演じていたのはギャグなのか分からないが、笑えました。最後に手塚さんの「見どころがいっぱいある映画です。ぜひ多くの人たちに観てほしい」という締めのコメントでトークショーは終わった。


■3人の役者のアクションがキラリと光る
本格派の格闘映画!

ko-3.JPG『ザ・キング・オブ・ファイターズ』は有名な格闘ゲームの映画化だが、格闘といえばアクション。アクション映画好きから観た本作の見どころとして、3人の俳優に注目したい。まずは不知火舞(しらぬいまい)を演じたマギー・Q。彼女はモデルだったが、香港に渡って『ジェネックスコップ2』に出演する。この映画でジャッキー・チェンに見出されて『レディ・ウェポン』で主演し、その後はハリウッドでジャッキー主演の『ラッシュアワー2』『80デイズ』に出演。さらにトム・クルーズ主演の『Mi:Ⅲ』ではスパイメンバーの1人を演じ、さらにドラマ『ニキータ』では主役のニキータを演じている。ジャッキー仕込みのアクションとモデル出身の美貌を備えた俳優として注目の存在である。

そしてルガール役のレイ・パーク。彼は幼少時からカンフーを習い、スタントマンとしてキャリアをスタートした。本来なら顔が出ない裏方であるスタントマンだったレイが俳優として注目されたのは、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』で演じたダース・モールだ。以降は『X-メン』『G.I.ジョー』など数々の映画で活躍している。

そして最後に、八神庵(やがみいおり)に扮するウィル・ユン・リーだ。彼は『エレクトラ』で剣術アクションを披露していたが、父親がテコンドーの師範で、自身もテコンドーを学んでいるという武術の人である。

この3人に共通するのは"アクションができる人たち"である点だ。この映画のために俳優にアクションの特訓を積ませました!より、もともと動ける人たちを起用することでアクションに激しさとリアルさが増しているのである。

さらに監督は香港映画界の才人ゴードン・チャン。ゴードンはブルース・リー主演の傑作『ドラゴン 怒りの鉄拳』のリメイク『フィスト・オブ・レジェンド/怒りの鉄拳』を監督しているが、他にもジャッキー・チェン主演の『メダリオン』など、アクション映画を得意とする監督である。
『ザ・キング・オブ・ファイターズ』は香港のアクション映画監督と、香港映画でアクション修行した女優がハリウッドでコラボレーションを遂げたアクション映画となったのである。これだけでも十分観る価値はある。

もう1点、日本映像翻訳アカデミー的な見どころを指摘するなら、ウィル・ユン・リーはMTCのディレクター石井清猛さんに似ている......と個人的に思う。この点でも注目して観ていただきたい作品だ(笑)。

ゾンビ映画をこよなく愛する修了生ライターが潜入レポート!
第1回東京国際ゾンビ映画祭2011

                                            Reported by 鈴木純一
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45ポンド(約6000円)という超低予算で制作されたゾンビ映画『コリン LOVE OF THE DEAD』が3月5日から公開される。この映画の公開記念として2/26~3/4まで、第1回東京国際ゾンビ映画祭2011が開催中だ。日本初のゾンビ映画の祭典となる本映画祭では、古典的な名作から新作まで、16本のゾンビ映画が上映される。旧作のほとんどは既に観ているものの、スクリーンの大画面で観られるとあっては、大のゾンビ好きの自分も行かない選択肢はない。早速27日と28日に行って来たので、当日の様子をレポートする。
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■"ゾンビ肉ジャーキー"は即完売!
ゾンビを食らいながら『悪魔の墓場』を鑑賞!?

zonbi1.jpg映画祭の会場となった映画館はヒューマントラストシネマ渋谷。27日は、イタリア・スペイン合作の『悪魔の墓場』を観た。

会場は、ほぼ満席。ロビーでは『ゾンビ』を始めとする映画のDVDや『ゾンビランド』などのゾンビ映画のパンフレットが並び、ホラー好きの自分としては、沢山のゾンビに囲まれて思わず心が高揚してしまった(笑)。また、"ゾンビ肉ジャーキー"なるものが販売されると聞いていたので、買おうと思ったが探しても見つからない。スタッフの方に聞いたら、すでに売り切れたとのこと。残念!!!

本編上映前には映画祭のプロデューサーでもある映画評論家の江戸木純氏と、『ゾンビ映画大辞典』の著者にしてゾンビ映画ウォッチャー伊東美和氏のトークショーが行われた。トークショーでは江戸木氏が本作についてこう語っていた。

「この映画はジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を無断でリメイクした映画なんですが、ヨーロッパで制作されると不思議なことに全く異なるテイストになる。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は社会派ゾンビ映画ですが、『悪魔の墓場』は純粋に恐怖を追及した作品に仕上がっています。ゾンビ映画でも国によって違いが出るのが面白いですよね」


zonbi2.jpg『悪魔の墓場』は英国マンチェスターを舞台に、害虫駆除の超音波で死者が蘇り人間を襲うという物語。映画全体を覆う不気味さとリアルな特殊メイクが魅力の映画だが、前述のトークショーで話していたように『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』にはなかった、ゾンビが他の死体に自分の血を分けて仲間を増やすという、吸血鬼のような設定が加えられていたのも面白かった。レンタル屋にDVDがあるはずなので、純粋な恐怖を味わいたいという方にはオススメだ。


■思わず脱力する愛すべき作品
『アイランド・オブ・ザ・デッド』は広い心で鑑賞せよ!

翌28日にはイタリア映画『アイランド・オブ・ザ・デッド』を観た。上映前のトークショーには、前日の江戸木氏と伊東氏に加えて『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ 血塗られたハッタリの美学』の著者である映画ライター山崎圭司氏の3人が登壇した。

山崎氏によれば本作は、甘いシビレがくる映画。観始めて3秒で"観るのをやめればよかった"と思うのだそうだ。山崎氏の意見に同調しながら、江戸木氏は本映画について「この作品は怖がるのではなく笑ってください。今回の映画祭でぜひ入れたかった映画で、内容的には東京国際ファンタスティック映画祭でも上映を断られる作品ですから、広い心で観てほしい」と愛のある言葉を述べていた。


zonbi3.jpg上映が始まると、トークショーの話の通り予想以上にすごい映画だと納得した。ある島に着いたトレジャーハンター(宝探し)たちが、その島にいるゾンビたちと戦うという物語なのだが、俳優のひどい演技やアクションの緊張感のなさはもはや脱力もの。しかも建物が炎上するようなお金のかかるシーンは、他の映画のフィルムを(間違いなく無許可で)使っていると思われる。(どうやら本作の監督ブルーノ・マッティ(2007年に没)は、他の映画のフィルムを勝手に使う人らしく、同監督の遺作『ゾンビ2009』でもハリウッド映画『クリムゾン・タイド』のフッテージが無許可で使われている。)更に、ゾンビ映画の傑作『サンゲリア』に出てくる眼球を突き刺すという場面の再現シーンに至っては、なんと刺さらずに終わるといった肩透かし。その他、ゾンビがフラメンコを踊るなど、観ている者がひきつった笑いと脱力感に襲われる作品で、心が広くなった...というよりダラリと伸びた気がした。

この「ま~たダメ映画を観ちゃったよ」感は、高校生の頃に『吐きだめの悪魔』や『トロル2 悪魔の森』などのトンデモ映画を観た頃を思い出した(両方とも好きだが)。本作を観ながら、高校生時代のような「やっちまった」感に浸って甘酸っぱいシビレに酔ったのだった。『アイランド~』は3月にDVDがリリースされるので、ホラー映画好きで心の広さに自信がある方は是非。

zonbi4.jpg今回は第1回目の映画祭ということで、ゾンビ映画の教科書ともいうべき作品を選んだと語っていた江戸木氏だったが、確かにこれだけの数のゾンビ映画が集まる機会はそうない。レポートした2作品の他にも『サンゲリア』『ゾンビ』『死霊のえじき』などの名作や、日本から世界に向けて放つ注目のゾンビ映画『ヘルドライバー』などの作品が勢ぞろいしていた。

映画祭そのものは4日で終わりだが、興味を持った人はぜひDVDなどでチェックしてほしい。そして3/5から公開される『コリン LOVE OF THE DEAD』にも注目!

『コリン』公式サイト「東京国際ゾンビ映画際2011」告知:
http://www.colinmovie.jp/zombiefes/index.html

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