『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』 by 浅野 一郎
この世でもっとも面白く、もっともお下劣で、もっとも知的なコメディ集団「モンティ・パイソン」。これは、彼らの実質的な映画第1作目である。
映画のテーマはアーサー王と聖杯伝説の物語。アーサー王に関する伝説は諸説あるが、岩に突き刺さった剣を抜いて王となり、円卓の騎士と共にブリテンを統一したという話は有名。
しかし、この映画を作っているのは、神をも恐れぬモンティ・パイソン。神の恩寵を受けたアーサー王と勇敢な円卓の騎士たちは、聖人君子が大嫌いなパイソンの格好の餌食だ。間抜けでカリスマ性が皆無なアーサー王、血の気が多くすぐ剣を抜くランスロット卿、病的なまでに臆病なロビン、計算高く小心者なガラハッド...。
伝説のヒーローたちはパイソンの手で徹底的に貶められ、少年少女を虜にしたストーリーは不条理なギャグで汚染されていく。
ここまで読んでいただいて、"なんだ... ただのおバカ映画じゃないか..."と思った方も多いかもしれない。しかし、表面的には単なる悪ふざけに見えても、実は政治風刺や宗教・人種問題などが巧みに織り込まれているのだ。見直すたびに新たな解釈が生まれ、新たな魅力が見えてくる。一度、ダマされたと思って観てほしい。きっと深遠なパイソン・ワールドに引き込まれるはず!
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『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』
出演: モンティ・パイソン
監督: テリー・ジョーンズ、テリー・ギリアム
製作年: 1975年
製作国: イギリス
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