大切な人を救おうとしたとき、自分を犠牲にしなければならないとしたらどうするだろう? そして、その犠牲を誰も知ることがないとしたら?
そんな状況におかれた青年を描いているのが、『バタフライ・エフェクト』だ。
日記を読むことで過去に戻れることに気づく主人公のエヴァン。自分のせいで幼なじみのケイリーの人生を狂わせたことを悔やんだ彼が、過去に戻って運命を変えようとするところから物語は展開していく。
この作品に描かれているような"自己犠牲"は、私の心を揺さぶる。今の自分には果たせないけれど、私の理想とするあり方だからだ。それを実現できる者が私にとってのヒーローなのだ。
それなら、ナウシカもヒーローでしょ?と聞かれたことがあるが、ちょっと違う。ナウシカが自分を犠牲にしようとすることを、周囲の人々は知っている。人々は彼女をリスペクトし、感謝する。ある意味、彼女の自己犠牲は、それによって報われていると思う。だから、彼女は皆にとってのヒーローではあるが、私にとってのヒーローではない。私にとってのヒーローは、エヴァンのような人だ。見方によれば悲劇的かもしれないが、人知れずとも誰かを心から大切に思い、自分を犠牲にすることさえ厭わない人間だ。
この作品のDVD版にはエンディングが異なるディレクターズカット版が入っている。個人的には、ディレクターズカット版のエンディングのほうが気に入っている。ぜひ、見比べてほしい。
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『バタフライ・エフェクト』
出演: アシュトン・カッチャー、エイミー・スマート
監督脚本: エリック・ブレス&J・マッキー・グラバー
製作年: 2004年
製作国: アメリカ
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