例えば週末に『スパイダーマン3』を観にいこうとしていて、今晩あたり"1"か"2"を借りて復習しておこうと思って地元のレンタルビデオに寄ってみると、どちらも全部レンタル中。そんな時にも途方に暮れたり、やり場のない怒りを抱えて店内をうろついたりする必要はありません。ゆっくりと周りの棚を見回しサム・ライミ監督のコーナーを見つけ、そこから『ダークマン』を抜き取ってレジに持っていけばいいのです。
スプラッター映画の金字塔『死霊のはらわた』シリーズとスラップスティック映画の異色作『XYZマーダーズ』で、すでにカルト的な人気を獲得していたライミ監督がファン層をさらに広げるきっかけとなった作品が、この『ダークマン』。『スパイダーマン』のプロトタイプ的な作品とも評されている傑作アクションです。
アメコミ映画がすでに注目を集め始めていた当時、コミックフリークとしても有名なライミ監督が発表したのがこの独創的なオリジナルのヒーロー映画でした。ただし同じヒーロー物でも、作品の印象は『スパイダーマン』シリーズとはかなり異なっています。
2つの作品世界の違いは、製作費の桁の違いからくるものではなく、映画のスタイルによるものです。『ダークマン』の様式的な演出やマット合成を多用した特殊効果、そして説明的なシーンを極力排除したスピーディなストーリー展開は、ヒッチコックを始めとするハリウッド・クラシックへのオマージュを感じさせます。オープニングのギャング同士の銃撃戦は、緊張感のあるアクションの中に独特のユーモアが織り交ぜられたこの映画の名シーンの1つです。
もちろん、共通点も忘れるわけにはいきません。およそヒーローらしくなく常に自分の存在意義について悩む主人公。リーアム・ニーソン(ダークマン)の姿に、トビー・マグワイア(スパイダーマン)が重なります。また、挫折した科学者の復讐というテーマは、『スパイダーマン』では悪役のグリーン・ゴブリンやドック・オクに引き継がれおり、その辺りが『ダークマン』が"裏スパイダーマン"といわれる所以でもあります。
スパイダーマンが空中を落下するメリー・ジェーンを助ける時、画面を滑らかに移動するその姿は映画的な魅力に満ちています。『ダークマン』を見た人なら、ライミ監督がその動きの美しさをずっと前から知っていたと分かるはずです。『ダークマン』のクライマックス、高層ビル建設現場での闘いは、要チェックです!
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『ダークマン』
製作: ロバート・タパート
原案: サム・ライミ
脚本: サム・ライミほか
音楽: ダニー・エルフマン
製作年: 1990年
製作国: アメリカ
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