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vol.37 『ICE』 by 潮地愛子


7月のテーマ:自然

私がまだ少女だった頃、いわゆる少女小説にはまった時期がある。その頃読んだものに、今でも強烈な印象が残っている作品がある。一週間後に地球が隕石の衝突で滅亡するという設定で、その最後の一週間、人々はどう過ごすのかが描かれていた。主人公は恋人に会いに旅に出る。そして、登場人物の1人である受験生は何をするかといえば、秩序など失われ世の中が混乱に陥っている中、ただただ受験勉強を続ける。それしかできることがないからだ。

地球が滅亡する時、あなたはどうするだろうか?

秋元康原作・小林誠監督作品のアニメ『ICE』で描かれているのも、滅亡へ向かっている世界だ。男性は死に絶え、残されたのは女性だけ。そこに生きるのは滅びの運命を受け入れ、享楽的に過ごすキサラギ家の者たちと、科学の力によって存続する手段を求める衛士たちだ。その2つの勢力は「男なしに男を生み出す」ことを可能にするICEという結晶をめぐり、対立を深めていく。

ICEの世界で滅びの原因となったのは環境の劇的な変化と未知の汚染物質だ。監督のコメントには、要約するとこんなことが書いてあった。「人類が滅ぶとなった時に、その原因を作った人がいる。そして、なんでそんな原因を作るようなことをやってしまうのかというと、隣の人とのつながりを考えていないから。回りまわって自分に返ってくるということを思考する機能が停止しているんじゃないか」

子供の頃、プールでおしっこしたら、そのプールが汚いと自分で分かってるから結局は楽しめなくなるよ、だからそんなことしたらダメだよ、と先生に言われた記憶があるが、きっとそういうことなんだろうと思う。

地球はいつか滅亡してしまうだろうけど、隣の人のことを考えることで、つまり自分以外の誰かのことを考えることで、滅亡までの時間を延ばすことはできるのかもしれない。でも、それでも隕石の衝突で1週間後に地球が滅亡するとしたら、私も昔読んだ小説の主人公のように、会いたい人を訪ねたい。そして、誰かに最後に会いたいと思うような人になりたいと思う。

キサラギ家当主のキサラギは言う。
「大いなる自然の一部として存在している私たちが、
滅亡もまた運命と受け入れるのは、まさに道理というものです」

存続を願うジュリアは言う。
「幸せな運命論者よ! 愛する者と共に逝くがよい!」

あなたなら、どうしますか?

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『ICE』
監督:小林誠
企画・原作:秋元康
製作国:日本
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