11月のテーマ:変身
『バットマン』の映画版というと、いまだにジャック・ニコルソンがジョーカー役を演じた旧シリーズ第1作のイメージが強く残っています。でも調べてみると、第1作公開は1989年。驚いたことにもう20年近くも前なんですね。
当時は実質上、初のバットマン映画化ということで日本でも大きな話題になりました。Tシャツや帽子など、あちこちであの「バットシグナル」のマークを目にしたものです。
そして今年公開された新シリーズ第2作『ダークナイト』。すでに見た方には言うまでもないかもしれませんが、「バットマンシリーズ」の枠で語るのを躊躇してしまうほどの素晴らしい作品に仕上がっています。
もちろん、よりアニメ的な旧シリーズ(第1作~『バットマン&ロビン』)のほうが好きという方もいるでしょう。『ダークナイト』は、いわばバットマンの枠組みを利用した骨太の人間ドラマ。ヒーローもの、アメコミものとして楽しむには、あまりにも暗くて、あまりにも救いがなさすぎるかもしれません。
思えば、一連の旧シリーズが作られた90年代、アメリカはバブル景気の真っ只中でした。バットスーツに身を包んだ大金持ちが、ド派手なガジェットを駆使して極彩色の悪を退治する。そのさまは、当時の雰囲気にぴったりと合っていました。
一方で『ダークナイト』が作られた現在のアメリカは、ほとんど真逆の状況です。アメリカは2つの戦争を戦い、世界からも冷ややかな目で見られ、その状況を好転させてくれるヒーローを必死で探し求めています。その重苦しく、切迫した時代の空気が『ダークナイト』を作り出した――というのはあるいは言いすぎでしょうか。
時代とともにその姿を大きく変えてきたバットマンシリーズ。変革の担い手と期待されるオバマ次期大統領の時代には、どんなバットマンが見られるか、楽しみですね。
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『ダークナイト』
出演:クリスチャン・ベイル、ヒース・レジャー 他
監督:クリストファー・ノーラン
製作年:2008年
製作国:アメリカ
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11月のテーマ:変身
ムーンブーツにモシャモシャ頭、いつも半開きの口に半開きの目。アイダホの田舎町に住むナポレオン・ダイナマイトは、その勇ましい名前のイメージとはかけ離れた、見るからにダサくてしょぼいオタク少年。(だからと言って原題『Napoleon Dynamite』が『バス男』になってしまったのは安直すぎると思うけど)
ナポレオンはとにかくヘボい。
高校生なのに、なぜか小学生に混じってスクールバスで通学。学校では廊下に立ってるだけでイジメっ子に突き飛ばされる。ランチを一緒に食べる友達なんていないし、楽しみと言えば人形orヌンチャク遊びかヘタな絵を描くこと。家に帰れば引きこもりの兄が一日中チャットデートに耽ってるし、元フットボール選手のおじは過去の栄光にしがみつくわ、インチキ商売を始めるわで迷惑極まりない。
そんな冴えない日々をナポレオンは「Idiot!(バカたれ)」や「Gosh!(マジかよ)」なんて悪態をつきながら乗り切っている。私だったら誰も知らない遠くの土地へ引っ越しでもして、新しい人生に望みをかけるかもしれないけど、ナポレオンは決して逃げない。きっと彼自身は闘ってるつもりなんてないのだろう。ただただマイペースに生きてるだけだ。
しかしある日、メキシコからやって来た転校生のペドロと知り合った時から、ナポレオンの生活は少しずつ変わり始める。このペドロもとんでもなく冴えないが、そうは言ってもナポレオンにとって初めての友達。大事な友達が無謀にも生徒会長に立候補したら、もう張り切って協力するしかない。途端にナポレオンが、行動力溢れる頼りがいのある男に見え始めるから不思議だ。
作品の見せ場とも言えるダンスシーンはYouTubeでもかなり話題になったので知っている人も多いのでは?生徒会長選挙で演説の後に出し物をすることを直前に知らされ、落ち込むペドロを助けるためにナポレオンが思い切った行動に出る。いつも聞いてるジャミロクワイの曲でダンスを踊ることにしたのだ。ナポレオンはみんなの度肝を抜くようなぶっ飛びダンスを披露する。
そしてまたいつもと変わらない朝が始まる。
違うのは友人ペドロがナポレオンのダンスのおかげで会長に当選し、少し前までは友達さえいなかったナポレオンの横にデブという彼女がいること。ナポレオンは意識して何かを変えたわけじゃない。ただ自分の感覚を信じて動いただけだ。
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『バス男』
出演:ジョン・ヘダー、エフレン・ラミレッツ 他
監督:ジャレッド・ヘス
製作年:2004年
製作国:アメリカ
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