1月のテーマ:はじめての○○
「ママは、お化粧した男なんて大キライ」
私がまた幼かった頃。
母親の好みにより、彼が我が家のTVに映ることはほとんどなかった。
濃すぎる化粧、長い髪、奇想天外な衣装、あごを突き出して歌う妖艶な姿。
その独自のスタイルと歌唱力で人気を博していたジュリーこと沢田研二。
ビジュアル系の元祖。
女の衣装を美しく着こなし、日本人の憧れである青い瞳をカラーコンタクトで簡単にやってのけ、まぶたに真っ青なアイシャドウを乗せた歌手。当時、目の周りを青くしている男といえば、幼い私の知る限りでは、歌舞伎役者と、進研ゼミのキャラクター・ブッチ(確か左目だけ)ぐらいなものだったな。
たまの土曜夜、『8時だョ!全員集合』が、私とジュリーとの唯一の接点であった
(我が家は「全員集合」OKの家庭だったのだ)。
渋谷公会堂の舞台の上で、持ち前の"アンニュイフェロモン"と正反対な、体を張ったおばかコントを志村けんと絶妙な間合いで繰り広げていた。躊躇するどころか、それを満喫しているかのように生き生きと演ずるジュリー。番組後半、ステージ転換で現れた彼は体中に電飾をちりばめ、なんとパラシュート背負って「TOKIO」を熱唱...。
それは衣装なのか、セットなのか。
顔の作りなんか当時の私の好みには全然合わなかったし、やることとか佇まいも現実離れしていて、ちょっとつかみどころがない。でも、この人、気になる。母の手前、無関心を装いながら、こそっとみていた。
GSからピンになり、脱アイドル路線を突き進むジュリーは、歌手としてだけでなく、役者としても多くの作品に登場していた。が、彼の出演作には、男女のきわどいからみのシーンが多かったため、うちのブラウン管からジュリーは、さらに遠ざかっていったのだ。
俳優・沢田研二を始めてちゃんと見たのは私がすっかり大人になってから。
伝説のTVドラマ『悪魔のようなあいつ』(1975)
1968年12月に発生した3億円強奪事件をモチーフとした青春劇。犯人の可門良(沢田研二)は、高級クラブ「日蝕」で歌手として働いているが実は脳腫瘍に冒されており、余命いくばくもない身体であった...。
暴力シーン、挑戦的な演出、性描写。熱狂的な人気を博したようだが、いかんせんこのジュリーはやばい、やばすぎる。周囲の人物や風景の見え方は、まあその時代相応なのだが、ジュリーは不思議と全く時代を感じさせない姿。流行廃りもない、永久保存版の魅力ってこういうことなんだなと実感する。
美しいものは、なにやっても美しく切り撮られる(樹木希林?)。鼻血をだらだらと出すシーンを見た後、彼の魅力が完全なものなんだなー、なんて確信した人は少なくないのではないか。この作品はいまだにファンが多い。
さて。ようやく今週の1本はコレ。
70年代邦画の傑作、『太陽を盗んだ男』。
しがない中学教師(沢田研二)がアパートの一室で作った原爆をエサに、国家相手に喧嘩を売る荒唐無稽な話。
退廃的なジュリーの魅力、CGナシのアクション、社会問題の投影、そしてストーリーに散りばめられた完全な「ヒーロー」たち(「ウルトラマンレオ」「鉄腕アトム」「王、長嶋」「ストーン」などなど)。
これらのエッセンスの中を、「生きる証」に向かって、それぞれがまっしぐらに突き進む姿。画面から炸裂させる作品のパワーが本当にすばらしい。
公開当時、沢田研二31歳。46歳の菅原文太。
文太も負けてない。若すぎる。かっこよすぎる。銭形警部さながらの文太の不死身っぷり。CGナシの映像なのにそれってすごくないか?
デジタル技術を駆使した昨今の映像と比較したり、時代の流れ、技術の進歩、そんな細かいところをあげていけば突っ込みどころも満載だが、それを差し引いたとしても、見応え充分の秀作!
サッカーの日本代表戦すらスポンサーがつかなくて、LIVE放映が危ぶまれる、2009年不況時代。
だからこそ、この1本を観てもらいたいなと思う。このパワーは、もはやファンタジーなのか...。
是非、「はじめてのジュリー」はまずはこの作品から。
正統な選択。今週の1本はこれで。
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『太陽を盗んだ男』(1979)
147分/日本
監督:長谷川和彦
出演:沢田研二 菅原文太 池上希実子
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