今週の1本

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vol.63 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』 by 浅野一郎


7月のテーマ:酒

禁酒法が敷かれていた1920年代のアメリカ・ニューヨークを舞台としたギャング映画である。僕がこの映画を観たのは、中学生になりたての時だったと思う。夜、父親に銀座に連れていかれ、あまり人気のない映画館で観た記憶がある。どう考えても、中学生が観ていい映画ではないのだが、当時はR指定などない時代。3時間以上のこのギャング映画を観た後、色々な意味で大人になった気分を味わったものだ。

出演はロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ、ジョー・ペシ、バート・ヤング、そしてまだ幼さの残るジェニファー・コネリー等々。物語は、若いユダヤ系移民の少年が裏の世界で成り上がり、そして転落していく様を描いた一大サーガだ。

ヌードルス(デ・ニーロ)、マックス(ウッズ)、パッツィー、コックアイ、ドミニク、モーの6人組は禁酒法の施工を逆手にとって、ヤミ酒で大いに稼ぐが、禁酒法時代がついに終焉を迎えたことによって、彼らもビジネスのやり方を変えざるを得なくなる。
大ボスの下について立場を固めようとするマックスと、小金があれば、それで満足というヌードルスの対立は次第に深まり、遂に悲劇的な最期を迎える...。

この映画で胸に残った場面が2つある。

1つ目はもっとも有名なシーンかもしれないが、仕事の成功に浮き足立つヌードルスたちがマンハッタン橋を背景にして闊歩するシーン。コックアイの吹くバンパイプの音がとても印象的なのだが、その直後に地元のギャングに襲われ、一番年少のドミニクが刺殺されてしまうシーンの「Noodles, I slipped...」というセリフが今でも耳から離れない。
ちなみに、このマンハッタン橋のシーンは、『インデペンデンス・デイ』での、ビル・プルマン扮する大統領のスピーチシーンに次ぐ映画史に残る名シーンではないかと思う。

2つ目は、ケーキ1つで体を許してしまうマギーの家に、パッツィーがケーキを持っていくところ。パッツィーは、そわそわしながらマギーが出てくるのを待っているのだが、チンピラといえども子供は子供。"色気より食い気"とばかりに、マギーが出てくるのを待てずケーキを平らげてしまう。ここのバックで流れているエンニオ・モリコーネの切ない曲がシーンを盛り上げている。

僕はふた月に1度くらいのペースでこの映画を観るのだが、この2シーンだけはチャプターを戻してもう一度観てしまう。映像と音楽の相乗効果が抜群で、何度観ても涙がこぼれるシーンだ。この歴史的名作をまだ観ていないという方は、今週末にでも早速観てほしい。

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』
出演:ロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ ほか
監督:セルジオ・レオーネ
製作年:1984年
製作国:アメリカ
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