今週の1本

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2009年11月 アーカイブ

vol.70 『燃えよ!ピンポン』 by 杉田洋子


11月のテーマ:スポーツ

うちの近所には小さなGEOがある。小さな店舗だから種類も少ないし、たとえ
目当てのものが見つかっても、"旧作100円セール"の追い風もありほとんどが
貸し出し中。そもそも私は『ピンポン』が観たかったのだ。

"あった、あった!"と手を伸ばすと、やはりカラ。やはりな。
"あーあ、どうしよ、困ったな、人気作品なんだから2~3本は在庫置いといて
よね。あ、『ナチョ・リブレ』はどうかな。やっぱカラだよ、もう!"
...なんて思ってると、小さな店舗の貴重な棚の片隅に、スポーツという札を掲げ
た光り輝く一角があるではないか。
"よかったー、これで店内で闇雲にスポーツ映画探さずに済むよ、どれどれ..."
と覗いてみると、いかにも感動しそうなドラマ系の作品や有名選手のドキュメン
タリー風のにまじって、明らかにふざけたジャケの作品が鎮座していたのです。

『燃えよ、ピンポン!』

どっかで何度か聞いたような名前ですが、なにせピンポンです。しかもジャック
・ブラック風のふとっちょな主人公...。いっちょ借りてみようではありませんか。

ま、こんな前置きが長くなってしまったのも、私がやはりスポーツものが苦手だ
からに他なりません。そしてこの作品を選んだ所以もまた然りです。コメディな
らイケるべ!、と(すみません)。

それで、観てみました。

主人公は、かつて天才卓球少年として持てはやされたランディ・デイトナ。しか
しオリンピックで無様な負け方をしてからというもの人生は一転してしまう。メ
タボ中年となった今では、卓球曲芸で生計を立てる日々。あるとき、FBIの諜
報員ロドリゲスにその腕を買われ、裏社会で極秘に行われる卓球世界大会への潜
入捜査を委託されることに。目の見えない中国人師匠に特訓を受け、無事出場権
を獲得したランディ。しかし大会の実態は、敗者殺害のデスマッチ・トーナメン
ト。しかもその主催者は、父を殺した宿敵フェンだった...。

という、まあ、基軸は『燃えよドラゴン』のパロディなわけですね、やはり。
出てくる人物とふざけた会話はコメディなのですが、卓球のアクションはちゃん
と素晴らしかったりします。登場人物にもそれぞれに愛着が持てて、パァ~っと
楽しく鑑賞できました。何も考えずに楽しく観られるこんな映画も、いいなと思
うわけです。しかも吹き替えで。家族で安心して観られる、黒すぎずエロすぎな
いマイルド目のコメディといいますか。決して煮え切らないと言いたいわけでは
ありません。私は結構好きです。

クリストファー・ウォーケンのおバカなボスキャラと、マギー・Qの美貌も見も
のです。彼女は卓球もそうだけど、どちらかというとカンフーで魅せるシーンが
多いかなという感じ。強いヒロインっていいですよね。とりあえず、裏取りして
たら『燃えよドラゴン』を観たくなりました(実は未鑑賞)。

純粋にスポーツ観たい!!って人には、向かないかもしれませんが、普段観ない
けど、ちょっとスポーツ要素欲しいな、って人にはオススメの1本です。


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『燃えよ!ピンポン』
監督:ロバート・ベン・ガラント
脚本:ロバート・ベン・ガラント
音楽:モーリス・ジョーベール
出演:ダン・フォグラー、クリストファー・ウォーケン、マギー・Q、マシ・オカほか
製作国:アメリカ
製作年:2007年
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vol.71 『ブルークラッシュ』 by 潮地愛子


11月のテーマ:スポーツ

サーフィンをすることなんて一生ないと思っていたのに、2009年夏、私はサーフィンデビューを果たした。と言っても、初めてスクールに参加した日、まったく自覚がないのに「あの溺れそうになっていた子」と称されたくらいなので、華々しいデビューとはいいがたいのだけれど。サーフィンほど事前に思い描くイメージと実態がかけ離れているスポーツもないかもしれない。とにかく難しいし、上達するのに時間がかかる。それを実感したので、今や海と闘いながら腕を磨いたのであろうサーファーをリスペクトしている。そして、彼らのカルチャーに、ちょっと憧れている今日この頃である。

『ブルークラッシュ』は、ハワイのオアフ島に住むサーファーガールの生活を描いた青春映画だ。ライフスタイルもリアルに描かれていて、お金はないけど一生懸命働いてサーフィンに打ち込むガールズたちには共感が持てる。そして彼女たちがオアフ島のローカルで、ノースショアでサーフィンしちゃったりするところが、サーフィンをちょっぴりかじった私にはぐっとくる。ガールズムービーには欠かせないでしょう恋愛ももちろんからんでくる。主人公はNFLの選手と恋に落ちちゃうのだが、当然、彼のポジションはクウォーターバック。こういうベタさ、私は嫌いじゃない。
そして何より、この作品で特筆すべきは水中撮影のすごさだ。超危険なガールズサーファーの大会パイプ・ライン・マスターズのシーンでのライディング映像は必見だ。臨場感があって、まるで自分が乗っているような気分になる。海に入ったあとのような爽快感を味わいたい人にもおススメだ。

20年ぶりに海に入って、海の水ってしょっぱいんだ、と思い出した。そして、波にもまれて初めて、サーフィンを、そして海をなめていたことを思い知らされた。それでも海に魅了されたようだ。時々、海に入りたいなあと思うようになった。でも秋も深まり、季節は冬へと移り変わりつつある。この間も海が恋しくなったが、寒いのは苦手なので、とりあえず暖房が効いた部屋で『ブルークラッシュ』を見た。そして、ぬくぬくした部屋で一流サーファー気分を味わった。2009年冬、私は乙な寒い日の過ごし方を見つけてしまったようだ。

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『ブルークラッシュ』
出演:ケイト・ボスワース、ミシェル・ロドリゲス、サノー・レイク
監督・脚本:ジョン・ストックウェル
製作:ブライアン・グライザー
製作年:2002年
製作国:アメリカ
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