Vol.86 『トイストーリー3』 by 藤田彩乃
7月のテーマ:怖い話
アメリカでは6月18日に公開されるやいなや、週末3日間で1億900万ドルを稼ぎ出し、大ヒットとなった「トイストーリー3」。続編の評価がオリジナルを上回ることは極めて稀だが、観賞した人がみな口を揃えて大絶賛し、映画誌などでの評価も高いので早速、見に行ってきた。
舞台は第1作目から10年後。ウッディやバズ・ライトイヤーなどのおもちゃの持ち主アンディは17歳。大学進学が決定し、おもちゃを整理することになる。悩んだあげくおもちゃを屋根裏部屋にしまおうとするアンディだが、母親の手違いでゴミに出されてしまう。間一髪でゴミ処理場行きは免れたおもちゃたちだが、アンディに捨てられたと勘違いし大激怒。保育園「サニーサイド」へ寄付するための段ボールに入り込み、サニーサイドで歓待され気を良くする。そんな中、ウッディだけがアンディを信じて、保育園から脱出し家に帰ろうとするが、バズを初めとするおもちゃたちはサニーサイドが気に入り留まることに決める。しかし、一見、天国に見えたサニーサイドは、おもちゃにとっては生き地獄。昼間は凶暴な年少組に乱暴に投げつけられて破壊され、夜は、過去に持ち主に捨てられた人間不信のくまのぬいぐるみロッツォの指揮の下、まるで囚人のように常に監視される。そんなサニーサイドでの現実を知ったウッディは、仲間の危機を救うため、果敢にも再びサニーサイドへと戻って行く。
保育園「サニーサイド」に着いた当初、おもちゃたちは大歓迎を受ける。イチゴのにおい付きのふわふわのピンクのくまのぬいぐるみロッツォはどこから見ても善人の長老。しかし、おもちゃたちが年少組のおもちゃの扱いに不満をもらした途端に一変、悪魔の顔つきへと変わる。その豹変ぶりと二面性はホラーに近い。怖すぎる。また、おもちゃたちを叩いたり、解体したりする子供たちも、おもちゃ目線で見ると、怪物以外の何者でもない。平和に見える保育園のおもちゃたちの上下関係、持ち主に捨てられたおもちゃたちのトラウマっぷりもシュールすぎて恐ろしい。
一方で、笑えるシーンも盛りだくさん。一番の見せ場はバズ。ロッツォと傲慢なおもちゃたちに捕らえられたバズは、背中部分のリセットボタンを押され、なんと情熱的なラティーノに変身。スペイン語で歯の浮くような台詞をはきまくる。意味不明だがかなり笑える。
おなじみのおもちゃも登場する。前作から出演しているバービーはもちろん、ボーイフレンドのケンも出演。キザな台詞と動きが笑える。そして日本が誇る我らがトトロも登場。ジブリとディズニー&ピクサーの長年の協力関係の賜物だ。台詞こそないが、かなりの存在感を醸し出していた。
映像のクオリティ、芸の細かさが群を抜いているのはもちろん、ストーリーの完成度も高く、さすがピクサーと言わざるを得ない。エンディングは感動的で切なくて、涙が込み上げてくる。大人になるアンディと、大人になれないおもちゃたち。いずれは別れの時が来るのだが、分かっていても泣けてくる。アンディの優しさ、おもちゃへの愛情が、最後にどーんと胸に迫ってくる。3部作のなかで、一番の出来と言っても過言ではないと思う。
日本では7月10日(土)全国ロードショー開始。笑いあり涙ありの大傑作、お見逃しなく。
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『トイストーリー3』
監督:リー・アンクリッチ
声:トム・ハンクス、ティム・アレン、ジョーン・キューザック
音楽:ランディ・ニューマン
製作国:アメリカ
製作年:2010年
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