11月のテーマ:壁
自分のしゃべる言語が全く通じない国に行くのは恐ろしいものだ。
そこには言葉の壁がたちはだかっている。
それでも、かけがえのない出会いや、思いがけない経験が待ち受けていることがあるのも確かだ。
ハリウッドスターのボブ(ビル・マーレイ)は、コマーシャル撮影のため日本を訪れた。
優秀とはいえない通訳は撮影スタッフの指示を半分も伝えてくれないし、珍妙な番組に出演させられたり、歓迎の印としてホテルの部屋に娼婦をあてがわれたり(実際にあることなのだろうか?)慣れない文化にボブはとまどいを隠せない。
そんな中、彼はカメラマンの夫について日本に来ていたシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)と出会い、お互いに異国で孤独を感じていた2人は次第に心を通わせていく。
でたらめな英語で話しかけてくる日本人を相手に何とか意思の疎通を図ろうとするボブの姿は何だか可愛らしく見える。
LとRの発音をごちゃまぜにして"Lip my stocking!"とボブにつめよる娼婦にはちょっと笑えたが、同じ日本人として何だか恥ずかしくもなる。
ボブたちの目から見ると、見慣れた東京の街並みも新鮮に見えるから不思議だ。
しゃぶしゃぶを食べに行き、「客に料理を作らせるレストランなんてひどい」とつぶやく彼には、確かにそうだよね、と共感したくなるし、神前式の結婚式はいつもより神聖なものに見える。
本作はフランシス・フォード・コッポラの娘、ソフィア・コッポラが「ヴァージン・スーサイズ」に次いで監督を務めた作品だ。ユーモアにあふれていて、とてもおしゃれで美しい作品だと思う。
ご覧になっていない方には、ぜひおすすめしたい1本だ。
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『ロスト・イン・トランスレーション』
監督:ソフィア・コッポラ
出演:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン ほか
製作年:2003年
製作国:アメリカ/日本
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