5月のテーマ:緑
看守と不思議な能力を持った死刑囚との交流を描いた『グリーンマイル』。よく知られた作品だが、今回注目したいのはトム・ハンクス演じる看守主任の「苦しみ」についてだ。
作品の前半で、巨漢の死刑囚コーフィが特殊な能力で看守主任の病気を治すくだりがある。明確な説明はないが、主任の病気は「尿道炎」という設定らしい。彼はトイレで用を足すたびに苦しそうな表情を浮かべ、脂汗をだらだらと流す。その痛み、苦しみは想像するしかないけれど、何かすごいものを全力で絞り出しているような表情から、とにかく相当痛いんだなということだけはよくわかる。
ことがことだけに、避けてとおるわけにもいかない。彼はその激しい痛みに1日何度も耐えなければならないのだ。きっと朝から晩まで尿意におびえていたことだろう。といって意識しすぎるとかえってぐっと催してきたりして、その辺の加減も難しかったかもしれない。それだけに、コーフィの能力で病気が癒えた時の喜びはこの上なかったはずだ。
話は変わるが、僕が以前勤めていた会社の上司は、血尿が出たため検査で尿道にカメラを入れられたそうだ。検査の結果、問題はなかったものの、彼は痛み(と精神的なダメージ)で数日ほど完全に生気を失っていた。わりと頼りにされていた上司だったが、陰で「脱け殻」とあだ名がついたほどだ。
人望ある上司が、たった一度、しかも検査の痛みを経験しただけでたちまち「抜け殻」呼ばわりである。それを上回るだろう痛みを1日に何度も味わいながらも、忠実に職務をこなしていた看守主任。さすがにグリーンマイル(処刑場に向かう通路)を何度も歩いてきただけはある、タフな人物である。
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『グリーンマイル』
監督:フランク・ダラボン
出演:トム・ハンクス、マイケル・クラーク・ダンカン、サム・ロックウェル 他
製作国:アメリカ
製作年:2000年
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