今週の1本

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2013年2月 アーカイブ

vol.148 『007 カジノ・ロワイヤル(2006)』 by 酒井泉


2月のテーマ:予感

2013年に入って間もなく、ちょっとした地獄を経験した。
巷で話題のあのノロウイルスに感染したのだ。友人たちとの新年会で食べた生牡蠣が原因だった。ちなみにノロウイルスに感染したのは、今回が初めてではない。
数日後に鈍ーい腹痛と気持ちの悪さで、もしや...と悟るのだ。その数時間後には上から下から大騒ぎに...。

『007 カジノ・ロワイヤル』にこんなシーンがある。世界のテロリスト達に、資金提供しているル・シッフル。ボンドはカジノのポーカーでル・シッフルを負かし、破産させる事が任務。何としてでもボンドを負かしたいル・シッフルは少々汚い手を使う。大金を賭けた大勝負の中、ボンドはカクテルに毒を盛られてしまう。ゲームを抜け、冷や汗をかき、息も切れ切れに自ら治療を行うのだった。

少々大げさだが、この時のボンドと自分が重なった。帰りの電車では、立っていることもままならず、何度も途中下車をし顔面蒼白の状態で家までたどり着いたのだった。
繰り返しになるがノロウイルスに感染したのは、今回が初めてではない。3回中、3回とも生牡蠣を食べたことが原因だった。健康な時に適量いただいた場合は問題ない。しかし、風邪の引き始めや、治りかけの時には、食べるのを控えた方が賢明だろう。何度か経験しているので、分かっているはずなのに、喉元過ぎれば熱さを忘れるというやつだ。

ノロウイルスには、治療に有効な薬がまだなく、体内から悪いものをすべて出し切ることが何よりの治し方らしい。(水分補給も忘れずに!) 今回は、ボンドよろしく、冷や汗まみれで自ら治療した。しかし、数カ月もしたら、あの苦しみを忘れて生牡蠣を口にしてしまうかもしれない。だって、牡蠣は生でいただくのが一番美味しいから...。だからと言って、あの美味しさの裏にはアイツが潜んでいることを決して忘れてはならない。
もし、体調がイマイチの時に危うく再び悪党となった生牡蠣の手に落ちそうになったら、冷や汗まみれのボンドの姿を思い出そう。そして、何とか食べたいという欲望を止めるのだ。さすがに「4度目」はシャレになりませんから!


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『007 カジノ・ロワイヤル(2006)』
監督: マーティン・キャンベル
出演:ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、ジュディ・デンチ
製作国:アメリカ イギリス
製作年:2006年
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vol.149 『エクスペンダブルズ』 by 藤田庸司


2月のテーマ:予感

子供の頃観た映画のインパクトは、大人になって観た作品のそれよりも、はるかに大きく感じるのは僕だけではないはずだ。僕が子供だった1980年代、テレビ番組におけるゴールデンタイムでは、たくさんの映画番組が放送されていた。そこで観た「ロッキー」や「少林寺」、「ダイ・ハード」、「ターミネーター」といった作品に心動かされていなければ、僕は今と同じ人生を歩んではいなかったと思う。映像翻訳者にもなっていなかったかもしれない。

現代のような3D技術や高度な特殊メイク技術などなかった当時、作品の良し悪しは役者の個性や演技に頼る部分が大きかった。先に挙げた作品をとっても、シルヴェスター・スタローン、ジェット・リー、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガーが演じていなければ、作品が放つ魅力は薄らいでいただろう。そんな名優たちが一堂に会した「エクスペンダブルズ」は、僕にとっては"アクションヒーローのオールスター戦"とも言うべき特別な一本なのである。

豪華キャストを寄せ集めて作られた映画は、観客の期待も空しく酷評されることが多い。正直、観賞する前は期待はずれの予感もしたが、冒頭の5分でそんな疑いも吹き飛んだ。名作「ロッキー」や「ランボー」同様、シルヴェスター・スタローン自身が脚本を書き、肉体を武器に主演に挑む作品には、単にパワーでゴリ押しするアクション映画とは一線を画す、友情や人情、義理と言った、人の心情や人間模様が常に描かれている。

ともすれば控え目というか、一歩引いた佇まいが美徳とされ、"草食系"という言葉が流行る昨今、時代の流れに逆らうがごとく、これほどまでの肉食系映画は痛快かつ斬新に感じられる。これぞエンターテインメント!できれば大画面で見たい。

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『エクスペンダブルズ』
監督: シルヴェスター・スタローン
出演:シルヴェスター・スタローン、ジェット・リー
製作国:アメリカ
製作年:2010年
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