【written by 鈴木純一(すずき・じゅんいち)】映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
【最近の私】節電になればと、最近はテレビ観賞よりも読書する時間が増えています。大沢存昌の「新宿鮫」シリーズの「灰夜」を読みました。しかし終盤まで読んで、この本をすでに読んでいたことを思い出しました...。でも、「新宿鮫」は再読しても面白いことも発見しました。
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ニコラス・ケイジは正直な俳優である。『リービング・ラスベガス』(1995年)でアカデミー主演男優賞を受賞したが、その後はアクションとかSFとかコミックの映画化とか、自分の好みに正直になって映画に出演するようになった。個人的には、彼は素晴らしい方向にキャリアを進めていると思う。去年のマイ・ベスト映画『キック・アス』(2010年)では、ニコラスがバットマンもどきの衣装でアブないオヤジを演じていて最高だった。
さて、今回紹介したいのは、ニコラス・ケイジ主演の最新作『ドライブ・アングリー 3D』の予告編だ。
予告編は、ニコラス・ケイジ扮するジョン・ミルトンが、ライフル銃を手にして車を降りてくるシーンから始まる。
「男の名はジョン・ミルトン。娘を殺され、愛する家族を奪われた。」
家族を殺された男の復讐という映画は、何百回と観たような気がする。そして黒ずくめの服装にサングラス姿のミルトンの背後で車が爆発。こんなシーンも80年代の映画でイヤというほど観ましたが...もう一度確認するが、ニコラスはアカデミー主演男優賞を受賞するほどの俳優である。しかし、何度となく繰り返された役柄やシーンにも抵抗がない。そう、彼は好みに正直なのだ!
ミルトンはある男を捜している。その男とはミルトンの娘を殺し、赤ん坊を誘拐した犯人だ。
赤ん坊の誘拐というと、ニコラスが出演した『赤ちゃん泥棒』(1987年)を思い出す。『赤ちゃん泥棒』では赤ちゃんを誘拐していたニコラスが、本作では赤ちゃんを誘拐されるという逆の設定である。
ここでミルトンを追う、謎の男(FBIらしい)が登場。この男を演じるのは人気ドラマ『プリズン・ブレイク』(2005~2009年)でもFBI捜査官役で出演していたウィリアム・フィクナーだ。
この謎の男は、ミルトンとのカーチェイスの末に車ごと橋から転落。でもほとんどケガをしてない。なぜ不死身なのか?考えられる理由は、①彼は人間ではない。②この映画では、そんな細かいことは考えなくていい。そのどちらかである。
予告編はとにかくカーチェイス、爆発、銃撃戦、そしてまた爆発。最後に、「今、限界を超えた戦いが加速する」というナレーションが流れ、『ドライブ・アングリー 3D』というタイトルが出て予告編は終わる。
カーチェイスの場面でヴィンテージカーを惜しみなく使っているのは『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007年)に通じるものがある。CGを使っているシーンもありそうだが、本物の車をガンガンぶつける場面は迫力があって好感が持てます。
なお、この映画のコピーは「撃たれても撃たれても撃たれても、飛び出すケイジ!フル3D!」...何だかヤケになっている気もするが。弾丸がスクリーンから飛び出す、車がジャンプしてこちらに向かってくるなど、3D映画のあり方としては非常に正しい作品だと思う。とにかく、細かいことは気にせずに楽しんだ者が勝ち!暴走映画『ドライブ・アングリー 3D』に乗り遅れるな!
今回注目した予告編
★『ドライブ・アングリー 3D』
監督:パトリック・ルシエ
脚本:パトリック・ルシエ、トッド・ファーマー
出演:ニコラス・ケイジ、ウィリアム・フィクナー、アンバー・ハード
2011年8月6日より公開
公式サイト:http://www.da3d.jp/
【written by 鈴木純一(すずき・じゅんいち)】映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
【最近の私】自分のオススメの映画を人に言うと、「それって怖いの?」と聞かれます。別に怖い映画ばかり観ているわけではないのに...。最近観た映画でオススメなのは『ブラック・スワン』。これは面白い!そして怖かった! ...え、何か?
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毎年夏になると、大作映画が数多く公開される。今年の夏の映画で注目したいのは『SUPER8/スーパーエイト』。だって映画の巨人スティーヴン・スピルバーグが製作、人気テレビドラマ『LOST』(2004~2010年)や『FRINGE/フリンジ』(2008年~)のクリエーターであるJ・J・エイブラムスが監督を務めるのだ。この2人がタッグを組むのだから期待するなという方が無理というもの。しかし『スーパーエイト』はストーリーなどの情報はごく少なく、まだ全貌が明かされていない。判明しているのは、この作品がスピルバーグの初期の監督作品『未知との遭遇』(1977年)と『E.T.』(1982年)へのオマージュを込めているということ。そして、タイトルの"エイト"が8ミリフィルムを意味しているということ。今回は、そんな秘密のベールに包まれた『スーパーエイト』の予告編を紹介したい。
舞台は1979年。予告編は少年ジョーが自転車をこぐ場面から始まる。
ジョーは友達のチャールズたちと8ミリカメラで映画を撮っているが、ジョーの父親は息子に言う。
「お前の友達はいい連中だ。だがあの頃とはもう違うんだ」
ここでジョーの母親らしき女性を撮ったフィルムが登場するが、おそらく今の彼に母親はいない。『E.T.』の主人公はシングルマザーの家庭だったが、どうやら『スーパーエイト』は逆の設定らしい。また、ジョーの姿は、少年時代に8ミリカメラで映画を撮り始めたというスピルバーグを連想させる。
「アクション!」映画の撮影が始まろうとするその時...撮影現場の近くを走る貨物列車が爆発し、炎上。ジョーたちは逃げ出すが、彼らの8ミリカメラはその事故の原因となる何かを捕らえていた。しかし、この事故についてテレビのニュースは「列車が何を積んでいたかは不明」と報道。不穏な空気を感じたジョーたちは、事故を目撃したことを口外しない約束をする。...そういえば、『未知との遭遇』では模型の列車が衝突して脱線するシーンがある。『スーパーエイト』の列車事故はその場面を想起させる...というのは考えすぎか。
そして、平和だった町に軍隊が大挙して現れ、不穏な雰囲気がいっそう高まる。真相を知りたい市民に対し、軍隊は「知る必要はない」の一点張り。謎はさらに深まるのだが、このシーンで思い出すのは、J・J・エイブラムスが製作した『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)だ。『クローバーフィールド』は、突然ニューヨークに現れた怪物から逃げる人々の姿を描いた映画である。この映画では怪物が現れた理由などは明かされなかったが、軍や政府は理由を知っていても、一般市民には明かされない事実は多いのかもしれない。なので映画で政府や軍隊の偉い人が「知る必要はない」と言う時は、何か隠している可能性が高いので注意しましょう。
さて、『スーパーエイト』の予告編では、さらに奇妙な出来事が続く。町中の犬が逃げ出し、さらに9人の住民が行方不明になるのだ。そして、何かを見たと訴える男も登場。彼の話は誰にも信じてもらえないが、ジョーだけは「僕は信じるよ」と答える。『E.T.』でも主人公の少年の勇気と信じる心が描かれていたので、このセリフも共通点だと言える。
予告編はチャールズの「何だこれは!?」で終わるのだが、観ているこっちも「何だこれは!?」と言いたくなるぐらいの謎だらけ。それでも内容を想像するに、『スーパーエイト』は『未知との遭遇』と『E.T.』のような地球外生物との交流、そして『クローバーフィールド』のスペクタクル、そして子供たちの青春物語として『スタンド・バイ・ミー』(1986年)のノスタルジーを加えた作品になっているのではないか、と思う。
『未知との遭遇』公開時の宣伝コピーは「We are not alone(我々は独りではない)」だった。この宇宙には、人類以外のものが存在するという意味だ。7月に公開されるスピルバーグ製作総指揮の『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(2011年)の予告編でも、「We are not alone」というセリフが登場していた。数々のSF映画で人間以外の存在が描かれており、我々は独りではないのだ。『スーパーエイト』も今までに観たことのない、"未知なる映画との遭遇"が出来るのではと期待が高まる。
秘密のベールに包まれた『スーパーエイト』の公開を楽しみに待っている。
今回注目した予告編
★『SUPER 8/スーパーエイト』
監督:J・J・エイブラムス
製作:スティーヴン・スピルバーグ
出演:カイル・チャンドラー、エル・ファニング、ロン・エルダード、ノア・エメリッヒ
2011年6月24日より公開
公式サイト:http://www.super8-movie.jp/