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【予告編コラム】疾走する純愛―『ドライヴ』の予告編
2012年03月15日

【written by 鈴木純一(すずき・じゅんいち)】映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
【最近の私】イ・チャンドン監督の新作『ポエトリー アグネスの詩』を観てきました。期待を裏切らない傑作です。ラストシーンに心を激しく打たれました。
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自分は運転免許証を持っているが、運転も道を覚えるのも苦手なので、ほとんどハンドルを握る機会はない。その反発からか、自動車の運転が上手い主人公が登場する映画が好きである。例えば『マッドマックス』『トランスポーター』などだ。今回は凄腕のドライバーが主演の映画『ドライヴ』の予告編を紹介したい。

まず予告編は、「これぞ最高レベルの完璧な映画!今年のベストフィルムだ」という絶賛コメントに続き、数々の受賞歴がテロップで流れる。しかし受賞した賞が多すぎて読みきれません。それだけ評価が高いということですね。そしてライアン・ゴズリング演じるドライバーが「逃走経路は任せろ。5分間に何が起きても必ず待っている。だが5分を過ぎたら面倒は見ない。銃は持たない。運転だけだ」とクールなコメント。ライアンは『きみに読む物語』『ラースと、その彼女』『ブルーバレンタイン』など、恋愛映画に多く出演している。ライアンはイケメンなのですが、『ドライヴ』では何を考えているのか分からないドライバーを演じていて、彼の新しい一面が見られそうです。

ドライバーは、昼間はハリウッド映画のスタントマンだが、夜は強盗を逃がす運転手をしている。同じような設定で思い出す映画は『ザ・ドライバー』。ライアン・オニールが犯罪の逃亡を助けるドライバーを演じていた。

ここから予告編は恋愛モードに入っていく。ライアン演じるドライバーが、ある女性と生涯ただ一度の恋に落ちる。その女性アイリーンを演じるのはエイミー・マディガン。エイミーは『17歳の肖像』や『わたしを離さないで』など、薄幸な役が似合う人です。アイリーンには夫がいるが、その夫があと1週間で刑務所から出所するという。しかしこの夫が、もう見るからに凶暴な犯罪者なんですよ。なんで彼女がこんな男と結婚したのか謎で、相変わらず幸せには遠いキャラです。この夫が、ドライバーを危険に巻き込んでいくらしい。面白そうな展開ですね。

そしてドライバーは愛する者を守るため、最後の戦いを仕掛ける。

静謐な音楽が流れるが、映像は音楽とは逆に、ナイフやハンマーを使った痛いバイオレンス描写が続く。だからこそ、ドライバーの哀しい純愛が引き立っています。

ローリングストーン誌がこの映画を「この野郎!面白いじゃないか!」と評するテロップが流れる。でも映画に対して、この野郎!という評はあまりないですよ。監督は『ドライヴ』がデビュー作となるニコラス・ウィンディング・レフン。本作でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞しているので、ますます本編に期待できますね。

とりあえず映画館で『ドライヴ』を観るぞ、この野郎!

今回注目した予告編


★『ドライヴ』
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン
3月31日より絶賛公開中
公式サイト:http://drive-movie.jp/

【悪役を語るコラム】クレイジーだけど頭が切れるデニス・ホッパーin『スピード』
2012年03月02日

【written by 鈴木純一(すずき・じゅんいち)】映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
【最近の私】Coming soon...
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2010年にこの世を去ったデニス・ホッパーは、さまざまな映画で悪党を演じてきた。『ブルー・ベルベット』での変質者や、ゾンビ映画『ランド・オブ・ザ・デッド』の大富豪、それから、『スーパーマリオ/魔界帝国の女神』のクッパもありましたね...。そんなホッパーが悪役として登場する映画から、今回は『スピード』を紹介したい。.
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デニス・ホッパー演じる爆破魔ハワードは、ロサンゼルス市内を走るバスに爆弾を仕掛ける。その爆弾は、走っているバスの速度が時速50マイル(約80キロ)以下になると自動的に爆発するという特殊なもの。こうした行動に出たのは、バスの乗客を人質にして警察から身代金を取るためだった。そこで、ロス市警のジャック(キアヌ・リーヴス)がこのバスに乗り込み、事態を収束させようとする。しかしハワードは、警察が爆弾を解除して安心したスキに別の爆弾を仕掛けたり、警官たちをおびきよせて爆弾で吹き飛ばしたりと、情け容赦のない悪行を連発。さらに、警察の手を読んで追跡を巧みにかわすなど、観る者をかなりイライラさせてくれます。警察はハワードのことを「クレイジーだが愚かではない」と言うが、まさにその通り。異常だが狡猾な悪党だ。しかし爆弾を作る技術があれば、犯罪などしなくても他に仕事があるだろうと思ってしまうのだが、それを言ってはおしまいか。.
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映画の悪党は非情であればあるほど魅力的だが、僕は悪党の最期には壮絶さも必要だと思っている。本作のホッパー演ずるハワードの最期は、壮絶だが悲惨でもあります。『スピード』はさまざまなスリルを盛り込み、観客を飽きさせないサスペンス・アクション映画に仕上がっている。まだ観たことのない人には、オススメの作品だ。.
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ちなみに、『スピード』が公開される20年前に製作された日本の映画に『新幹線大爆破』がある。新幹線に爆弾が仕掛けられて、速度が時速80キロ以下になると爆発する・・・という物語で、『スピード』の元ネタと言われている。爆弾を仕掛けた「爆破魔」には高倉健が扮していた。こちらもホッパー並みの狂気をはらんだキャラクターだった。.
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しかし『スピード』を観直すたびに残念に思うのは、もう新作映画でホッパーが悪党を演じる姿をスクリーンで観られないこと。もっと僕たちをドキドキ、イライラさせてほしかった。合掌。