B級映画復活プロジェクト~リアル・アクション再び
[ B級映画復活プロジェクト「グラインドハウス」 ]
クェンティン・タランティーノが脚本を書いた「トゥルー・ロマンス」にこんな場面がある。クリスチャン・スレイターが、観客の少ない寂しい映画館で千葉真一のカンフー映画3本立てを観ているシーンだ。このような映画館はアメリカでは"グラインドハウスと"呼ばれていた。"グラインドハウス"とは1960~80年代にアメリカの場末に多く存在していた映画館で、そこではアクションやホラー、カンフー映画など、猥雑でパワフルなB級映画が2本~3本立てで上映されていた。「デス・プルーフ」「プラネット・テラー」は、グラインドハウスで上映されるような映画を再現したプロジェクトである。
[ GOGO タランティーノ! お楽しみはこれからだ ]
「デス・プルーフ」は、タランティーノ作品の特徴である本筋と関係ないおしゃべりや、監督自身が好きな映画への愛情が爆発している。まずは女の子3人組が登場し、ドライブしながら会話をする。次にバーで飲みながら、彼女たちはさらに会話を続ける。物語とは関係ない会話が延々と続くのだ。そろそろ聞き飽きたと思ったところで、カート・ラッセル扮するスタントマン・マイクが現れ、恐ろしい展開に急変する。
場面は変わり、別な女の子4人組が登場する。そこでまたガールズトークが始まるのであるのだ。「またか!」と思うが、会話の中で過去の映画についてこんなセリフがある。「今の映画だとカーチェイスはCGで撮影しているが、昔はスタントマンが体を張って危険なアクションに挑戦していた」、「『バニシングIN60』は傑作だった。アンジー(アンジェリーナ・ジョリーのこと)が出ていた、つまらないリメイク版(「60セカンズ」のこと)じゃなくてね」。最近のCGまみれのアクションに不満のある映画ファンにとって、溜飲が下がる言葉だ。
そして再びスタントマン・マイクが現れ、激しいカーチェイスが始まる。ここでのカーチェイスは、先の会話にあった"CG抜きの本物のアクション"が繰り広げられるのだ。そして物語は衝撃的な"The End"を迎える。
グラインドハウス映画はタランティーノにとって格好のジャンルだったと思う。それは今まで彼が撮った作品は常に「猥雑でパワフル」だったからだ。「デス・プルーフ」はタランティーノでなければ撮れない傑作である。タランティーノには、このまま突っ走ってほしい。予定調和で終わらない過激な映画を作り続けてほしい。タランティーノがいる限り、お楽しみは終わらない!