気ままに映画評

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『ブーリン家の姉妹』 by 西澤歩知(2007年10月期実践コース修了生)

愛か野心か、幸せはどちらに


「私の姉だから...」。メアリーは、自らの身の危険も顧みず、王に対してアンの命乞いをする。メアリーを裏切り、酷い仕打ちを与え、彼女の心をずたずたに傷つけた姉のアン。しかしメアリーは、「自分の分身」であるアンを、助けずにはいられなかった。アンとメアリーが送った人生は、まさに陰日向の繰り返しだったと言える。

王の愛をめぐって運命に翻弄された人生を送った姉妹2人の、この熾烈な勝負、軍配は結局どちらにあがったと言えるのだろうか。
メアリーは、一族繁栄のための道具として王に差し出される。しかし彼女は、純粋な気持ちで王に愛を捧げた。一方アンが王に捧げたのは、野心に満ちた愛だった。
メアリーは、王に優しく愛され、愛人としては見放された後も、王の信頼は失っていなかった。そして宮廷から追放された後は、予ねてから望んでいたとおり、「自分を愛してくれる夫」と田舎での穏やかな生活を送ることができたのだ。
一方、策略で王を拒み続けたアンは、メアリーから王を奪うことには成功するものの、王の真心までは奪えなかった。
王は、アンに拒絶され続けたがゆえに彼女を求めた。つまり愛情によってアンを求めたのではなく、自分のプライドを満たすために彼女を手に入れることに固執したのだ。
しかし、そのようにして手に入れたものに対し気持ちが冷めるのは必至のことである。そしてアンは、最終的には断頭台へ送られることになる。

姉妹の勝負は、メアリーに軍配が上がったかのように見える。平穏な結婚生活を手に入れた彼女に、共感を寄せる人も多いことだろう。しかし、英国国教会を設立する足がかりを作り、後のエリザベス1世をこの世に誕生させ、歴史に名を刻むこととなったのはアンである。
穏やかな結婚生活だけが女の幸せではないはず。そう考えると、アンの生き方には、何か惹かれるものを感じざるを得ない。特に、王の愛を奪うためにアンが遂行した作戦。どうしても欲しいもの(人)がある女性にとっては、学ぶところが多いのでは?