気ままに映画評

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『ブーリン家の姉妹』 by 長谷川梓(2008年10月期基礎コースII 金曜夜クラス)

イギリス史の作者達~対照的なブーリン姉妹~


イングランドの歴史家から"歴史の作者"と呼ばれているイングランド王・ヘンリー8世の第2王妃アン・ブーリンという女性。
男児に恵まれなかった国王は彼女に魅了され、再婚する決心を固めるも、当時離婚を認めなかったカトリック教徒と断絶する事態に。この再婚は国を揺るがす大スキャンダルとなった。
一気に王妃の座に駆け上ったアンだったが、女児を出産し国王を落胆させる。そしてすでに次の女性に心変わりをしていたためか、国王は様々な罪を着せて彼女を処刑してしまうのだ。しかし皮肉にも、後のイギリスに45年間の繁栄をもたらしたのは、伝説的な人気を誇る王女・エリザベス1世。すなわちアンの1人娘だった。
36歳の短い生涯だが"イングランド国教会の樹立の原因"となり"黄金期を築いた女王を出産した実母"として、アン・ブーリンが歴史に与えた衝撃は計り知れない。

映画『ブーリン家の姉妹』は、アンとメアリーのブーリン姉妹とヘンリー8世が織り成す愛と陰謀の歴史小説が原作だ。
これまでアン・ブーリンの物語は数多くあるが、今作は歴史の表舞台に名が残っていない姉のメアリーも描かれている。華やかで意志の強いアンとは対照的に従順な田舎娘のメアリーは日陰にいる目立たない人物。陰の存在として強調するために、作中では意図的に設定を変え、メアリーを妹として描いたという。
陰謀渦巻く宮廷内で、アンとメアリーは愛憎や嫉妬など様々な生々しい感情の渦に巻き込まれる。そしてそんな中でも、時折見せる2人の強い姉妹の絆が物語を劇的に盛り上げていく。

16世紀のテューダー朝はイギリスの確立したモダンデザインが発展した時代だ。当時をしのばせる歴史的建築物の数々は一見の価値がある。
制作スタッフは、それらの建築物を現代に蘇らせるため研究に研究を重ね、近代が始まりつつあった、生き生きとした時代をスクリーンに復活させたのだ。
また、衣装を手がけたのは『恋におちたシェークスピア』などでアカデミー賞にノミネートされたサンディ・パウエル。歴史に即しながらも、創造性に富んだおしゃれな衣装をデザインし、誰もが憧れるイギリス貴族の華やかな生活を画面いっぱいに表現している。