気ままに映画評

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アクションの迫力とゾンビの恐怖を3Dで体感せよ!
『バイオハザードⅣ アフターライフ』

                                                 Text by 鈴木純一

ちらしバイオハザード.jpg人間とアンデッド(ゾンビ)が戦う『バイオハザード』の最新作は、シリーズ初の3D映画だ。近年は3Dがブームになっているが、『バイオハザードⅣ』は3Dカメラで撮影された、"本物の3D映画"である。

本物の3D映画とは何か? それにはまず、最近の映画産業の3D事情から説明する必要があるだろう。例えば、3D映画として公開された『タイタンの戦い』。これは1台のカメラで通常通り撮影した映像をコンピューターで3Dに変換した、いわば"3D化映画"である。

一方、本作品は撮影の段階から3Dだ。2台のカメラを人間の目と同じように横に並べて撮影するフュージョン・カメラという機材を使うことで、撮影の段階から立体的な映像を撮ることが可能になったのだ。こうして撮影された"真の3D映画"は、"3D化映画"と比べると、立体感と奥行きに歴然とした差が出る。


実はこれは、ジェームズ・キャメロン監督が『アバター』を制作する際に使用したもの。本作の監督であるポール・W・Sアンダーソンがキャメロンにアドバイスを求めたことで、『バイオハザード』シリーズで初めての "本物の3D映画"が実現したのである。


ところで、近年の3D映画の中には「わざわざ3Dにする必要はないのでは?」 と思うような作品も多い。特に字幕版で観る場合、字幕までが浮き上がって見えて読みづらいという経験をした人もいるだろう。また、長時間に及ぶ映画の上映中ずっと3D眼鏡をかけて大画面を見ていると、しまいには頭がクラクラすることすらある。

ところが、『バイオハザードⅣ』は違う。約1時間半という適度な上映時間に加え、3Dで観ることにより、一種のアトラクション(ゲーム)感覚が味わえるのだ。それも当然、元はと言えばこのシリーズは人気ゲームを映画化した作品。ゲームセンターで、迫りくるゾンビたちを次々と銃で撃ち落としていくリアル・ガンシューティング・ゲームのような、アトラクション(ゲーム)感覚のシーンが盛りだくさんなのだ。ゾンビ(アンデッド)やアクションといったキーワードから考えてみても、これこそ3Dで見るべき映画と言えるだろう。

実際、本作には、渋谷を舞台にした銃撃戦と大爆発のオープニングに加え、手裏剣、斧、銃弾や割れたガラスなどが観客めがけて飛んでくる3D映画のお約束な演出もある。特に中盤の刑務所でアンデッドとアリス(ミラ・ジョボヴィッチ)が戦うアクションシーンは、本作屈指の緊迫感ある見せ場だ。逃げるアリスの背後に迫るアンデッドの大群に、思わず「アリス、後ろ!後ろ!」と言いたくなる。

アンダーソンは『モータル・コンバット』『エイリアン VS プレデター』などアクションを得意とする監督だが、本作で3D映画に新たな表現方法があると確信したのか、現在ミラ・ジョヴォビッチ主演で『三銃士』を3Dで撮影中だ。ちなみにご存じの方も多いだろうが、アンダーソンとジョボヴィッチは夫婦である。


そして、もう一つ注目したいのはキャスティングだ。本作では、ドラマ『プリズン・ブレイク』で人気を得たウェントワース・ミラーが登場するが、ミラーが演じるクリスは最初、刑務所に閉じ込められているという設定だ。『プリズン・ブレイク』で刑務所から脱走する囚人を演じたミラーを再び刑務所に入れるというシナリオは、ドラマファンへの目配せか。

さらに、前作から引き続きクレアを演じるのは、ドラマ『HEROES/ヒーローズ』でもお馴染のアリ・ラーター。他にも少女Kマートに扮したスペンサー・ロックも再び登場する。さらに『Ⅱ』で活躍したジル・バレンタイン役のシエンナ・ギロリーも復活! 一体、どこで彼女に会えるのかは......観てのお楽しみである(笑)。


前作までの登場人物が新たな役割を担ってお目見えする本作は、シリーズの集大成にして新しいステージの始まりともいえる。そして3D技術によってアクションとスリルが満載のアトラクション映画となった『バイオハザードⅣ アフターライフ』、ぜひ映画館で体感してほしい。