by松澤友子
韓国のベストセラー作家として脚光を浴びるぺク・ヒス(オム・ジョンファ)は、盗作疑惑をかけられ、スランプに陥ってしまう。その後、彼女は再起をかけて執筆活動に専念するため、娘を連れてソウルを離れ、ある静かな村の別荘に滞在することにする。そこは、かつてアメリカ人宣教師が住んでいたという古い洋館。村の住人は彼女を歓迎するが、どことなく奇妙な雰囲気が漂っていた。
別荘での生活が始まっても、なかなか筆が進まないぺクだったが、娘がその洋館で出会った"お姉さん"から聞いたという話を元に、見事な作品を書きあげる。しかし、何とこの作品が再度盗作疑惑をかけられてしまう。果たして彼女は本当に盗作をしたのか? 娘のヨニが村の洋館で出会った "お姉さん"とは一体誰だったのか? 真実を知るために行動を起こすぺクを悲惨な運命が待ち受ける......。
映画は冒頭から、ぺク・ヒスが盗作疑惑をかけられて泣き叫ぶシーンが続き、波乱に満ちた展開を想像させる。更に、彼女が執筆活動のために滞在することになった洋館は、薄暗い森に囲まれて、何とも言えない不気味な雰囲気を醸し出していた。ここまで観ただけでも、いかにも「何か起こりそう」な予感。もちろん、その期待は裏切られることなく、洋館や村では奇妙な出来事が続く。特に物語の前半部分は、先の展開が全く読めず、驚きの連続だ。
加えて、ぺク・ヒスを演じるオム・ジョンファの演技が一級だ。目の周りを黒く縁取ったメイクに猫背、更にぼさぼさパーマの髪の毛がダラリと顔の上に垂れ落ちている。この外見を見ただけでも、まるで何かに取り憑かれているかのようだが、この不気味な外見に更に拍車をかけるのが、彼女の演技だ。執筆活動が思うように進まないシーンでノートパソコンを破壊したり、娘にどなり散らしたりする演技は迫真に迫り、思わず一緒に叫んでしまいそうになった。
ホラー映画の雰囲気で始まった本作品だが、後半は一転して、激しいアクションの連続。2度目の盗作疑惑をかけられて、真実を確かめるために調査を始めたヒスは、思いもよらぬ事件に巻き込まれていく。真実を明らかにしようとするヒスと、それを隠そうとする者たち。両者が文字通り、激しい死闘を繰り広げる。物語の前半では、背筋が凍るような恐怖を感じて手に汗を握りっぱなしだったが、後半では激しいアクションに、やはり手に汗を握りっぱなしだった。
作品の所要時間は約2時間。その中にホラー、サスペンス、アクション等、様々な要素が盛り込まれている。加えて、謎に満ちた物語の展開からは片時も目が離せず、気づいたらエンドロールが流れていた。