Text by Kenji Shimizu
現在では全世界に5億人のユーザーを抱えるSNS(ソーシャルネットワークサービス)フェイスブックは、ハーバード大学寮の一室で作られたものだった。創ったのは、ハーバードの学生である19歳のマーク・ザッカーバーグ。しかし、その過程の裏で、様々なトラブルを抱えていた。
映画はザッカーバーグが女の子にフラれた腹いせに「カワイイ女の子比較サイト」を驚異的なスピードで立ち上げるところから始まる。そのサイトの評判は瞬く間に学内に広まり、ザッカーバーグは一躍有名人となる。そんな折、その噂を聞きつけた双子の金持ち学生から新しいSNSの制作を依頼される。寝る間を惜しんでサイトのプログラムを書いたザッカーバーグだったが、それは双子の学生とは無縁の自身のSNS、フェイスブックのためだった...。
映画「ソーシャル・ネットワーク」の中で描かれる「フェイスブックを創ったのは誰か?」を巡る論争は、知的財産の所有権に関するスタンスの取り方で見え方が全く異なってくる。
例えば、インターネット検索エンジンで有名なグーグル社では、アイデアを思いついただけでは評価されない。つくって実現させて初めて評価を得る。それがまだ創立12年に満たないグーグル社の社風だ。「新興」ゆえ、まだ一般的とは言えない考え方だが、グーグル的視点に立つとザッカーバーグはヒントをもらっただけ、つまり、フェイスブックの創始者は間違いなくザッカーバーグなのだ。
一方で、アイデアが無くては何も生まれないこともまた事実。現代社会では、知的財産の所有権は特に尊重される。一般的な常識に照らし合わせれば、ザッカーバーグが双子の上級生からアイデアを「盗んだ」と言える。
さて、どちらの見方が正しいのか? 個人的にはザッカーバーグだと思うが、こうした考えは恐らくはまだ少数派だろう。「人のアイデアをパクっておいて何が正しいんだ?」と反発されるかもしれない。しかし、価値観の変容が著しい現在、多数派だから正しいとも限らない。特にIT、デジタルの世界ではそれが顕著だ。あまり頑なな態度を取ると、置いてけぼりを食らいかねない。何故かそんな危機感を感じた映画だった。