気ままに映画評

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2011年10月 アーカイブ

『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』
トークショー潜入レポート&映画レビュー

                                                  text by 鈴木純一

『ドラゴン 怒りの鉄拳』にオマージュを捧げたカンフー・アクション大作
『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』!


ドニー表.jpg新宿武蔵野館で"香港アクション列伝BIG4"と称し、香港映画4本が連続上映されている。その第2弾として上映されている『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』を観てきました!『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』は、ブルース・リー主演の『ドラゴン 怒りの鉄拳』の続編だ。『怒りの鉄拳』のラスト、虹口道場で宿敵の日本人を倒したチェン・ジェン(ブルース・リー)は銃弾に倒れたが、『レジェンド』ではチェンは生きていて......という物語である。

『レジェンド』の舞台は、1925年に日本やイギリスなど各国が策略を進める上海。チェン(ドニー・イェン)は日本軍に対抗する運動を進めるが、日本軍は抵抗する人間たちを次々に処刑していく。EXILEのAKIRAが日本軍の暗殺隊長として出演しているが、この時代に髪型がポニー・テイルの軍人はいないだろ!というツッコミはやめましょう。これは映画ですから(笑)。しかし、日本軍が中国人に対して非道の限りをつくすシーンは日本人の自分から見ても「日本人って、ひどい......」と思わせるほどだ。

そしてチェンは黒い詰襟服とマスクをつけた仮面の戦士として、日本軍人たちを倒していく。この黒ずくめの衣装は、60年代のテレビドラマ『グリーン・ホーネット』でブルース・リーが演じたカトーの衣装にそっくりだ。今年になって映画版『グリーン・ホーネット』が公開されたが、ドニーが「カトーをやるなら、こうやれよ!」といわんばかりの大活躍である。でも、もしドニーがカトー役だったら、強すぎてグリーン・ホーネットは必要ないんですけれどね。映画の中盤、新聞社の室内でド派手に周りのモノを壊しながら繰り広げられるバトルは凄い迫力。ここで展開されるドニー対AKIRAの対決は見ものです。

そしてクライマックスでは、チェンは白い詰襟服を着て再び虹口道場へ向う。白い衣装は『怒りの鉄拳』の冒頭でリーが着ていた白い詰襟服と同じである。そして大勢の日本人たちを相手にただ1人、最後のバトルを繰り広げる。アクション映画好きとしては、このシーンで興奮が沸点に達しました。チェンが「アチョー!」というリーばりの怪鳥音と共に蹴りやパンチを繰り出す。そしてヌンチャクを振り回すのも『怒りの鉄拳』でリーがヌンチャクを使っていたことへのオマージュですね。自分は日本人なのに「ドニーがんばれ!日本人を倒せ!」と応援しました。そしてドニーが「中国人はアジアの病人ではない!」とオリジナル版でリーが言ったセリフを発する。そして戦う途中でジャケットを脱ぐが、48歳とは思えない筋肉!宇宙最強の48歳です。
『レジェンド』はドニーが敬愛するブルース・リーの『怒りの鉄拳』にオマージュを捧げた"怒りの続編"となった。そしてアクションだけではなく、『インファナル・アフェア』のアンソニー・ウォンやショーン・ユー、『トランスポーター』のスー・チーなど豪華な共演者たちが脇を固めて、歴史に翻弄される人間ドラマとしても見応えのある作品になった。香港映画ファンだけではなく、映画好きなら見逃す手はない。


EXILEのAKIRAは20歳のバンドマン!?
出演者によるトークショーは笑いが盛りだくさん

11-09-30_006.jpg上映後は、『レジェンド』で山崎中尉を演じた舟木壱輝さんと、武術指導を担当した谷垣健治さんが登場してトークショーが始まった。谷垣さんは1993年に香港に渡り、香港映画でアクション指導を担当してきた。日本でも数多くの映画で活躍しており、現在撮影中の実写版『るろうに剣心』でアクション監督を担当している。

谷垣さんは「ドニーは1995年に香港で放送された人気ドラマ『精武門』(『怒りの鉄拳』の原題)に主演し、それから再び『怒りの鉄拳』を作ろうとしていた。1999年に製作する話が出て、日本で製作の準備もしていた(共演者の候補は中山美穂だったそうだ)。しかしその話がなくなり、2009年に『レジェンド・オブ・フィスト』として製作されることになった」と、ドニーの本作にかける情熱を語った。舟木さんはドニーについて「ドニーさんはクライマックスで服を脱ぐので、このシーンのために撮影の合間に腕立て伏せをするなど、絶えず筋肉を鍛えていた」と、彼の俳優としてのプロフェッショナルぶりについて話した。

そしてEXILEのAKIRAが出演したことについて谷垣さんは「中国のスタッフから、日本人のバンドマンが出演することになった、年齢は20歳と言われていた。でも来たのはAKIRAさんだった。EXILEはバンドじゃないし、それに彼は20歳じゃないから(笑)!
でも、アクションシーンでのAKIRAのリアクションは予想外で面白いってドニーがほめていたよ」と撮影の様子について話した。

ドニー裏.jpgまた、ドニーはAKIRAと戦うシーンで、AKIRAに最後の一撃を打たずに終わるのだが、この理由としてドニーは「あまりAKIRAを殴ったら、日本のAKIRAファンに俺がひどいヤツだと思われるから」と話していたのだそうだ(谷垣さん談)。しかし映画が完成し、AKIRAの悪役キャラぶりが際立っているのを観ると、「もっと殴っとけばよかった」と思わず後悔の声を漏らしていたのだそうだ。

さらに『レジェンド』でドニーは黒い仮面と服を着た仮面の戦士となるが、谷垣さんは「当初はドニー演じるチェンはバットマンのようなヒーローで、彼の妹役のチョウ・ヤンがバット・ガールになって、ドニーと一緒に活躍する予定だった」と意外な裏話も教えてくれた。

このように、トークショーは現場の裏話が満載の中身の濃い時間となった。『レジェンド』以降も、武蔵野館では『アクシデント』『密告・者』が上映される。香港映画が連続して上映されるイベントは少ないので、この機会に観に行ってはいかがでしょうか。