"原文に忠実に訳せ"。しばしばこの言葉が拷問になるときがある。下ネタである。
素材すべてがお堅いドキュメンタリー番組ばかりではないので、下ネタの1つや2つはあって当然といえば当然だが、訳すときの苦労は絶えない。
特に「普通の会話としてもとれるが、流れ的には"下"だろ?」のような、ダブルミーニング的な文は厄介だ。「こんな訳つけたらチェッカーさんに変態と思わるかも(汗)」という自分と「情報を正確に伝えろ、キラリ☆翻訳者魂を見せるんだ!」という自分との戦いが始まる。
まあ、結局はモンモンとしながらも翻訳者魂を見せるのだが(笑)
先日もオフィスで、原稿チェック中の同僚に意見を求められた。「この原文って普通の会話と思う?下ネタ?」。ひるむ僕に彼女、「前にお色気コメディを大量受注したときなんてさー、朝10時から丸1日下ネタチェックよ」。クールに言った。
翻訳者たるもの、大先生でもなければ自分の苦手な素材だろうと引き受けなければならないのは常だ。下ネタに限らず、いかなる素材(残酷・悲哀・宇宙・メカ・etc...)が来ようと平然と受け止められる度胸も、翻訳者にとっては必要な資質なのかもしれない。