発見!今週のキラリ☆

« Vol.7 「夢追人、その先にあるもの」 by 藤田 奈緒 | 発見!今週のキラリ☆ トップへ | Vol.9 「ジャズでキラリ☆!心のバランス」 by 藤田 庸司 »

vol.8 「懸命さが与えてくれるもの」 by 丸山 雄一郎


みなさん、はじめまして!
翻訳センターで日英部門と編集部門のリーダーをしている丸山雄一郎です。今回から「キラリ☆」執筆のローテーションに加わって、日頃感じていることや新たに発見したことなどを、皆さんに伝えていきたいと思います。

私はもともと「映像翻訳」の世界の人間ではなく、出版の世界で雑誌作りや広告制作に従事してきました。というわけで、いつもとは一味違う「番外編」、「キラリ☆」ではなく「ギラリ★」をテーマにしたコラムとして、楽しんでくだされば幸いです。

1ヶ月ほど前の話です。たまたまその日は早い時間に帰宅することができたので、TVでドラマを見ていました。現在も放送中の『バンビーノ』(日本テレビ系)という松本潤主演のドラマです。マツジュンが演じるのは、有名なイタリアンレストランの見習いシェフ。その回は一流のシェフになろうと意気込むマツジュンがホール担当にまわされ、不満を募らせるというようなストーリーでした。印象に残ったのは、マツジュンが調理場に立ちたいという思いを、佐々木蔵之介演じる先輩シェフに訴えるシーンでした。マツジュンからの料理への熱い思いと、ホール担当という仕事への不平を聞いた先輩シェフはこう答えます。

「目の前のことに一生懸命になれない人間に夢を語って欲しくない」

台詞の内容自体は、新しい言葉でも何でもありません。職場の上司からお説教半分で同じようなことを言われた記憶なら多くの人にあるでしょう。でもその時、僕はその台詞にハッとさせられました。僕が普段から親しくして頂いている大御所の作家先生から言われた、ある一言を思い出したからです。

ある日、先生と食事をしている時に、僕はこう尋ねました。
「その道の一流と呼ばれるような人間にとって一番大切なものはなんですか?」

先生は一言、僕にこう答えました。
「懸命さだよ」

当時の僕(20代後半)には正直、その答えの意味はよく分かりませんでした。作家、デザイナー、建築家、映画監督、料理人など、特にクリエイティブな分野で一流と称されるために一番必要なのは、やはり才能だと思っていたからです。

しかし僕はその後、編集者やライターとして、フリーランスのプロとしてのキャリアを重ねていくうちに、先生の言っていた意味がなんとなく理解できるようになりました。

気づいてみれば簡単なことでした。懸命になれていないなと感じつつこなした仕事は、決して評価してもらえないのです。そしてそれは一流か中堅か、見習いの段階かには関係なく、そもそも「仕事をする」という行為の必要条件なのだと分かりました。「才能があるから片手間でよい」などということはあり得ない。才能を持った人間が「懸命に」作り上げるからこそ、他の人間には真似のできないものが生まれるのです。

才能の有無を語る以前に、私たちは、目の前にある仕事や勉強を懸命にやることでしか、評価もチャンスも得られないのです。その逆に、懸命ささえあれば、人はその人を信用し、次の道を示してくれるのです。

この学校で、講師や翻訳センターのスタッフは、常にみなさんの懸命さを探しています。例えスキルがまだ十分でなくとも、あなたに懸命さがあれば、僕らは必ず力を貸します。

時にはギラリ★と輝くあなたの懸命さを見せてください――。
僕らは常にそういう人を待っています。

最後にもう一度、自戒を込めて書きます。

皆さんは、今目の前にある仕事(勉強)に懸命に取り組んでいますか?
今翻訳している仕事、いま取り組んでいる課題に、自分はベストを尽くしたと胸を張れますか?