Vol.19 「言葉の裏側にあるもの」 by 丸山雄一郎
11月のテーマ:オモテとウラ
みなさん、体調崩さずにがんばってますか?
今週の「キラリ☆」は編集チームリーダーの丸山雄一郎が書かせていただきます。
今月のキラリの共通テーマは「オモテとウラ」です。
そこで僕は、"言葉の裏側にあるもの"というテーマでお話をさせていただきます。
僕が大事にしている1冊の本があります。
疲れたとき、くじけそうな気持ちになったときに、よく読み返している本です。
本のタイトルは『お母さん、ぼくが生まれてごめんなさい』(扶桑社)。
扶桑社版は、20年以上前に書かれた同書の復刻版で、2002年に発売されました。
発売と同時に、メディアにも数多く取り上げられたので、手にした方も多いかも
しれません。
内容は、重度の障害を持って生まれてきた男の子、やっちゃんの15年という
短い生涯を描いたノンフィクションです。
冒頭にやっちゃんがおかあさんに書いた詩が載っています。
ごめんなさいね おかあさん
ごめんなさいね おかあさん
ぼくが生まれて ごめんなさい
ぼくを背負う かあさんの
細いうなじに ぼくはいう
ぼくさえ 生まれなかったら
かあさんの しらがもなかったろうね
大きくなった このぼくを
背負って歩く 悲しさも
「かたわな子だね」とふりかえる
つめたい視線に 泣くことも
ぼくさえ 生まれなかったら
ありがとう おかあさん
ありがとう おかあさん
おかあさんが いるかぎり
ぼくは生きていくのです
脳性マヒを 生きていく
やさしさこそが 大切で
悲しさこそが 美しい
そんな 人の生き方を
教えてくれた おかあさん
おかあさん
あなたがそこに いるかぎり
この詩は、やっちゃんが通う養護学校の先生がやっちゃんと一緒に作った
詩だそうです。
とても感動的な詩です。
心を直接、揺さぶられるような言葉に何度読んでも涙が出てきます。
私たちは、日常の生活の中でいつも人の言葉の裏側にあるものを探ろうとしています。
「あの人は、本当はどう思ってるんだろう?」
「私を騙そうとしているんじゃないか?」
「これって本当かな?」
好きな人の気持ち、仕事上のやりとり、数多くの契約書...。
そしてTVのニュースや週刊誌などのメディアは、毎日のように言葉の裏側を
探りに探っています。
もちろん、言葉の裏側にあるものを探らなければ、仕事上の成果や自己の形成、
自己防衛もできません。現代を生き抜くために、必須の能力です。
しかし、常に「探る」行為を強いられるからこそ、
「探らない」「探らなくていい」言葉を気持ちを僕らは求めたくなるし、
その言葉がなければきっと虚しいだけの人生でしょう。
「ありがとう」
「愛してる」
あなたの周りにいる家族、友人、恋人、仲間...。
ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、
あなたが大切に想っている人に声を出して言いましょう。
きっとその言葉が僕らを幸せにしてくれるはずです。