発見!今週のキラリ☆

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2007年11月 アーカイブ

Vol.19 「言葉の裏側にあるもの」 by 丸山雄一郎


11月のテーマ:オモテとウラ

みなさん、体調崩さずにがんばってますか?
今週の「キラリ☆」は編集チームリーダーの丸山雄一郎が書かせていただきます。

今月のキラリの共通テーマは「オモテとウラ」です。
そこで僕は、"言葉の裏側にあるもの"というテーマでお話をさせていただきます。

僕が大事にしている1冊の本があります。
疲れたとき、くじけそうな気持ちになったときに、よく読み返している本です。

本のタイトルは『お母さん、ぼくが生まれてごめんなさい』(扶桑社)。
扶桑社版は、20年以上前に書かれた同書の復刻版で、2002年に発売されました。
発売と同時に、メディアにも数多く取り上げられたので、手にした方も多いかも
しれません。

内容は、重度の障害を持って生まれてきた男の子、やっちゃんの15年という
短い生涯を描いたノンフィクションです。

冒頭にやっちゃんがおかあさんに書いた詩が載っています。

ごめんなさいね おかあさん
ごめんなさいね おかあさん
ぼくが生まれて ごめんなさい
ぼくを背負う かあさんの
細いうなじに ぼくはいう
ぼくさえ 生まれなかったら
かあさんの しらがもなかったろうね
大きくなった このぼくを
背負って歩く 悲しさも
「かたわな子だね」とふりかえる
つめたい視線に 泣くことも
ぼくさえ 生まれなかったら

ありがとう おかあさん
ありがとう おかあさん
おかあさんが いるかぎり
ぼくは生きていくのです
脳性マヒを 生きていく
やさしさこそが 大切で
悲しさこそが 美しい
そんな 人の生き方を
教えてくれた おかあさん
おかあさん
あなたがそこに いるかぎり

この詩は、やっちゃんが通う養護学校の先生がやっちゃんと一緒に作った
詩だそうです。

とても感動的な詩です。
心を直接、揺さぶられるような言葉に何度読んでも涙が出てきます。

私たちは、日常の生活の中でいつも人の言葉の裏側にあるものを探ろうとしています。
「あの人は、本当はどう思ってるんだろう?」
「私を騙そうとしているんじゃないか?」
「これって本当かな?」
好きな人の気持ち、仕事上のやりとり、数多くの契約書...。
そしてTVのニュースや週刊誌などのメディアは、毎日のように言葉の裏側を
探りに探っています。

もちろん、言葉の裏側にあるものを探らなければ、仕事上の成果や自己の形成、
自己防衛もできません。現代を生き抜くために、必須の能力です。

しかし、常に「探る」行為を強いられるからこそ、
「探らない」「探らなくていい」言葉を気持ちを僕らは求めたくなるし、
その言葉がなければきっと虚しいだけの人生でしょう。

「ありがとう」
「愛してる」

あなたの周りにいる家族、友人、恋人、仲間...。
ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、
あなたが大切に想っている人に声を出して言いましょう。
きっとその言葉が僕らを幸せにしてくれるはずです。

Vol.20 「人生におけるコイントス」 by 藤田奈緒


11月のテーマ:オモテとウラ

このところ急激に寒くなりましたが、皆さん風邪などひいていませんか?
実はお恥ずかしながら、私はかれこれ2週間ほど風邪で弱っています。
今年の風邪はかなり... やっかいです。

社会人として仕事をしていると、どんなに熱があっても、どんなに体がだるくても、
体にムチ打って働かなくてはならない時があります。私にとってはちょうど
先週の今頃がそうでした。

私が抱えていたのは、翌朝8時納品のボイスオーバーのお仕事。
週初めから風邪で体調を崩し、なんとか治そうと薬を飲んだものの、熱は下がらず
咳は止まらず。そして何がつらいって、原稿の尺合わせをしたいのに声が出ないこと。
結局、周りのスタッフの力を借りて夜通し作業をし、何とか無事納品できたのですが...。

深夜シーンと静まり返るオフィス、聞こえるのは作業するスタッフの打つキーボードの
カタカタという音だけ。やってもやっても作業は進まない。しかし時計は確実に進むし、
納期は近づいてくる。そんな中、風邪薬でぼーっとした頭でふと考えました。
「私、なんでこんなことしてるんだっけ?」


<コイントスとは>
2者の役割分担・順位付け・権利などを決めるために、
硬貨などを投げて表か裏のどちらが出るかを観察する行為。

誰もが子供の頃、一度は試したことがあるであろう、コイントス。
例えば休み時間、ドッジボールの先攻・後攻を決めるために10円玉を投げたとか。
あるいは巨大迷路でどっちの道に進むか決めるために100円玉を投げた、
なんてこともあったかもしれません。

コインの"裏表"が運命を決める、なんて大げさな話ではありませんが、
言ってみれば私たちの人生もいろんな選択の連続ですね。

例えば翻訳センターで働く今の私。

★もしあの時、以前の会社を辞めなかったら?
 翻訳センターで働いていなかったかも...
★もしあの時、トライアルを頑張って提出しなかったら?
 一度も仕事をもらえず、翻訳者生命が終わってたかも...
★もしあの時、小田急線を使って出勤してなかったら?
 代々木八幡にあったアカデミーに通わなかったかも...   などなど。

納品を終えた頃には、すっかり開放感に包まれ、こんなことを考えていたことすら
忘れてしまいましたが(笑) つまりは今ある自分というのは、自分が人生に訪れる数々のポイントで1つずつ道を選んできた結果だということ。一見、偶然のようにも思えても、偶然に偶然がどんどん積もり重なった挙句の"必然"なんだということ。
ふとすると、同じことの繰り返しの毎日に流され気味なのですが、通年より手強い風邪を相手に、ちょっと目が覚めた気がしました。

皆さん、風邪にはくれぐれもお気をつけくださいね!