3月のテーマ:旅立ち/別れ
最近、"旅立ち"を経験した藤田彩乃です。ロサンゼルスに来て、はや1ヵ月半。いろんなことが起きますが、楽しみながら前向きに頑張っています。渡米前にはたくさんの受講生・修了生から激励の言葉をいただき、胸が熱くなりました。
忙しいなか会いに来てくださった皆さん、ギリギリまで時間を共にしてくれた同僚や友人、本当にありがとうございます。
私の人生最大の旅立ちは、上京だろう。当時、私は18歳。友人や家族と離れる寂しさよりも、これから先に私を待っている新しい世界が楽しみで仕方なかった。しかしいざ東京に出てみると、右も左も分からない。想像を超える大都会での生活にとまどった。
すれ違う人と肩がぶつかり、謝ろうと振り返るとその人はもういない。もちろんエスカレーターの右側は歩くものだなんて知らなかった。初めての満員電車に呆然。人ごみに流されて、降りたくもないのに原宿駅で下車。道路が見えないくらいの人だかりを見て「祭りだ!」と勘違いし、店の陳列棚の荒れっぷりにセール期間中だとこれまた勘違い。車がないことをすっかり忘れ、大きな籐のかごを購入。満員電車で会社帰りのサラリーマンににらまれ、肩身の狭い思いをしながら小さなアパートに帰った。
まだガランとした部屋でひとりベッドに横になり、天井のしみを見つめていたら、なんだか無性に不安になったのを覚えている。当たり前にあったものがなくなる寂しさと恐怖をようやく実感していた。
あれから月日が経ち、いろんなことを経験した。海外の大学にも通い、気ままに旅したりもした。社会学や言語学、近代芸術や哲学の洗礼を受け、考え方が大きく変わった。かけがえのない友人にも恵まれ、人生を変える出逢いもあった。映像翻訳の世界に足を踏み入れ、それを一生の職業にすると決めた。
時に、大きな決断は犠牲を伴うことがある。よく言われることだが、何かを手放さなければ、新しいものは入ってこない。でも選んだ道の先には必ずキラリ☆と光り輝く何かがある。それを信じ、これからも新しいことに挑戦し続けたいと思う。
4月から映像翻訳を学び始める方、進級して学習を続ける方、そしてこれからプロとして映像翻訳業界に旅立つ方、今年度皆さんが素晴らしいキラリ☆と出逢えますように。