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Vol.30 「ピンク★コンプレックス」  by 杉田洋子


4月のテーマ:ピンク

"憎い 恋しい 憎い 恋しい
 めぐりめぐって今は恋しい"
(「雨の慕情」 by 八代亜紀)

私のピンクへの思いはこの歌に集約されてる。
ピンクは初めて愛憎の表裏一体を教えてくれたものであり、
自分の成長過程と切り離せないものである。

恐らく大抵の女の子には、ピンクという色を迎合する時期と
拒絶する時期があるんじゃないだろうか。
小学校に上がる頃までは、私もピンク迎合派の一員だった。
でも現実は残酷にも、私の夢を打ち砕いた。

ピンク色のキキララ・デスクをねだる。(当時、女子の間で大流行)
→両親の一存で、高橋名人(当時、大流行)のパネルが入った
ナチュラルブラウンの学習机が届く。

パステルピンクのジャージキャラになりたい。(当時、同級生はみな
自分のシンボルカラーのジャージを着ていた)
→私のジャージはいつも青や紫。

スキーウェアは黄色だったし、スキー板は黒かった。
親友のAちゃんは私が欲しいピンクを全部持ってた。
そして、とてもよく似合ってた。
私はうらやましかった。そして、かなわないなと思った。
思えばこの時すでに、ピンク・コンプレックスの核が
私の中に芽生えていたのだろう。

だが小学校中学年にもなると、
ピンクを身に着けることに恥じらいを覚え始める。
ステレオタイプへの反発だ。
あからさまに女の子らしくすることが、
格好悪いような照れくさいような気がして、私はピンクを拒絶した。
両親のデスクチョイスに本気で感謝したものだ。
だが皮肉にもこの頃、いとこのお下がりで
ラメがかったショッキングピンクの自転車をもらった。
私は遠出をやめた。長いピンク氷河期が幕を開けた。

その間、何度か流行に緩和されたこともある。
ロマンチックやキュートがはやれば、
ホっとしてちょっぴりピンクを取り入れたりした。
でも、本当は心のどこかで、ずっとピンクに憧れていたのかもしれない。
堂々とピンクをまとい、いわゆる"女らしい女の子"というのが
うらやましかったような気がする。

今ではもちろん、周りの目なんて気にしないし、
純粋に好きか嫌いか、似合うか似合わないかでものを選ぶ。
ショッキングピンクは大好きだし、似合わないから服は選ばない。
次のケータイはビビットなピンクにする。
私はピンクを克服しつつある。
その一方で、ずっとピンクに抱いてきた「あまのじゃく性」は
しこりとして残っているのか、今も私は素直になれないことが多い。
たとえば、欲しいものを手に入れるために頑張ることが恥ずかしくて、
わざと手を抜いてしまったり。
もちろん、あとでしこたま後悔した。

そんな苦い記憶をたどるとき、ピンクへの愛憎を思い出す。
私にとってピンクは、手の届かない憧れや好きなものを跳ね返してしまう、
コンプレックスのシンボルカラーになっている。