発見!今週のキラリ☆

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vol.56 「旅的テンションの考察」 by 杉田洋子


5月のテーマ:旅

たぶん、このブログの読者(=主に修了生・受講生さん)には、旅が好きで経験も豊富な方が多いだろう。ハードルの高いテーマだ。旅のセオリーは人の数だけあるだろうし、旅によっても千差万別だと思う。思い出話を上げればきりがないし、その時のポリシーも手段もその時だから通用したこと。悶々としながらも、敢えて直球勝負の"海外旅行"に絞って今回は書くことにする。

数少ない経験を振り返ってみても、旅にはすごい魔力みたいなものがある。仮にそれを"旅的テンション"と呼ぶとしよう。たとえば外国にいるというだけで舞い上がって、普段は正常に作動するアンテナが、危険信号を傍受できなかったりすることがある。この人が日本人だったら絶対ときめかないのに、いいかもって気になったり。渋谷で声を掛けられたら"怪しいやつ"、と足早に過ぎ去るのに、旅先で話しかけられた途端、地元住民との交流という立派なコミュニケーションと認識し、笑顔の受け答えを選択してしまったり。結果痛い目を見ることもしばしばある。

この旅的テンションの考察というのをしてみたいのだけれど、私はいわゆる先進国とカテゴライズされるところに行ったことがない。バックパック背負って愛する中南米を巡る貧乏旅行ばかり。だから、感じる衝撃の類や心に留まるポイントにもそれなりの偏りがあることをご容赦いただきたい。

【考察1】セキュリティレベルの反転
スリや市場での交渉には日本以上に気をつけていると思うが、対人セキュリティレベルは往々にして低下し、オープンになりがち。その理由の1つは、旅に時空的な限界があることだと思う。ちょっとくらい相手と面倒があっても、この旅が終わればそうそう顔を合わせることもない。後腐れなくとことん付き合える。数日後に引き払う宿泊先を知られるのと、住み続ける自宅の住所を教えるのとではわけが違う。良い絆は時空を超えても維持できるし、面倒なものは時空で断ち切ってしまえばいい。そう思うと楽な気持ちでいろんな人の懐に突っ込んでいける。日本にいるときとは守る範囲が大逆転。サイフはガッチリ握っていても、心は解放的なのだ。

【考察2】旅場の馬鹿力
どんな貧乏旅行でも、やっぱり時間もお金もかかる。この日に照準を合わせて働いてきたのだ。そんな思いで臨む1年に1~2度のビッグイベントだから、悔いを残さずフルに使いたい。何か吸収して帰りたい。単なるレジャーと違い、語学の実践から文化遺産、グルメ、知識拡大、友達作り、旅にはあくなき+@を求めてしまう。疲れていても早起きできるし、普段はカメラなんか持ち歩かない人も、日記も家計簿もつけない人も、ここぞとばかりのマメさを発揮。アイドル並みのハードスケジュールを敢行し、名所に近隣諸国までを制覇する。この根本にあるのは、なんとなく、元取れ根性に近い気がする。かけた金額と時間以上の経験と成長をして日本に帰ってやろう、と。アインシュタインに教えてあげたい。

【考察3】バランス感覚の崩壊
1と2と重なる部分もあるけれど、旅先ではちょっとしたことにすごい感動できるし(たとえば現地のバスで目的地に行けたとか)、ちょっとしたことは気にしなくなる(たとえばトイレの惨状とか、あるだけマシとか)。すごく繊細で、すごく大胆になれるのだ。それは旅の醍醐味でもある。ハプニングだって生きながらえれば乙なもの。何でも都合よく捉えられるように、人間の頭はなかなか便利にできてる。どんな薄味も、どんなまずいものも、たちまち美味しく変えてしまう。旅行中の感覚崩壊は、まさに魔法のスパイスだ。


こうしてみると、私の旅は、"後腐れない解放感と、元取れ根性と、都合のいい錯覚"で構成されたとても腹黒い代物のようである。でも、実際に旅の計画を立ててる時や、旅の最中は、もっと純粋にワクワクした気持ちでいます、本当。こんな機会もなかなかないから、ちょっとヘソ曲がりな角度から考察してみたかっただけ。でもでも、こんなものだと思う部分もありません?旅って。(オチなしでごめんなさい)

口直しに、私が巡った国の、おすすめローカルスナックを紹介します。

●サルテーニャ(鶏肉や牛肉餡の包み焼きみたいなもの)
ジューシーで焼きたてでほっこりする旨さ。ボリビアに行ったらぜひ食べてみてください。私はこれでストをしのぎました。

●アンティクーチョ(牛のハツの串焼き)
かなりデカいです。ペルーに行ったらぜひ食べてみてください。特にクスコ。メニューはこれだけ、という硬派な店がおいしい。地元の人から情報を仕入れるべし。

●トルタ(メキシコ版サンドイッチ)
タコスもいいけど、メキシコシティーに行ったらぜひ食べてみてください。フレーバーごとの命名が安易で笑えます(チキンはケンタッキーとか)。私はこれでテロをしのぎました。

●バティード(フレッシュフルーツシェイク)
果物と粉ミルクを使って、その場でミキサーで仕上げてくれるシェイク状のドリンク。パパイヤ、グァバ、マンゴーなど。一番人気はマメイという柿っぽい優しい甘さの果物。キューバに行ったらぜひ飲んでみてください。濃くて甘~いキューバンコーヒーも忘れずに!

いろいろ言ったけど、人・食・音楽と現地のビールがあれば、私は満足!