5月のテーマ:旅
出し抜けだが、今月のテーマには、ほとほと困り果てている。
なぜなら、僕は本格的な旅をしたことがないからだ。もちろん、2泊3日の旅行程度ならばあるが、人が"旅"と聞いて連想するような旅をしたことがなく、したがって旅にまつわる体験が何もない。
たとえば、ベルリンのユースホステルで見知らぬ人と食事を共にしたり、砂漠の真ん中でバイカーに拾ってもらったりというような、いかにもな"旅"に関するエピソードがないのだ...。
というわけで、苦悶しながら考えていたところ、"旅"に出る理由として割合多いのが、「現実逃避」というテーマがあることに思い当った。ならば、僕にも"旅"と呼べるものがあった!
多分にカミングアウト的な要素を含み、自分が理想としているイメージからは程遠いので、今まで誰にも言ったことがなかったが、この際仕方がない...。
「僕はディズニー・シーが大好きだ!」
(あえてランドではなく、シー限定)
で? どこが"旅"と関係があるの? と思われるかもしれないが、"夢の国"に一歩入った瞬間に、俗世のことは完全に僕の頭から離れ、古き良きアメリカからベネチアの旅、海底探検や地底火山探検、果てはジョーンズ博士との旅に出発することができる。
旅を定義するものの一つとして「現実逃避」を挙げるのならば、シーに行くことは、立派な"旅"と言えるだろう。
シーにいる人々のウキウキ感あふれる顔を見ているのも好きだ。さすがに夜のパレードを見るために場所取りまではしないが、火山をバックにキラリ☆と花火が打ちあがる様は、まるで宇宙にいるのかと錯覚するくらい、我を忘れて見入ってしまう。閉園時間という無粋なものがなければ住み着きたいくらい、この現実感を欠いた"旅"に惹かれて止まない。
自宅から電車で40分、電車賃700円程度しかかからない、割安な"旅"だが、僕にとって、ロシアに行くよりも、月に行くよりも心躍る旅だ。
さて、ここまで書いてふと思ったが、僕が旅をしないのは、ただ単にものぐさだとかお金がないとかいうことだけが理由ではないようだ。ひとたび、現実を離れてしまうと、糸の切れた凧のように、二度と戻ってくることができないかもしれないということが、自分でもよく分かっているからなのかもしれない。