2月のテーマ:夜
僕は今の仕事を心底気に入っている。「映像翻訳」の世界の真っただ中で生きていることに充足感をおぼえている。
何となく流されるままフラフラと生きてきて、人に導かるまま、この職に就いたような気がするが、落ち着いて考えてみると、芯はブレていなかったようだ。その芯とは、"どんな形でもいい、映像翻訳に関わっていたい"という思いだ。それが、僕の気持ちを支え、岐路に差し掛かった時に正しい道を選択させてくれたのだと思う。
昨夜、修了生対象オープントライアルの説明会があり、不安に満ちた顔をたくさん見た。当然だろう。僕もそうだった。そもそも、僕の時代は、現在のメディア・トランスレーション・センターのような受け皿機関はなく、将来はまったくの闇だった。
スキルは得た、しかし、それをどう活かしたらよいのか? そもそも活かすことなど出来るのだろうか、このまま続けて果たして芽が出るのかと、講義が終わって帰宅してから、夜の闇に向かって延々と問いかけていたものだ。
実はフリーランスで映像翻訳の仕事を始めた当初、規定年収に達していないという理由で、マンションの賃貸契約を断られたことがある。この時ばかりは、映像翻訳の世界から足を洗って、定期収入が得られる仕事に転職をしようと思ったものだ。
しかし、それでも映像翻訳を続けたのは、海外素材が好きでたまらず、映像翻訳というものを心から愛していたからだ。
だから、僕は映像翻訳をやめなかった。いや、正確に言えば"あきらめなかった"と言うほうが正しいだろう。
皆さんにも様々な事情があるだろう。だから、軽々しいことは決して言えないが、迷いや不安が生じた時、映像翻訳の世界に飛び込もうと思ったきっかけを思い出してほしい。なぜ映像翻訳者を志し、どれだけ映像翻訳の世界に飛び込むことを熱望しているかを、しっかり考えてほしい。もう少しだけ、前に進む勇気が湧いてくるはずだ。
大丈夫。明けない夜はないから。