3月のテーマ:におい
先日、某雑誌の覆面座談会に参加した。覆面と言うからには特定されると困るので具体的なタイトルは避けるが、「男性のエチケットとは?」みたいなテーマだった。これに対して辛口な女性陣が言いたい放題...。やっぱり皆が口をそろえて言うのは「おじさん、においを何とかして!」というものだった。いつ頃からか加齢臭という言葉がメジャーになり、主な発生源としてはおじさんが特定されている。おじさんにとっては肩身の狭い世の中に違いない。でも、においに差こそあれ、生命活動を営んでいる限り、ある程度のにおいを発生してしまうことには誰にでもあるだろう。だって人間だもの。
こんなやさしい気持ちを持てるようになったきっかけは、数年前の冬、薬膳鍋を食べたあとの帰り道のことだった。薬膳鍋をご存じだろうか。美味ではあるが、スープの中に入れられている香辛料がキョウレツににおう。そのにおいが、その日来ていた革ジャンに染みついてしまった。帰り道、自分でもくさかった。でも、そのまま電車に乗った。そしたら、次の駅で勢いよく飛びこんできた若者が私の隣の席に腰を下ろした瞬間に腕で鼻を覆いながら言った。「くせえ!」。ショックだった。私じゃないのに。薬膳鍋なのに。原因がわかっていても「くさい」と言われるのは、衝撃的である。だけど見知らぬ若者に「すみません、薬膳鍋食べちゃって」と言い訳するのもなんだし、私は黙って耐えた。だから私には「くさい」と言われるつらさが分かる。また「くさい」と言われたからこそ、言われなくても「くさかったらどうしよう」という気持ちもあって、隣の席の同僚と固い約束を結んでいる。「くさい時には、正直に伝えあおう」と。
そんなこんな言っても、覆面座談会では結構発言していたような気がする...。覆面ってコワい。どんな仕上がりになっていることやら。雑誌の発売が楽しみだ。