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2010年6月 アーカイブ

vol.83 「私は失敗はしていない。これではうまくいかないという発見を1万回しただけだ(エジソン)」 by浅野一郎


6月のテーマ:パソコン

いまや映像翻訳者の作業に欠かせない存在となった"パソコン"パソコンを使いこなせないと、作業に支障が出ることが多くなってきた今日この頃。というわけで、今回は、私が考えるパソコンとの上手な付き合い方を紹介したい。

皆さんの中でも、パソコンが苦手で...という方は意外と多いと思う。
そして、厄介なことに、特に映像翻訳者にとって、パソコンは必携ツールと言っても過言ではなくなってしまった。
さらに映像翻訳実務では字幕制作ソフトの使用が必須となる場合が多く、パソコンに苦手意識を持っている人の肩身がどんどん狭くなっていることは想像に難くない。

そこで、今回のキラリでは、パソコンと付き合う際に必要な心得2カ条を伝授する。ちなみに、これらの心得は、最近私が学んだイヌのしつけの方法とまったく同じだ。

【心得その1】 パソコンはリーダーではない!
"権勢症候群"という言葉をご存知だろうか? 本来の正常な主従関係が逆転してしまうことで、イヌのしつけなどで、よく使われる言葉だ。
もともと服従心の強いパソコンが、持ち主の誤った使い方で自分が群れのリーダーだと勘違いしてしまい、持ち主にとっては傍若無人な振る舞いに及ぶことがある。
しかし、リーダーは持ち主であり、パソコンの進むべき道を示してくれる存在でなければならない。パソコンに対しては毅然とした態度で臨むべきだ。

だから、とにかくいろんなボタンなどを押したり、クリックしてみること。一番いけないのは"これをするには、何をどうすればいいの?"とパソコンに判断を委ねてしまうことだ。
むしろ積極的に、"ここをこうしたら、どうなるんだろう?"という気持ちで主導権を握り、様々な試みを実行に移してみるといい。
そうすれば、自分のパソコンの性格や機能が手に取るように分かると共に、パソコン側でも"この人なら、僕がリードしなくてもいいんだな"と、安心して扉を開いてくれるはずだ。

【心得その2】 しっかりできたら褒めてやろう!
心得その1では、"リーダー""主導権"などと書いたが、これは何もただ単に命令に従わせればいいということではない。
持ち主の要望を的確にかなえたら、成果を認めてご褒美をあげよう。ステキな壁紙や最適化をしてあげるのも効果的だ。いい環境で動くことが出来れば、パソコンもあなたの要望に、より速く正確に応えてくれるようになるはずだ。こうして、持ち主とパソコンの間でしっかり信頼関係を築くことができれば、パソコンが単なる道具・所有物ではなくなり、愛着が湧いてくる。そうすれば、もう恐れなど抱くことはなくなるはずだ。ちなみに私のパソコン(マックイーン君)は2週間ごとに壁紙を変え、1月に1度は必ず最適化をしてやっている。

あとは、パソコンと一緒に何をしたいのかをあらかじめ決めて、パソコンに向かうことも大切だ。スポーツでも映画でも何でもいいので、何かを調べる、何かを極めるという目標を持とう。好きなことをするためならば、苦労を惜しまないのが人間というもの。とにかく試行錯誤を繰り返して、目標にたどり着いた暁には、きっと、その分野のプロフェッショナルになっているはずだ。

vol.84 「素顔のままで」by杉田洋子 


6月のテーマ:パソコン

パソコンよ

お前をテーマにコラムを書けと言われても
何も思い浮かばない
こんなに毎日一緒にいるのに
私はまるでお前のことを知らない

朝起きて 会社に着いて 帰宅して
最初に私の人差し指が触れるのは
お前の電源ボタンなのに

朝から晩まで24/7
お前に触れないことはない
目を閉じてても探り当てられるほど
お前の体を知り尽くしてる

メーラーを立ち上げ ドングルを差し込み
プロジェクトを開いて F11を押す
流れる映像 点滅する字幕
時折スペース バックスペース
新たな息吹をウィンドウに打ち込む

カメラをつなぎ 画像を取り込み
ネットを立ち上げ ブログを更新
"あの人は最近 どうしてるだろうか"
疎遠になった知人の近況を画面で見ては
安堵と心配を繰り返す


パソコンよ
お前はまるで四次元ポケット
フォルダを開き その中のフォルダを開き
そのまた中のフォルダを開き
目当てのファイルを見つけても...

お前の素顔をじっくり眺めることはない
気付けばフォルダとショートカットまみれのお前の顔
ふと目をやれば
キーボードにたまった埃 曇るモニター
電気屋で出会ったあの日 お前はキラキラ輝いていた

詰めるだけ詰め込み 欲しいままに引き出し
お前を顧みなかった
お前と向き合うふりをして
いつもお前の先の何かを見ていた

お前がいないと生きてゆけないのに
(いや だからこそ)私のなけなしの口座には
新しいパソコンを買う資金だけは
常にストックされている
お前がいつ逝ってしまってもいいように...

嗚呼! どうか許しておくれ
薄情な私を...

今夜はお前の顔を拭いて
フォルダを片付け 素顔をじっと眺めてみよう
慈しむように 小さなマウスを包みこもう
キーボードの感触を そっと確かめながら...