発見!今週のキラリ☆

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2010年7月 アーカイブ

vol.86 「恐怖症」 by 藤田庸司


7月のテーマ:怖い話


怖いもの。地震、雷、火事、親父とよく言うが、人は大人になるにつれ、怖いものの数が減っていく気がする。僕だけだろうか。子供の頃は、幽霊や怪談、学校の先生やヘビをはじめ、今となっては些細なことも恐怖の対象となっていたが、世の中を知り、物事の実態や対処法を知るにつれ、それらに対する恐怖心は消えていった。これは年齢を重ねるごとに恐怖という一つの感受性が麻痺したと言い換えることができる。そして感受性が麻痺するということは、何かに感動する機会も減るということを意味し、恐怖におののいたり、肝が冷えることが減るということは、実は人生を豊かにする要素が減るという寂しいことなのかもしれない。

ただ、麻痺していく恐怖感に対して、薄れることのない、条件反射的に感じる恐怖がある。"恐怖症"というものだ。僕は高い所が苦手だ。高所恐怖症である。高い所から少しでも下を見ると、吸い込まれるような、フワっと宙に浮くような感覚に襲われ足がすくむ。訪問先のクライアントのオフィスがビルの高層階にあり、ガラス張りの高速エレベーターで数十階まで一気に上がるのだが、絶対に外は見ないようにしている。設計者は良かれと思ってそうしたのだろうが、僕にとっては豚に真珠だ。もちろん経験はないが、バンジージャンプをすると考えただけで少し体温が下がる。

同様に狭い場所にも恐怖を感じる。閉所恐怖症というやつだ。これは子供の頃のトラウマが関係するのかもしれない。大きな家電を包装していたビニール袋を頭からすっぽり被って遊んでいて、窒息死しそうになったことがある。狭い場所にじっとしていなければならなかったり、閉じ込められたような状況に置かれると、とても不安になり怖くなる。乗車中の電車が何らかのトラブルで満員状態のまま駅間で停車することがあるが、あれは拷問に等しい。

そして、以上2つの恐怖症を見事に引き出してくれるのが飛行機だ。何度乗っても苦手である。上空1万メートルと聞いただけで胸騒ぎがするし、特に離着陸や乱気流に入った際に揺れる時など、"降りたい"と思う。リアルに飛んでいる感覚が伝わり恐怖を感じるのだ。不安を紛らわそうとワインなどをガブ飲みしたら悪酔いし、現地到着時にはボロボロになっていたこともあった。また、エコノミークラスにしか乗ったことがないので、狭い座席に何時間もじっとしていなければならないことが苦痛で仕方ない。時間と経済的な余裕があれば広い海原を眺めながら、ゆったりと船で渡航するのだが...。宇宙旅行も遠い未来の話ではなさそうだが、僕はまず無理だろう。何らかの理由で人類が地球に住めなくなり、宇宙惑星に移住しなければならなくなっても僕は地球に残りたい。

vol.87 「真夏の生ゴミの話」 by 藤田奈緒


7月のテーマ:怖い話

先日、ある番組の字幕チェックをしていて知った驚愕の事実。ハエという生き物はなんと人間に寄生することがあるらしい。鳥の研究のためにパナマを訪れた男性が、背中にハエの卵を産みつけられ、そのまま背中の中でウジが成長を続けているという。ウジがうごめくたびに男性の背中に激痛が走る。あまりの痛みに耐えかねた男性は、友人に頼んでウジを1匹ずつピンセットで取り除いてもらうのだが、彼女は信じられない光景を目にすることになる。背中じゅうにボコボコと空いた大きな穴。そこからウジ虫がお尻を出し、白くグニュグニュとした体は、引っ張っても引っ張ってもまるで終わりがないかのように長く伸びていく...。

見るもおぞましいこの映像をチェックしながら、私は10年以上も前の真夏の出来事を思い出した。
事件は私が東京で1人暮らしをスタートし、初めて迎えた夏に起きた。

その夏、私は夏休みを利用して、友人と自動車免許を取るために新潟にしばらく滞在することになっていた。3週間ほど家を空けるので、ひととおりの家事を終えゴミをまとめていたところで、思いのほか電車の時間が迫っていることに気づいた。新潟へ持っていく大荷物を下まで運ぶ時間を考えると、ゴミの山を捨てにいっている余裕などない。何の躊躇もなく、私はゴミをそのままにして家を出ることを決めた。

新潟での辛くも楽しい合宿期間が過ぎ、3週間後、私は東京の自宅へ戻ってきた。ドアを開けると、かすかに生臭いにおいが漂ってくる。(あっ... そういえば生ゴミもそのままにして家を出たんだった! 早く捨てちゃわないとね) なんてことを思いながら台所の流しに近づくと、床に白いつぶがぱらぱらと散らばっている。(あれっ、私、白ゴマこぼしたんだっけ?)
かき集めようと床にヒザをついた次の瞬間、私はあまりの恐怖に仰け反った。小さなつぶ、1つ1つがゴニョゴニョと動き回っていたのだ。白ゴマの正体はコバエの幼虫だったのである。

その夏以降、私は生ゴミにかんして敏感になった。こまめに家の外に捨てるか、そうでない場合は必ずゴミ袋の口をこれでもかというほどギュッと縛ることにしている。それでもコバエは発生する時はするのだが...。

そういえば数年前、同僚にこの話をしたところ、彼はコバエ発生を避けるため、果物を食べたら皮を冷蔵庫に保存していると言っていた。彼は今でもそれを続けているのだろうか? 今年は特に猛暑続きなので、新たな対策を練り出しているのであれば、ぜひ教えていただきたいと思う。