発見!今週のキラリ☆

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vol.110  「ハーフ&ハーフをめぐる考察」 by 桜井徹二


6月のテーマ:半分

 先日、読んでいた本にこんな一文があった。

「世の中には2種類の人間がいる。かれらはそれぞれ社会の半数を占めているにもかかわらず、根本的に理解しあうことはできない。理解し合っていると思っていても、それは幻想にすぎない。なぜなら、かれらは男と女だからだ」

 なかなか身も蓋もない断言ぶりで、これを書いた人はただ何か個人的な思いを込めているだけじゃないかと疑いたくなるけれど、まあ確かに、と思い当たるところがないわけではない。

 10数年ほど前、男友達とその恋人が半ば同居していた部屋に遊びに行った時のことだ(彼らは4年ほど一緒に住んでいた)。しばらくして宅配ピザを注文することになり、3人でメニューを検討した末にハーフ&ハーフのピザを2枚選んで、その友達の彼女が店に電話をかけて注文した。

 だが届いたピザを開けてみると、注文したはずのピザと違うものが入っていた。ハーフ&ハーフのピザ2枚、つまり4種類ある具のうち、2種類が別の具だったのだ。店が間違えたのかと思ったが、注文した友達の彼女は、「自分が注文時に間違えたのかも」と言った(彼女は以前からそういうことが苦手だった)。

 ところがそう言いながら、彼女はさほど気に留めていない様子でピザをぱくぱくと食べ始めた。男友達はその態度に怒り、「間違えたのかもしれないと思ったならなぜ改めて確認しなかったのか」「そうでなくてもせめて間違ったことを謝るべきだ」と彼女を問い詰めだした。

 だが彼が何を言っても彼女は謝るどころか、「そもそも具の名前がややこしいのがいけない」という(いちおうの)主張を繰り返すだけだった。議論は見事なまでに平行線をたどり、そのあいだ彼は半ばあきれたような、半ば感心したような顔で彼女を見つめていた。

 そしてしばらくあと、このハーフ&ハーフの件がきっかけとなって、彼らは別れることになった(おそらく頭の片隅で、4年以上も付き合った相手と別れるにはいくぶん馬鹿らしい理由だと思っていたはずだ)。

 当時の僕は彼らが別れることになったのは、友達が彼女のいい加減さに嫌気が差したのかと思っていたけれど、今思えば一番の理由は、最初にあげた一文が言うところの「幻想」が打ち砕かれたこともあったのかもとも思う。あの時の友達の感慨深げでさえある表情は、彼がどこかで「現実」に気づいたためだったような気がしてならないのだ。

 もちろん、いくら具の名がややこしくたって、大人ならハーフ&ハーフの注文ぐらいちゃんとできてよさそうなものだと考えるのがまっとうだ(と思う)。けれど、あの一文が言うように、もし男性と女性の間には深い深い川が流れているならば、川を渡るなんて無理はせず、足先をちょびっと浸したくらいですぐにこちら側に引き返すほうが賢明なのかもしれない。さもなければ、あっという間に流れにのみ込まれてしまうことになるのだ。