発見!今週のキラリ☆

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vol.127 「必死になってますか?」 by 浅野一郎


1月のテーマ:リセット

日に日に気温も下がってきて、暑がりの私には本当にすごしやすい
日が続く。嬉しい限りだ。できれば、ずっと冬が続けばいいと思う
今日この頃だ。

さて、この3年間、私は正月を心待ちにしてきた。ただでさえ、
心躍る正月だが、ここ数年は「箱根駅伝」にて我が母校が破竹の
勢いで力を伸ばし、有力校を押しのけて大活躍しているからだ。

しかし、昨年の駅伝は主力選手の不調ということもあり、惜しくも
2位... 後輩たちが悔し涙に暮れているのを、テレビの前で私も一緒
になって泣いてしまった。
そこで後輩たちは駅伝が終わったその日から、「1秒を削りだせ」を
合言葉に猛練習を始めた。
トップの学校に21秒差で負けてしまい、10区に及ぶ各区間で、選手
一人一人があと3秒早く襷を渡していたら... という考えに基づき、
必死にトレーニングに励んだそうだ。
その甲斐あって、2012年の今年は、大会新記録という大きなお年玉
付きで、見事優勝を飾った。

そのときに思ったのは、いま当校で勉強をしている受講生、いま
トライアルに必死にチャレンジしている修了生、いま仕事を受けて
もらっている翻訳者のことだ。
よく、"どうやったら、映像翻訳者としてスキルが伸びるのか?
トライアルに受かるのか?"という質問をいただく。
そんなときは必ず、"とにかくたくさん映像素材を見ること"と答
えている。もちろん、これはこれで非常に有効なトレーニング方法
なのだが、もう一点、今年からは付け加えたいと思う。

「必死になってください」

受講生、修了生、翻訳者、どんな立場の人にも当てはまることだと
思うが、"もっと知りたい!"という気持ち、必死に物事を理解し
ようという気持ちを持ってもらいたいのだ。
映像翻訳は生半可な知識や覚悟でできるものではない。

映像翻訳者は、海外の素材はローカライズ(あるいはグローバライズ)
し、不特定多数の視聴者に、素材の内容を伝えることが使命だ。
その素材を見た人は知識を得て、さらに複数の人に口伝などの手段を
持って、自分の知識を共有していく。いわば映像翻訳者は文化の担い
手だ。

だから、"これはどういうこと?"などと聞かれたときに、"ちょっ
と、そのあたりは調べが付かなくて..."や、"聞かれると思ったんで
すよね..."という答えを返さざるをえないような、いい加減な仕事は
やめよう。必死に、その素材のことを調べ愛情を注ぎ、専門家になっ
てもらいたい。
そんな必死の想いを素材は絶対に受け入れてくれる。必死になって原
文を読み、必死になって調べ物をしてほしい。自ずと答えが返ってく
るから。