「味坊」:素朴な想いが伝わってくる餃子
2010年07月30日
【written by 扇原 篤子(おぎはら・あつこ)】人が大好き。大勢人が集まる市場や食堂も大好き。人間臭い魅力に溢れる場所をこれからどんどん紹介していきたいと思っています。"人間ばんざい!"当ブログマガジン「Chewing Over」で「やさしいHAWAI'I」連載中。http://www.jvtacademy.com/blog/co/hawai/-----------------------------------------------------------------------------------------
イーモウ監督の2000年ベルリン映画祭 銀熊賞を受賞した「初恋のきた道」は、心にいつまでも残る初恋の切なさをしみじみと謳い上げている。この映画の舞台は、冬は一面雪に包まれる厳寒の中国北部。美しい自然を背景に、小さな村で繰り広げられる初恋の物語だ。可憐で初々しいヒロイン・ディを演じているのはチャン・ツィイー。都会から来た若い教師に恋し、その思いを伝えようと一生懸命料理を作る。ある日その若い教師が突然町に帰ることになった。それを知ったディは、思いを込めて作った蒸し餃子を青花が描かれたどんぶりに入れ、教師が乗っている馬車を必死に追いかけていく。中国の広大な大地に果てしなく続く1本道を泣きながら走るディが転んだ瞬間、地面に落ちて割れた瀬戸のどんぶりから、餃子が転げ出す。
「味坊」の餃子は、そんなディの餃子を思い出させる。JR神田駅から秋葉原方面に向かい、ガード沿いに歩いていく。神田ふれあい商店街と称する、高架下に立ち並ぶ店の中に「味坊」はある。中国東北地方の家庭料理を専門とするこの店の料理は、どれも質素だが味わいがある。「水餃子」のほかに、一般的な焼きビーフンや酢豚もあるが、「じゃがいもの家庭風炒め」、「干し豆腐の冷菜」「餅細切りと野菜炒め」など、干しあわびやふかひれなどとは縁がないような、家庭の惣菜料理がメニューに並んでいる。店内は1階は厨房のほか10席ほど。2階はおよそ20名くらいは入れるだろうか。決して自己主張しない、ひっそりとたたずむ店だが、物静かに片言の日本語を操る店員とのやりとりには、家庭の温かさを感じる人肌のぬくもりがあった。
★お店情報★
店名:味坊
ジャンル:中国東北地方の料理がメイン
電話番号:03-5296-3386
住所:千代田区鍛冶町2-11-20 1Fと2F
交通手段:JR神田駅徒歩3分
営業時間: [月~金]11:00~14:30 17:00~23:00 土曜は11:00~14:30のみ
定休日:日曜 祝日