明けの明星が輝く空に

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第12回:餅をつかれた怪獣
2011年01月13日

【written by 田近裕志(たぢか・ひろし)】子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】実写版『ヤマト』を見た。アニメの森雪は好きだが、黒木メイサの森雪もアリだと思う。いや、むしろいいかもしれない・・・。
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正月と言えばお餅、お餅と言えば餅つき大会である。僕も子供のころ餅つき大会に参加した。その時は大根おろしをつけた餅を食べすぎ、気持が悪くなったという苦い経験をしたが...。

怪獣の中にも、餅つきを経験したものがいる。正確には、自分の体で餅をつかれてしまった怪獣だ。どういうことかと言えば、その姿が餅をつく臼そのものだったから。初代ウルトラマンから数えて5作目、『ウルトラマンタロウ』に登場したモチロンだ。

タロウはウルトラセブンとそっくりな姿をしてはいたが、作品の雰囲気は180度違っていた。セブンのシリアス路線とは正反対で、お気楽ヒーロー番組とも呼びたくなるような作風だった。なんたってモチロンが登場する回のタイトルが、『ウルトラ父子餅つき大作戦!』である。セブンをこよなく愛する僕にとっては、トホホ感いっぱいな路線を行く作品だった。

「月ではウサギが餅つきをする」という伝承から生まれたというモチロン。本物の餅が食べたくなって地球に襲来し、正月の餅つき大会を襲う。そして各地でタダ餅を食らうという悪行を重ねる。許すまじモチロン。主題歌よろしく怒りに燃えるタロウはモチロンを倒す。そしてその体を巨大な臼として使い、餅をつく。餅を振舞われた子供達は大喜びであった。めでたし、めでたし...。

モチロンは巨大な臼である。その姿は、猿かに合戦の絵本に出てくる臼を思い出してもらえればいい。臼に目や口があり、手足を生やしている。ただ正義感に溢れた猿かに合戦の臼とは違い、モチロンは悪人面だ。それでもどこか憎めないのは、下あごから上に向かって伸びる2本の牙のせいだろう。まるで"アイ~ン"とやった時のように、下あごが前に出ているように見える。要するにマヌケ面なのだ。

無生物がデザインの元となった怪獣と言えば、『ウルトラマン』のブルトンが思い出される。心臓をモチーフにしたというブルトンは、目や口のほか手足も持たないテトラポッドのような姿をしていた。また『ゴジラ対ヘドラ』のヘドラは、ヘドロの塊がそのまま立ち上がったような姿で、アンバランスに配された大きな縦長の目が不気味だった。他にも『ガメラ対ギロン』のギロン(包丁)や『スペクトルマン』のクルマニクラス(信号)などが挙げられるが、無生物をモチーフにした怪獣はあまり多くはない。

怪獣は生物をモチーフにしたものが主流だ。それにもいくつかのパターンが見られる。次回はそれを詳しく見ていくことにしよう。