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北極の不思議な生き物「イッカク」 (by 松澤友子)
2010年06月29日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
第1回目の今回は、『BBC EARTH』のシリーズ1作目「グレート・ネイチャー」を鑑賞した松澤友子さんが"海のユニコーン"と呼ばれる「イッカク」についてお届けします。
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「イッカク」と呼ばれる生き物をご存じだろうか?

私はこれまで見たことも聞いたこともなかったが、『BBC EARTH』の「グレート・ネイチャー」を鑑賞したときに、そのイッカクが突然画面に現れた。最初はただのクジラかと思って見ていたが、丸みを帯びた頭に長く鋭い角があることに気づき、その奇妙な形にすごく驚かされた。私にとって未知の生物だったので、このイッカクに興味を持ち、自分なりに調べてみた。

調べてみると、このイッカクはクジラの一種で、最大3メートルにもなる大きな牙を持つことが分かった。それもこの牙は2本あるうちの1本の歯が長く伸びたもので、極端に長い牙は雄にしかみられないそうだ。つまり、映像で角のように見えていたのは雄の歯だったのだ。この牙は主に雌を惹きつけるためのものと考えられており、繁殖期(7~8月)になると雄同士が牙の長さを競って争うこともあるそうだ。

「グレート・ネイチャー」では、ちょうどその夏場にイッカクの群れが北極を訪れる様子が映し出されていた。イッカクは夏になると、豊かな食料を求めて北極を訪れ、気温の上昇で解けた氷河の間を通って移動するそうで、映像には牙を使って氷河の氷を割りながら、水路を開拓して進む光景もあった。

しかし、さらに詳しくイッカクを調べてみると、北極に集まる夏の時期には彼らの牙を狙う猟師たちがいることが分かった。象牙のような貴重なイッカクの牙は高値で売れるため、近年乱獲が進み、生息数が著しく減少しているというのだ。

さらに、イッカクにとっての危機はこれだけでなく、地球温暖化が彼らの生活に多大な影響を与えていることも分かった。イッカクは生息地域が限定されていて、移動ルートも特定の場所から外れない哺乳類なのだが、温暖化の影響で他の動物がイッカクの生息地域や移動ルートに侵入し、食料を奪ってしまう可能性があるそうなのだ。イッカクを詳しく調べていくうちに、皮肉にも温暖化が北極に生息する動物に大きな影響を与えていることに行き着いてしまった。

今回鑑賞したグレート・ネイチャーには、私が興味を持ったイッカク以外にも、ホッキョクグマやアザラシなど、北極に生息する様々な動物が登場し、厳しい自然界に生きる彼らの生活が描かれている。温暖化が今後も続けば、動物たちにはこれまで以上に厳しい状況が待っているはずなので、彼らが生き抜いていくことができるのか、非常に心配になってしまった。


北極に集まるイッカクの群れ

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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。
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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『グレート・ネイチャー』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 3枚組」:1万1000円
「DVD BOX 3枚組」:9800円
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