今日から地球派「BBC EARTH」

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地獄の季節 (by西田洋平)
2010年07月05日

ドキュメンタリー番組をこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
第2回目の今回は、『BBC EARTH』のシリーズ1作目「グレート・ネイチャー」を鑑賞した西田洋平がお届けします。
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私がドキュメンタリーを見るときにいつも気になるのは、視点の公平性があるかないか。テーマとなっている事象が偏って作られていないかを見るようにしている。世に出る作品で厳正中立な作品などありえないと思いつつも・・・。

今回視聴したBBCのドキュメンタリーシリーズ『BBC EARTH』の「グレート・ネイチャー」は、動物を扱った自然ドキュメンタリーではあるものの、公平性を持って、自然の美しさや厳しさが多面的に描かれていた。その中でも一番印象に残ったのは、最初のエピソードの「氷の大融解」。HD映像を駆使して、北極に住むホッキョクグマやウミガラスなどの生態を捉えたものだった。

映像は北国の長い冬が明けて春が訪れるところから始まる。日の光が降り注ぎ、氷が解けて多くの魚や生物が活動し始める。食料が豊富になるこの季節は、多くの動物にとって天国を思わせるシーズンだが、ホッキョクグマにとっては地獄の季節の始まりとなる。陸棲で狩りをするホッキョククマにとって、氷が融けてしまうと、アザラシなどの動物が狩りづらくなるからだ。さらに近年の温暖化により、ホッキョクグマのエサ不足は絶滅が危ぶまれる状況にまで陥っている。ホッキョクグマにとっては氷雪に閉ざされた冬こそが、救いの到来になることが描かれていた。春を迎え、活動を活発化させる多くの生き物とは対照的に、この季節に苦しむホッキョクグマの姿が印象に残る。

また、ウミガラスの巣立ちを紹介する映像では、断崖から海を目指し飛び立つヒナ鳥たちをベースに自然の厳しさが映し出されていた。ヒナたちは生まれて初めて翼を広げ、海に向かって飛び立つのだが、何羽かは海までの距離に届かず海岸沿いの陸に墜落してしまう。すると、陸には落ちたヒナ鳥をエサとするホッキョクギツネが待ち構えているのだ。せっかく成長したヒナたちが次々と襲われていく光景は一見残酷だが、ウミガラスを捕らえたホッキョクギツネを追っていくと、そこには子ギツネたちがエサを待っており、キツネにも家族がいることを気づかせてくれる。

この手のドキュメンタリーは、「食う側」か「食われる側」のどちらかの視点に偏ったものが多い。そういった安易な手法を抑え、自然の営みをそのまま伝えようという姿勢にはBBCの余裕さえ感じられた。世界で初めてテレビ放送を開始した老舗放送局の上質な作品が見たい方にはオススメと言えるだろう。

ホッキョクグマの親子         ホッキョクギツネの子どもたち

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(C)BBC Worldwide Limited 2010 Distributed under licence from 2 entertain Video Limited. All right reserved.

※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。
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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『グレート・ネイチャー』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 3枚組」:1万1000円
「DVD BOX 3枚組」:9800円
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