今日から地球派「BBC EARTH」

Chewing over TOP » 今日から地球派「BBC EARTH」 » 「大きな言葉」と「小さな言葉」(by 山本学)

「大きな言葉」と「小さな言葉」(by 山本学)
2010年07月28日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ2作目「サウス・パシフィック」を鑑賞した山本学さんがお届けします。
-------------------------------------------------------------------------------------
重松清さんが書いた『最後の言葉』という本を読んだ事があるだろうか。第二次世界大戦中に日本の勝利を願いながら南太平洋で命を落とした兵士たちが家族に送った手紙について書かれた作品だ。重松さんはこの本の中で、マスコミや政府が行った大々的な戦争礼賛を"大きな言葉"とし、前線で命を落とした兵士が家族に送った最後の言葉を"小さな言葉"として書き分け、自分の言葉を自省している。

そして先日、(戦争とは直接関係ないが)『最後の言葉』にも出てくる「南太平洋」の島々について作られたドキュメンタリーを視聴した。イギリスBBC製作の『BBC EARTH』のシリーズ第2弾『サウス・パシィック』だ。

この作品は独特な自然環境を持つ南太平洋の孤島に生きる部族や様々な生物生活を中心に、独自の文化や生活様式をありのままに映し出していた。

04_01.jpgのサムネール画像    04_02.jpg

「南太平洋」の島々と自然

 

映像の美しさは感動的で、冒頭の高波の間をくぐり抜ける超高感度カメラによるサーフィンのシーンだけでも驚かされるが、繁殖のために孤島に集まる6万頭ものアザラシや、島を埋め尽くすほどのロイヤルペンギンの群れにはさらに圧倒させられた。また、甲殻類の中で世界一大きいヤシガニの生態や独自の進化の果てに肉食と化したアオムシなど、南太平洋の孤島にしか生息しない多くの生物の映像も収められている。

さらに、孤島で暮らす部族の変わった生活スタイルや島ならではの文化も紹介されていて、豊作を願って高くそびえる櫓(やぐら)から命綱1本で飛び降りる儀式などを垣間見ることができた。

現在、イルカの追い込み漁を批判的に描いた『ザ・コーヴ』というドキュメンタリー映画が話題に上がっているが、この映画はある意味、一方的な視点でつづられたもので、マスコミや政府の力を利用して捕鯨反対を訴える"大きな言葉"のようにも思える。一方で、同じドキュメンタリーでも『サウス・パシフィック』は、南太平洋のありのままの姿を丹念に積み重ねて、真実だけを伝えようとする姿勢が強く、 "小さな言葉"である気がした。それは、『最後の言葉』を手がけた重松さんが、「大切な人の心に響くために発せられた小さな言葉を丹念に集めたい」という思いにすごく似ている。

一方的な主張をするのではなく、見た人の心に響いてほしいという気持ちから作られた真の物語をぜひ多くの人に見てもらいたい。
04_03.jpg   04_04.jpg

孤島に暮らす人と動物のこれまで知らなかった生活が映されている

-----------------------------------------------------------------
【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『サウス・パシフィック』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 3枚組」:1万1000円
「DVD BOX 3枚組」:9800円
----------------------------------------------------------------
※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

※写真のクレジット

(C)BBC Worldwide Limited 2010 Distributed under licence from 2 entertain Video Limited. All right reserved.