今日から地球派「BBC EARTH」

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アメリカ・インディアンとイエローストーン(by 山本学)
2010年10月05日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ4作目「イエローストーン」を鑑賞した山本学さんがお届けします。
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私は大学時代にゼミでインディアンの文化人類学を勉強したことがある。どちらかというとラテンアメリカの革命に興味があった私にとって、地味なインディアンの世界は遠い存在であった。だが、それが逆に気になってしまい、知りたくなって勉強したのだ。

実際にアメリカン・インディアンのことを知ってみると、彼らのダイナミックな生活に大変驚かされたのを覚えている。教科書では決して分からなかった秘密や歴史がたくさんあったのだ。そして先日、BBC製作の『イエローストーン』を見たときに、偶然にもアメリカン・インディアンの功績を知ることになった。

yellow01.jpgのサムネール画像世界遺産でもある自然公園を取り上げたこの作品では、大自然とそこに暮らす動物たちが数多く紹介されていた。それらのエピソードの一つに、ドルイゾー族と呼ばれる狼の集団があった。映像には、狼たちがイエローストーンに生息するワピチ(大型の鹿)を狙って狩を行う様子や狼たちの繁殖について語られていた。

特に私が驚いたのは繁殖についてで、作品では発情期にメスとの交尾を狙うオスの一匹狼にスポットがあてられていた。群れを成さない一匹狼は、群れのボスに気づかれないように、メスに近づき交尾しなければならない。一方、メスにとっても、ボスが一頭しかいない群れの中では交尾する機会が少ないため、アウトローのオスの存在は重要なのだ。

yellowstone(sub2).jpgのサムネール画像そして驚くことに、もし群れ以外のオスと群れのメスが交尾して子を宿した場合、子供は殺されずに群れの中で普通に育てられるという。おそらく自分たちの種を残していくために、群れの外からの遺伝子を取り入れる必要があることを本能的に理解しているのだろう。今回の作品では、残念ながら最終的にボスに恋路を邪魔されてしまうのだが、貴重な狼の生態を知ることができた。

そして、私はここで紹介された狼に興味を持ち、視聴後に色々調べてみた。するとこの狼たちが実は人工的にカナダからイエローストーンに導入されていたことが分かった。元々この地に生息していた狼は1930年ごろを最後に正確な個体が見つかっていないらしい。映像では普通に群れを成して狼たちが暮らしていたので、非常に驚いた。

さらに、調べてみると、狼たちが今のように暮らせる基盤をインディアンたちが作っていたことも分かった。彼らは過去に狼の保護を求めて裁判を行い、勝利して、今の礎を作っていたのだ。彼らは狼が絶滅することで、自然環境が変化することを理解していたのだろう。実際、狼が絶滅した後に、エサとなっていたワピチなどが急増して問題となり、狼が再導入されたのだ。そして、現在では300頭以上に増えているという。

自然と共に暮らしてきたインディアンたちが、イエローストーンの自然と狼を守るために戦っていたことが分かり、すごく考えさせられた。自分のことばかり考えがちな我々は、もっとインディアンを見習い、学ぶべきなのかもしれない。

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『イエローストーン』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 2枚組」:6600円
「DVD BOX 2枚組」:4900円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

※写真のクレジット
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