今日から地球派「BBC EARTH」

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ガンジス‐生命の源 (by 松澤友子)
2010年08月24日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。

今回は『BBC EARTH』のシリーズ3作目「ガンジス」を鑑賞した松澤友子さんがお届けします。
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皆さんは「ガンジス」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。私がガンジスと聞いて最初にイメージするのは、ガンジス川の沐浴(もくよく)の風景だ。夜が明けぬうちからヒンドゥー教徒が聖なる川で祈り、沐浴をする姿は日本では絶対に見られない光景と言えるだろう。

彼らは沐浴で罪を清め、死んだ後にはガンジス川に葬られることを望むという。さらに驚くべきことに、沐浴の際に人々は決してきれいとは言えないガンジス川の水を飲むそうだ。私は「生活排水や洗濯排水のほか、遺灰まで流す川で沐浴をし、その水を飲む」という事実を初めて知ったときに大きな衝撃を受けた。それと同時に、なぜ人々がそこまでガンジス川に惹かれるのかという不思議な気持ちもあった。

そんな思いを抱きつつ、十年以上もガンジス川の沐浴をこの目で見たいと思ってきたが、残念ながらまだその夢は叶っていない。そして、今回「BBC EARTH」の『ガンジス』という作品を視聴し、ガンジス川を作り出す源流について知ったことで、私のガンジス川への憧れはさらに高まった。
 

ganges1.jpg    ganges2.jpg

多くの人を惹きつけるガンジス川

 

ガンジス川はヒマラヤ山脈を水源に持ち、源流は4つあるとされている。源流にはそれぞれ聖地として崇められる場所があり、ヒンドゥー教の四大聖地となっているのだ。ヒンドゥー教徒にとって死ぬまでに一度は巡礼したいと願う場所のようだが、険しい渓谷にあるため、自分の命を懸けて聖地を目指すという。ちなみに、ヒマラヤ山脈はサンスクリット語で「神々が住まう場所」と呼ばれている。

ganges3.jpgのサムネール画像
つまり、私たちにとって濁ったガンジス川は、ヒマラヤ山脈から流れる雪解け水や雨水といった美しい水がベースになっており、神々が住まう場所から来ていたのだガンジスという世界最大級の川になる過程で、多くの生き物や自然に命を与える水が源だからこそ、多くの人が惹きつけられ、川を愛し、崇拝し、そこに帰りたいと願うのだと感じた。

ガンジス川を訪れた友人から「人生観が変わった」と聞いたことがあるが、今回、ガンジスに秘められた世界観に触れて、その意味が少し分かったような気がする。そして、近い将来ガンジス川を訪れて、その魅力を体感したくなった。

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『ガンジス』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/ 
「ブルーレイ デラックスBOX 2枚組」:6600
DVD BOX 2枚組」:4900
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。
※写真のクレジット
C)BBC Worldwide Limited 2010 Distributed under licence from 2 entertain Video Limited. All right reserved.

 

 

ガワ島のウォーターミュージック(by naiamao)
2010年08月18日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ3作目「サウス・パシフィック」を鑑賞したnaiamaoさんがお届けします。

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自然の中で育まれた音楽には、特別な力が宿っている。しかし、それを真に理解するには、実際に現地を訪れ、水や空気などの自然も含めて全身で感じ取るのがベストだと思う。
今回の『BBC EARTH』の「サウス・パシフィック」では、1分足らずではあったが私の心をとらえて離さない映像があった。それは、南太平洋のバンクス諸島の女性たちが奏でる「ウォーターミュージック」である。

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南太平洋のバンクス諸島の女性たちが奏でる「ウォーターミュージック

浅瀬の海で横一列に並び、一斉に腕を振り下ろして水面を手で叩く。すると、鮮やかな水しぶきと同時に、まるでパーカッションのような「タポッタポッ、パシャパシャ」というリズム音が鳴り響く。島に住む女性たちが高音の掛け声を上げながら音楽を生み出していく姿に、広大な自然の中で野生の生き物と調和してきた人間のエネルギーを感じた。南太平洋の中でも唯一の「海を打楽器にした音楽」は、水と太陽の輝きに満ちており、私はその力強さに息を呑んだ。地図.pngバンクス諸島について調べてみたが、観光地としてはメジャーではないため、あまり多くの情報はなかった。まさに秘境、かくいう私も、この作品を観なければ一生知らないままだったと思う。日本語で書かれた関連ウェブサイトも数える程で、当初ははっきりした場所さえつかめなかった。やむなくグーグルアースで調べてみたところ、オーストラリア・ケアンズから約1500キロ東へ進んだ地点にバヌアツ共和国があり、その中にバンクス諸島を発見した! さらに、ウォーターミュージックの発祥とされる小さな島「ガワ島」をやっと見つけた時には、広い砂浜で小さな宝石を見つけたかのような喜びを感じた。

バヌアツ共和国は、1900年初頭にイギリスとフランスの共同統治下に入ったが1980年に独立。国家としての歴史はまだ浅いが、ウォーターミュージックは長い間、原住民たちによって守られてきたという。元々は死を弔う儀式として行われてきたが、第二次世界大戦後に観光客向けのパフォーマンスとして確立されていったと言われている。現在では、バンクス諸島最大の島であるエスプリッツサント島で、ウォーターミュージックフェスティバルも開催されている。

さらに、英語のサイトを調べてみると、興味深い記事がみつかった。ウォーターミュージックがヨーロッパで注目されているというのだ。2008年には、スペインのサラゴサで行われた万博に関連して、ガワ島から招待された人々がヨーロッパ各地でライブツアーを行ったそうだ。

しかし残念なことに、そのツアーでのステージは温暖な大自然の海ではなく、人工的に作られた塩素入りのプールだったという。おそらくその時点で、この音楽が誕生したルーツともいえる、「太陽の輝きの中で生命に感謝する」スピリットを再現するのは、技術的にも精神的にも難しかったのではないだろうか。本当にウォーターミュージックの魅力を伝えたいのであれば、少なくともプールではなく海の環境が必要だったはずだからだ。

音楽には、その人が慣れ親しんできた環境や生き方が反映される。だからこそ、自然の中で育まれた音楽には、特別な力が宿っているのだと思う。演奏される場所や空気感はとても大切なのだ。大自然に暮らす人々が生み出した「ウォーターミュージック」は、都会のポップミュージックとは違い、混じり気のない純粋なもの。それ故、文化圏を離れて公演する場合に、どのような環境を用意すれば本来の形で伝わるのか。その重要性と難しさを改めて感じた。

どれだけ情報化が進んでも、実際に自分の目と耳と肌で感じたことが真実だと私は信じている。いつか現地に赴き、波と手が奏でるウォーターミュージックのビートを直接心に刻みたい。

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南太平洋にあるガワ島

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『サウス・パシフィック』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 3枚組」:13200円
「DVD BOX 3枚組」:9800円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

※写真のクレジット
John Nicholls, www.vanuatu-hotels.vu

キツネのハンティング(by 香村満理子)
2010年08月05日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ3作目「サウス・パシフィック」を鑑賞した香村満理子さんがお届けします。
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先日、いつか訪れたいと夢見ている「イエローストーン」について描かれた作品を見つけた。BBCが制作したネイチャードキュメンタリーで『BBC EARTH』シリーズの中の一作品だった。

イエローストーンといえば、世界遺産に登録されている最古の国立公園として有名な場所。北アメリカ最大の火山地帯にあり、近い将来(といっても数十万年以内ということらしいが)に巨大噴火が起こり、人類存亡の危機が訪れると危惧されている。

そういったこともあり、視聴前は、地球内部の熱い胎動や大噴火に焦点をしぼった内容かと思っていた。だが、実際に映されていたのは壮大な大自然を舞台に生きる、動物たちの姿だった。

世界遺産の自然遺産に登録されている「イエローストーン」

イエローストーン地区には希少な巨大温帯地帯の生態系が残っており、約60種の大型ほ乳類と300種以上の鳥類が生息しているという。極寒の冬に台頭するオオカミの群れや春の訪れと共に活動を始めるクマの親子、その他にも様々な貴重な動物たちが過酷な自然条件の中で生き抜く様子が描かれていた。

そんな動物たちの中でも、私の心をつかみ、人間と動物の不思議な関係を思い起こさせたのが、獲物を求めて雪原を歩く1匹のアカギツネだった。

キツネはイヌ科動物でありながら、ネコのように縦長な瞳と身軽さを持っている。跳躍力は約2メートルで、時速50キロメートルの速さで走ることもできる。冬眠をしないキツネは厳しい冬の間も狩りを行う。同じイヌ科のオオカミのように群れで獲物を追うことはせず、原則として単独で縄張りを持って狩りをするいわば、「一匹狼」なのだ。

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雪の中を歩くオオカミ

とはいえ、見渡す限りの銀世界でアカギツネがどうやって獲物を見つけられるのか。興味深く映像を見ると、時折雪に足を取られながら、雪面に鼻を近づけ歩き続けるキツネが、ふと首をかしげるような愛らしい動作をした。両耳を交互に使って地面の奥深くの音を探っているのだという。しばらくその場にたたずんでいたが、突然1歩の助走もなく、高々と飛び上がり、雪の中に深く潜ったのだ。

雪上に残ったのは後ろ足とフサフサの尾っぽだけ。後ろ足を踏ん張り、体を2、3回ひねり、おもむろに体を起こしたかと思うと、口にネズミをくわえていた。イルカのジャンプを思わせる見事な飛び込みから、シャチのように獲物を捕らえる華麗な一連の流れに私はすごく感動した。

キツネは嗅覚と聴覚が非常に鋭く、雪面から2メートルも下に潜んでいるネズミなどの小動物を見つけることができるという。冬の間、我が身を守るためにモグラのように雪の下にトンネルを作って移動するネズミも、頭上2メートルから襲ってくるキツネには勝てないようだ。

昔から日本で賢い動物とされるキツネは、稲作の大敵であったネズミを捕食してくれることから、豊作をもたらす益獣と見なされ、神さまとして祭られることもある。

キツネが突然と高く飛び上がる様子から、「目くらまし」や「人を惑わす」というイメージが生まれ、「化ける」と言われるようになったそうだ。この発想は元々中国から伝わってきたという(ちなみに、「キツネ」は中国語で「狐狸」と書く。だから、キツネもタヌキも化ける生き物とされているのかもしれない...)。

一方、西洋ではキツネが神として扱われることはなく、化けるとも言われない。単に毛皮をとるための動物であり、狩りの対象でしかない。英国ではキツネ狩りは古くから高尚な趣味とされていて、禁止法が設立したのはブレア政権下の2004年11月と、つい最近のことだ。

動物の捕食関係が国や地域によって大きく変わることは少ないが、動物に対する人間の考え方は文化や習慣によって実に様々。神として扱われたたり、化け物にされたり、娯楽の道具にされたりといくら賢いキツネでも人間の不可解さにはきっと首をひねっていることだろう。今回のキツネのハンティングを見て、「生きるために食う」だけでは済まない、人間と動物の不思議な関係を改めて考えさせられた。
その他にも魅力的なイエローストーンの映像がたくさん楽しめる

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『イエローストーン』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/ 
「ブルーレイ デラックスBOX 2枚組」:6600円
「DVD BOX 2枚組」:4900円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

※写真のクレジット
(C)BBC Worldwide Limited 2010 Distributed under licence from 2 entertain Video Limited. All right reserved.