今日から地球派「BBC EARTH」

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アメリカ・インディアンとイエローストーン(by 山本学)
2010年10月05日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ4作目「イエローストーン」を鑑賞した山本学さんがお届けします。
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私は大学時代にゼミでインディアンの文化人類学を勉強したことがある。どちらかというとラテンアメリカの革命に興味があった私にとって、地味なインディアンの世界は遠い存在であった。だが、それが逆に気になってしまい、知りたくなって勉強したのだ。

実際にアメリカン・インディアンのことを知ってみると、彼らのダイナミックな生活に大変驚かされたのを覚えている。教科書では決して分からなかった秘密や歴史がたくさんあったのだ。そして先日、BBC製作の『イエローストーン』を見たときに、偶然にもアメリカン・インディアンの功績を知ることになった。

yellow01.jpgのサムネール画像世界遺産でもある自然公園を取り上げたこの作品では、大自然とそこに暮らす動物たちが数多く紹介されていた。それらのエピソードの一つに、ドルイゾー族と呼ばれる狼の集団があった。映像には、狼たちがイエローストーンに生息するワピチ(大型の鹿)を狙って狩を行う様子や狼たちの繁殖について語られていた。

特に私が驚いたのは繁殖についてで、作品では発情期にメスとの交尾を狙うオスの一匹狼にスポットがあてられていた。群れを成さない一匹狼は、群れのボスに気づかれないように、メスに近づき交尾しなければならない。一方、メスにとっても、ボスが一頭しかいない群れの中では交尾する機会が少ないため、アウトローのオスの存在は重要なのだ。

yellowstone(sub2).jpgのサムネール画像そして驚くことに、もし群れ以外のオスと群れのメスが交尾して子を宿した場合、子供は殺されずに群れの中で普通に育てられるという。おそらく自分たちの種を残していくために、群れの外からの遺伝子を取り入れる必要があることを本能的に理解しているのだろう。今回の作品では、残念ながら最終的にボスに恋路を邪魔されてしまうのだが、貴重な狼の生態を知ることができた。

そして、私はここで紹介された狼に興味を持ち、視聴後に色々調べてみた。するとこの狼たちが実は人工的にカナダからイエローストーンに導入されていたことが分かった。元々この地に生息していた狼は1930年ごろを最後に正確な個体が見つかっていないらしい。映像では普通に群れを成して狼たちが暮らしていたので、非常に驚いた。

さらに、調べてみると、狼たちが今のように暮らせる基盤をインディアンたちが作っていたことも分かった。彼らは過去に狼の保護を求めて裁判を行い、勝利して、今の礎を作っていたのだ。彼らは狼が絶滅することで、自然環境が変化することを理解していたのだろう。実際、狼が絶滅した後に、エサとなっていたワピチなどが急増して問題となり、狼が再導入されたのだ。そして、現在では300頭以上に増えているという。

自然と共に暮らしてきたインディアンたちが、イエローストーンの自然と狼を守るために戦っていたことが分かり、すごく考えさせられた。自分のことばかり考えがちな我々は、もっとインディアンを見習い、学ぶべきなのかもしれない。

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『イエローストーン』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 2枚組」:6600円
「DVD BOX 2枚組」:4900円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

※写真のクレジット
(C)BBC Worldwide Limited 2010 Distributed under licence from 2 entertain Video Limited. All right reserved

想像をはるかに超えた巨大な「公園」 イエローストーン(後半)
(by 松山陽子)

2010年09月28日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は松山陽子さんの「イエローストーン」の後編をお届けします。
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まずは、年間を通じて最も多くの観光客が訪れるガイザーカントリー。このエリアには間欠泉が集中していて、そこかしこに大小 様々な熱水が吹き上がっている。直径約113メートルにも及ぶ虹のようなグラデーションが美しい温泉のグランド・プリズマティック・スプリングもここにある。

8 ガイザーカントリー.jpgのサムネール画像      9 ガイザーカントリー.JPG

カリブ海より鮮やかな青色に見える中央部だが、水温は100度近い。岸に近づくにつれて温度が下がり、徐々に温度に応じた藻類やバクテリアが生息してゆく。それらが緑、黄色、黄金色と奇跡の色彩を放っているのだ。すぐそばまで行くと、辺り一面に蒸気が立ち上っていて、まるでミストサウナにいるように暑い。

次に、石灰岩が作り上げた白い段々畑のような景色が広がるマンモスカントリー。ここには警戒心の乏しいミュールジカが、ビジターセンター周辺や駐車場にまで現れるため、パークレンジャーが絶えず注意を呼びかけている。とはいえ、レンジャーから一定の距離を保つことを教えられた観光客とミュールジカは、互いの領域を侵すことなく、それぞれで楽しい時間を過ごしている。

11 マンモスカントリー.jpg   11-1 ミュールジカ.jpg

ゆったりとした時間が流れているのは、ルーズベルトカントリー。ここは知る人ぞ知るフライフィッシングのメッカ。釣人や静かな時間を好む人たちばかりなので、観光地ならではの賑やかさはどこにもない。雄大な平原には、いくつもの川が急カーブを描くように蛇行している。私たちは、ここで多くのアメリカクロクマを見かけた。ツキノワグマと同種のその危険生物は、「なんだ、人間か」といった様子でこちらを一瞥するだけ。クマさえものんびりマイペースに過ごしているようだった。

12-1 ルーズベルトカントリー.jpg     12 ルーズベルトカントリー.jpg

キャニオンカントリーは何といっても、この公園の名前の由来にもなったイエローストーン大渓谷が美しい。落差100mにも及ぶ黄色の絶壁を流れ落ちるエメラルドグリーン色のロウアー滝は、ナイアガラの滝にも劣らない大迫力だ。至近距離でその滝口を見つめていると、地に足が着いているという安心感は奪われ、思わず目まいがしてくる場所だった。

14 キャニオンカントリー.JPG    14-1 キャニオンカントリー.jpgのサムネール画像

最後に、雄大なイエローストーンレイクをたたえるレイクカントリー。かつて火山の火口だった湖には、今も温泉があちこちから湧き出ていて、湖面は独特の色合いを醸し出している。エメラルドグリーン色のところもあれば、濃紺に見えるところもあった。この湖を背景にした夜明けと夕焼けは息を飲む美しさだった。

15 レイクカントリー.jpg  15-1 レイクカントリー.jpg

この国立公園で出会った野生動物は数えきれない。せわしない様子で泳ぐビーバー、タンゴを踊っているかのように優雅に歩くツル(左下の写真)、寄り添って水浴びをするヘラジカの親子、絶壁近くに生息するプロングホーンやビッグホーンシープ(右下の写真)。彼らを見つけた時は、その場で音を立てずに静かに見守った。

17 野生のツル.jpg    20 ビッグホーンシープ.jpg

22 朝もやのアメリカバイソン.jpgしかしハイイログマ(グリズリーベア)やヘラジカの場合は至近距離でいきなり遭遇すると危険なので、常に音を立てながらトレイルを進んだ。森の奥へ進むと、あちこちに抜け落ちたワピチの角や朽ちた動物の死体があり、遠くにオオカミの群れが狩りをする声を聞いた。朝もやの中、現れたアメリカバイソン(左の写真)は震えるほど神秘的だった。

イエローストーンの大自然は私たちにとって奥が深すぎた。見どころを全制覇しようと綿密に計画を立て、森や山を分け入ったにもかかわらず、ますます魅力に取りつかれてしまった。「BBC EARTH」で紹介している『イエローストーン』では、厳しくも美しい冬の様子について描かれていた。そうなると、冬のイエローストーンもとことん知りたい。冬はやはりスノーシューをはいて、雪原を歩くしかないなと心に固く誓った。

18 ヘラジカ母子.JPG   よれよれのコヨーテ(キャンプ場にて).jpg   ワピチ(エルく).jpg

(写真左から、ヘラジカの親子、痩せたコヨーテ、ワピチ)

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『イエローストーン』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 2枚組」:6600円
「DVD BOX 2枚組」:4900円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

想像をはるかに超えた巨大な「公園」 イエローストーン(前編)
(by 松山陽子)

2010年09月16日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ4作目「イエローストーン」を鑑賞した松山陽子さんがお届けします。
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アウトドア好きの私が初めて「イエローストーン国立公園」の写真を見たのは、2002年。ちょうどアメリカの首都、ワシントンDCでの生活を始めた年だった。市内にある国立自然史博物館を訪れ、館内にある写真展を見ていたときに、一際目を引くモノクロ写真があった。

その写真は、大地のあちこちから大量の熱水が吹き上がる不可思議な現象が収められたもので、白と黒以外の色が一切排除されているにも関わらず、その場の熱気と自然の雰囲気が色濃く映されていた。私は見たことのない自然の姿に魅了され、その日からイエローストーンを訪れるための計画を綿密に立て始めた。

そして、その念願が叶ったのは4年後の2006年夏。イエローストーン国立公園と隣接するグランドティトン国立公園を2週間かけて巡ることにした。ワシントンDCからソルトレイクシティまで飛行機で移動し、そこからは大型4WDのレンタカーを借り、約520キロの道のりを走る。日本でいうと、およそ東京から大阪までの距離だが、アメリカで暮らすうちに、隣の県に行くくらいの感覚になっていた。

00.JPG長い旅のために、4WDに我が家の使い慣れたキャンプ用品一式とハイキング用の装備を積み込み、使いやすいよう並べていく。さらに、道中にある大型スーパーに寄って、水のタンクや食料、燃料などを補充する。私と同じくアウトドア好きの夫と共に、アメリカ中の国立公園を楽しんできたいつものパターンだ。今回も準備にぬかりはない。順調に仕度を整えて、ひたすら車を走らせていくと、博物館で見たモノクロのイエローストーンが、夕日のオレンジに縁どられた姿で目の前に現れた。

四国の半分に相当する広大な"公園"は、目を見張るような大自然の連続で、「期待し過すぎてガッカリするかもしれない」という私の不安を完全に吹き飛ばした。真っ赤な夕暮れには、名もない丘が浮かびあがり、辺りには気化した熱水がモヤモヤと立ち込めていた。

yellow1.jpg     yellow2.jpg

イエローストーンと夕日。辺りには気化した熱水が立ち込めていた

yellow3.jpgのサムネール画像すぐ近くではイエローストーンに多く生息するミュールジカが草を食(は)み、道路ではアメリカバイソンが私たちの車を全く気にすることもなく、悠然と歩いていた。私たちは園内に入るやいなや目の前に現れた大自然の営みに、一瞬で心を奪われた。そして、この公園では、人間が単なる訪問者にすぎないのだと実感した。

イエローストーンは激しくお湯が吹き出る間欠泉が有名だが、見どころはそれだけではない。確かに、約1時間おきに規則正しく吹き上がる豪快な間欠泉(通称、オールドフェイスフル・ガイザー)は何度見ても飽きない。しかし、それもこの国立公園の魅力とスケールにかかれば、ほんの一部にしか過ぎない。園内には、5つのエリア(カントリーと呼ばれる)があり、それぞれ異なる側面を持っている。当然、見所もエリアごとに異なっているので、ここでぜひ各エリアの魅力を知っていただきたい。
(次回に続く)  

yellow4.jpgのサムネール画像  yellow5.JPG

道路を歩くアメリカバイソン豪快に吹き上がる間欠泉

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『イエローストーン』■
公式サイト:
http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:
http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 2枚組」:6600円
「DVD BOX 2枚組」:4900円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

川を超えた存在「ガンジス」のすべて(by 山本学)
2010年09月06日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ3作目「ガンジス」を鑑賞した山本学さんがお届けします。
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以前、私は映画監督の原一男さんの下で映画を勉強していたことがある。その原さんの息子さんが亡くなられ、悲しみを癒すために旅をするという番組が10年以上前に放送されていたのを今でも覚えている。


その番組は原監督がガンジス川を遡りながら悲しみを和らげていくというもので、その頃から私にとってガンジス川はどこか特別な存在であり、秘密や魅力を探りたいと思っていた。

gan1.jpgそして先日、インドにあるガンジス川の成り立ちやそこに暮らす人々について詳しく語られている「BBC EARTH」の『ガンジス』を見た。


本編では、インドの暮らしやガンジス川のありのままの姿が映し出され、小さな川の集合体がガンジス川を形成していることや、その中の4つの川にヒンドゥー教の聖地が置かれていることが描かれていた。そして、4つの川の中でも海から最も遠い距離にある「タポヴァン」から流れる水は、ガンジス川の源流と考えられていて、巡礼者が訪れるヒンドゥー教の中心となっていることが詳しく紹介されていた。


gan2.jpgまた、過酷な荒涼地帯に住む動物が自然の力を利用して塩分を取るという貴重な映像や、数週間でガンジス川の年間降雨量の半分を占めるモンスーン中に、信者が川へ入り修行するも場面もあり、ガンジスがインドにとっていかに大きな存在かが分かった。特に、信者が川で修行する様子は、日本の滝に打たれる修行を思い起こさせ、彼らの信仰心や思いを身近に感じることができた。

今回『ガンジス』を視聴して、ガンジス川が大きな自然を形成していることや人間にとって神のような存在になっていることを知り、原監督が息子を亡くした悲しみを癒すためにこの地を訪れた意味が少し理解できたように思う。
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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『ガンジス』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 2枚組」:6600円
「DVD BOX 2枚組」:4900円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。
※写真のクレジット
(C)BBC Worldwide Limited 2010

ガンジス‐生命の源 (by 松澤友子)
2010年08月24日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。

今回は『BBC EARTH』のシリーズ3作目「ガンジス」を鑑賞した松澤友子さんがお届けします。
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皆さんは「ガンジス」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。私がガンジスと聞いて最初にイメージするのは、ガンジス川の沐浴(もくよく)の風景だ。夜が明けぬうちからヒンドゥー教徒が聖なる川で祈り、沐浴をする姿は日本では絶対に見られない光景と言えるだろう。

彼らは沐浴で罪を清め、死んだ後にはガンジス川に葬られることを望むという。さらに驚くべきことに、沐浴の際に人々は決してきれいとは言えないガンジス川の水を飲むそうだ。私は「生活排水や洗濯排水のほか、遺灰まで流す川で沐浴をし、その水を飲む」という事実を初めて知ったときに大きな衝撃を受けた。それと同時に、なぜ人々がそこまでガンジス川に惹かれるのかという不思議な気持ちもあった。

そんな思いを抱きつつ、十年以上もガンジス川の沐浴をこの目で見たいと思ってきたが、残念ながらまだその夢は叶っていない。そして、今回「BBC EARTH」の『ガンジス』という作品を視聴し、ガンジス川を作り出す源流について知ったことで、私のガンジス川への憧れはさらに高まった。
 

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多くの人を惹きつけるガンジス川

 

ガンジス川はヒマラヤ山脈を水源に持ち、源流は4つあるとされている。源流にはそれぞれ聖地として崇められる場所があり、ヒンドゥー教の四大聖地となっているのだ。ヒンドゥー教徒にとって死ぬまでに一度は巡礼したいと願う場所のようだが、険しい渓谷にあるため、自分の命を懸けて聖地を目指すという。ちなみに、ヒマラヤ山脈はサンスクリット語で「神々が住まう場所」と呼ばれている。

ganges3.jpgのサムネール画像
つまり、私たちにとって濁ったガンジス川は、ヒマラヤ山脈から流れる雪解け水や雨水といった美しい水がベースになっており、神々が住まう場所から来ていたのだガンジスという世界最大級の川になる過程で、多くの生き物や自然に命を与える水が源だからこそ、多くの人が惹きつけられ、川を愛し、崇拝し、そこに帰りたいと願うのだと感じた。

ガンジス川を訪れた友人から「人生観が変わった」と聞いたことがあるが、今回、ガンジスに秘められた世界観に触れて、その意味が少し分かったような気がする。そして、近い将来ガンジス川を訪れて、その魅力を体感したくなった。

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『ガンジス』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/ 
「ブルーレイ デラックスBOX 2枚組」:6600
DVD BOX 2枚組」:4900
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。
※写真のクレジット
C)BBC Worldwide Limited 2010 Distributed under licence from 2 entertain Video Limited. All right reserved.

 

 

ガワ島のウォーターミュージック(by naiamao)
2010年08月18日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ3作目「サウス・パシフィック」を鑑賞したnaiamaoさんがお届けします。

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自然の中で育まれた音楽には、特別な力が宿っている。しかし、それを真に理解するには、実際に現地を訪れ、水や空気などの自然も含めて全身で感じ取るのがベストだと思う。
今回の『BBC EARTH』の「サウス・パシフィック」では、1分足らずではあったが私の心をとらえて離さない映像があった。それは、南太平洋のバンクス諸島の女性たちが奏でる「ウォーターミュージック」である。

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南太平洋のバンクス諸島の女性たちが奏でる「ウォーターミュージック

浅瀬の海で横一列に並び、一斉に腕を振り下ろして水面を手で叩く。すると、鮮やかな水しぶきと同時に、まるでパーカッションのような「タポッタポッ、パシャパシャ」というリズム音が鳴り響く。島に住む女性たちが高音の掛け声を上げながら音楽を生み出していく姿に、広大な自然の中で野生の生き物と調和してきた人間のエネルギーを感じた。南太平洋の中でも唯一の「海を打楽器にした音楽」は、水と太陽の輝きに満ちており、私はその力強さに息を呑んだ。地図.pngバンクス諸島について調べてみたが、観光地としてはメジャーではないため、あまり多くの情報はなかった。まさに秘境、かくいう私も、この作品を観なければ一生知らないままだったと思う。日本語で書かれた関連ウェブサイトも数える程で、当初ははっきりした場所さえつかめなかった。やむなくグーグルアースで調べてみたところ、オーストラリア・ケアンズから約1500キロ東へ進んだ地点にバヌアツ共和国があり、その中にバンクス諸島を発見した! さらに、ウォーターミュージックの発祥とされる小さな島「ガワ島」をやっと見つけた時には、広い砂浜で小さな宝石を見つけたかのような喜びを感じた。

バヌアツ共和国は、1900年初頭にイギリスとフランスの共同統治下に入ったが1980年に独立。国家としての歴史はまだ浅いが、ウォーターミュージックは長い間、原住民たちによって守られてきたという。元々は死を弔う儀式として行われてきたが、第二次世界大戦後に観光客向けのパフォーマンスとして確立されていったと言われている。現在では、バンクス諸島最大の島であるエスプリッツサント島で、ウォーターミュージックフェスティバルも開催されている。

さらに、英語のサイトを調べてみると、興味深い記事がみつかった。ウォーターミュージックがヨーロッパで注目されているというのだ。2008年には、スペインのサラゴサで行われた万博に関連して、ガワ島から招待された人々がヨーロッパ各地でライブツアーを行ったそうだ。

しかし残念なことに、そのツアーでのステージは温暖な大自然の海ではなく、人工的に作られた塩素入りのプールだったという。おそらくその時点で、この音楽が誕生したルーツともいえる、「太陽の輝きの中で生命に感謝する」スピリットを再現するのは、技術的にも精神的にも難しかったのではないだろうか。本当にウォーターミュージックの魅力を伝えたいのであれば、少なくともプールではなく海の環境が必要だったはずだからだ。

音楽には、その人が慣れ親しんできた環境や生き方が反映される。だからこそ、自然の中で育まれた音楽には、特別な力が宿っているのだと思う。演奏される場所や空気感はとても大切なのだ。大自然に暮らす人々が生み出した「ウォーターミュージック」は、都会のポップミュージックとは違い、混じり気のない純粋なもの。それ故、文化圏を離れて公演する場合に、どのような環境を用意すれば本来の形で伝わるのか。その重要性と難しさを改めて感じた。

どれだけ情報化が進んでも、実際に自分の目と耳と肌で感じたことが真実だと私は信じている。いつか現地に赴き、波と手が奏でるウォーターミュージックのビートを直接心に刻みたい。

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南太平洋にあるガワ島

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『サウス・パシフィック』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 3枚組」:13200円
「DVD BOX 3枚組」:9800円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

※写真のクレジット
John Nicholls, www.vanuatu-hotels.vu

キツネのハンティング(by 香村満理子)
2010年08月05日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ3作目「サウス・パシフィック」を鑑賞した香村満理子さんがお届けします。
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先日、いつか訪れたいと夢見ている「イエローストーン」について描かれた作品を見つけた。BBCが制作したネイチャードキュメンタリーで『BBC EARTH』シリーズの中の一作品だった。

イエローストーンといえば、世界遺産に登録されている最古の国立公園として有名な場所。北アメリカ最大の火山地帯にあり、近い将来(といっても数十万年以内ということらしいが)に巨大噴火が起こり、人類存亡の危機が訪れると危惧されている。

そういったこともあり、視聴前は、地球内部の熱い胎動や大噴火に焦点をしぼった内容かと思っていた。だが、実際に映されていたのは壮大な大自然を舞台に生きる、動物たちの姿だった。

世界遺産の自然遺産に登録されている「イエローストーン」

イエローストーン地区には希少な巨大温帯地帯の生態系が残っており、約60種の大型ほ乳類と300種以上の鳥類が生息しているという。極寒の冬に台頭するオオカミの群れや春の訪れと共に活動を始めるクマの親子、その他にも様々な貴重な動物たちが過酷な自然条件の中で生き抜く様子が描かれていた。

そんな動物たちの中でも、私の心をつかみ、人間と動物の不思議な関係を思い起こさせたのが、獲物を求めて雪原を歩く1匹のアカギツネだった。

キツネはイヌ科動物でありながら、ネコのように縦長な瞳と身軽さを持っている。跳躍力は約2メートルで、時速50キロメートルの速さで走ることもできる。冬眠をしないキツネは厳しい冬の間も狩りを行う。同じイヌ科のオオカミのように群れで獲物を追うことはせず、原則として単独で縄張りを持って狩りをするいわば、「一匹狼」なのだ。

yellowstone2.jpg
雪の中を歩くオオカミ

とはいえ、見渡す限りの銀世界でアカギツネがどうやって獲物を見つけられるのか。興味深く映像を見ると、時折雪に足を取られながら、雪面に鼻を近づけ歩き続けるキツネが、ふと首をかしげるような愛らしい動作をした。両耳を交互に使って地面の奥深くの音を探っているのだという。しばらくその場にたたずんでいたが、突然1歩の助走もなく、高々と飛び上がり、雪の中に深く潜ったのだ。

雪上に残ったのは後ろ足とフサフサの尾っぽだけ。後ろ足を踏ん張り、体を2、3回ひねり、おもむろに体を起こしたかと思うと、口にネズミをくわえていた。イルカのジャンプを思わせる見事な飛び込みから、シャチのように獲物を捕らえる華麗な一連の流れに私はすごく感動した。

キツネは嗅覚と聴覚が非常に鋭く、雪面から2メートルも下に潜んでいるネズミなどの小動物を見つけることができるという。冬の間、我が身を守るためにモグラのように雪の下にトンネルを作って移動するネズミも、頭上2メートルから襲ってくるキツネには勝てないようだ。

昔から日本で賢い動物とされるキツネは、稲作の大敵であったネズミを捕食してくれることから、豊作をもたらす益獣と見なされ、神さまとして祭られることもある。

キツネが突然と高く飛び上がる様子から、「目くらまし」や「人を惑わす」というイメージが生まれ、「化ける」と言われるようになったそうだ。この発想は元々中国から伝わってきたという(ちなみに、「キツネ」は中国語で「狐狸」と書く。だから、キツネもタヌキも化ける生き物とされているのかもしれない...)。

一方、西洋ではキツネが神として扱われることはなく、化けるとも言われない。単に毛皮をとるための動物であり、狩りの対象でしかない。英国ではキツネ狩りは古くから高尚な趣味とされていて、禁止法が設立したのはブレア政権下の2004年11月と、つい最近のことだ。

動物の捕食関係が国や地域によって大きく変わることは少ないが、動物に対する人間の考え方は文化や習慣によって実に様々。神として扱われたたり、化け物にされたり、娯楽の道具にされたりといくら賢いキツネでも人間の不可解さにはきっと首をひねっていることだろう。今回のキツネのハンティングを見て、「生きるために食う」だけでは済まない、人間と動物の不思議な関係を改めて考えさせられた。
その他にも魅力的なイエローストーンの映像がたくさん楽しめる

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『イエローストーン』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/ 
「ブルーレイ デラックスBOX 2枚組」:6600円
「DVD BOX 2枚組」:4900円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

※写真のクレジット
(C)BBC Worldwide Limited 2010 Distributed under licence from 2 entertain Video Limited. All right reserved.

「大きな言葉」と「小さな言葉」(by 山本学)
2010年07月28日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
今回は『BBC EARTH』のシリーズ2作目「サウス・パシフィック」を鑑賞した山本学さんがお届けします。
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重松清さんが書いた『最後の言葉』という本を読んだ事があるだろうか。第二次世界大戦中に日本の勝利を願いながら南太平洋で命を落とした兵士たちが家族に送った手紙について書かれた作品だ。重松さんはこの本の中で、マスコミや政府が行った大々的な戦争礼賛を"大きな言葉"とし、前線で命を落とした兵士が家族に送った最後の言葉を"小さな言葉"として書き分け、自分の言葉を自省している。

そして先日、(戦争とは直接関係ないが)『最後の言葉』にも出てくる「南太平洋」の島々について作られたドキュメンタリーを視聴した。イギリスBBC製作の『BBC EARTH』のシリーズ第2弾『サウス・パシィック』だ。

この作品は独特な自然環境を持つ南太平洋の孤島に生きる部族や様々な生物生活を中心に、独自の文化や生活様式をありのままに映し出していた。

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「南太平洋」の島々と自然

 

映像の美しさは感動的で、冒頭の高波の間をくぐり抜ける超高感度カメラによるサーフィンのシーンだけでも驚かされるが、繁殖のために孤島に集まる6万頭ものアザラシや、島を埋め尽くすほどのロイヤルペンギンの群れにはさらに圧倒させられた。また、甲殻類の中で世界一大きいヤシガニの生態や独自の進化の果てに肉食と化したアオムシなど、南太平洋の孤島にしか生息しない多くの生物の映像も収められている。

さらに、孤島で暮らす部族の変わった生活スタイルや島ならではの文化も紹介されていて、豊作を願って高くそびえる櫓(やぐら)から命綱1本で飛び降りる儀式などを垣間見ることができた。

現在、イルカの追い込み漁を批判的に描いた『ザ・コーヴ』というドキュメンタリー映画が話題に上がっているが、この映画はある意味、一方的な視点でつづられたもので、マスコミや政府の力を利用して捕鯨反対を訴える"大きな言葉"のようにも思える。一方で、同じドキュメンタリーでも『サウス・パシフィック』は、南太平洋のありのままの姿を丹念に積み重ねて、真実だけを伝えようとする姿勢が強く、 "小さな言葉"である気がした。それは、『最後の言葉』を手がけた重松さんが、「大切な人の心に響くために発せられた小さな言葉を丹念に集めたい」という思いにすごく似ている。

一方的な主張をするのではなく、見た人の心に響いてほしいという気持ちから作られた真の物語をぜひ多くの人に見てもらいたい。
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孤島に暮らす人と動物のこれまで知らなかった生活が映されている

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『サウス・パシフィック』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 3枚組」:1万1000円
「DVD BOX 3枚組」:9800円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

※写真のクレジット

(C)BBC Worldwide Limited 2010 Distributed under licence from 2 entertain Video Limited. All right reserved.

シロイルカと一緒に泳ぐ夢、叶う!(by naiamao)
2010年07月13日

上質なドキュメンタリーをこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
第3回目は、『BBC EARTH』のシリーズ1作目「グレート・ネイチャー」を鑑賞したnaiamaoさんがシロイルカについてお届けします。
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以前、新聞に掲載されていた「シロイルカ」を見てからというもの、私はスケジュール帳にシロイルカの写真を貼って持ち歩くほどの大ファンである。3週間ほど前、『BBC EARTH』の「グレート・ネイチャー」の鑑賞会で、初めて北極の海を泳ぐシロイルカを見て感激し、「どうしても本物に会ってみたい!」という気持ちが強くなった。そして、先日ついに八景島シーパラダイスで彼らと一緒に泳ぐという貴重な体験をしてきた。そのときの感動と様々な発見を、ここでぜひ紹介したい。

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 八景島シーパラダイスで出合ったシロイルカ

『イルカとクジラの違いって何?』

まず、シロイルカという生き物について調べてみると、シロイルカは英語で「Beluga Whale」という名前がついている。日本語では「イルカ」なのに、英語だとWhale=「クジラ」に分類されているのは、一体なぜなんだろう。実は、日本語ではイルカとクジラは大きさによって分類されている。シーパラダイスのスタッフによると、4m以上のものをクジラ、4m未満をイルカとするそうだ。体長3~5mのシロイルカはどちらにも該当するが、英語では小型の「クジラ」として扱われているという。イルカとクジラは別物だと思い込んでいた私にとって、両者は単に大きさが違うだけだったという事実は、まさに「目からウロコ」であった。

『生きるために進化を遂げた体』

次に生態について見てみると、シロイルカは人間なら凍死するような寒さの北極であっても生きられるという。その秘密は、皮膚の下にたっぷりと脂肪を蓄えて体温を維持しているから。シーパラダイスのプール内で実際に触ってみたところ、頭や胸の辺りの脂肪層はとても柔らかくて、ぷにぷにしていた。ちなみにオスとメスでは、オスの方が圧倒的に「ぷにぷに度」が高い。

また「グレート・ネイチャー」では、シロイルカが体を海底にこすりつけて、自分の古い皮膚と付着した寄生虫を落としているシーンがあった。これは哺乳類には類稀なる「脱皮」行動であるらしい。彼らは大人になるまで脱皮を繰り返すことで、全身が真っ白になっていくというのだ。生まれた時は灰色なのに、北極の氷に自分を溶け込ませるように色を変えていくのは、天敵から身を守る術でもある。人間には到底不可能な「生きるための驚くべき能力」には畏敬の念さえ覚えた。

『シロイルカの声』

さらに驚いたのは、シロイルカの声。私がシーパラダイスのプールに入ると、「ワハハハ...」という人間の赤ちゃんのようなかん高い笑い声が聞こえてきた。なんと、シロイルカがエサを前に歓喜の声を上げている。「海のカナリア」とは聞いていたけれど、とても無邪気な声だった。当初は体の大きな彼らに緊張していたが、その声を聞いた途端、私の肩の力は一気に抜けていった。他にも、かなり周波数の高そうな声(人間の耳には聴こえるか聴こえないかという程度で、風船を思いきり膨らませている時のようなキューという音)を発していたのだが、「どんな人が来たんだろう」と興味津々にこちらの様子を伺っている感情を表しているような気がした。これらの声は、意外にも口からではなく、頭のてっぺんにある呼吸孔(人間でいう鼻の穴)から出していた。

その後、アジやサバなどのエサをあげたり、背中に乗せてもらって泳いだり、水をかけ合って遊んだり、シロイルカと一緒に過ごした30分はあっという間に過ぎた。短い時間ではあったが、彼らの賢さはもちろん、旺盛な好奇心やサービス精神、繊細な感性を併せ持った生き物であることが、身にしみて分かった。それと同時に、昔からの友達に会ったような不思議な親近感が今でも残っている。笑顔は人を幸せにするというが、シロイルカが生来持つ「笑い顔」と「笑い声」はそれを証明しているかのようだ。もっともっと彼らを知りたい、触れ合っていきたいと心から思った。シロイルカのみんな、ハッピーな気持ちをありがとう。

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胸びれの「手」を握り、一緒にクルクル回りながらダンスした写真。上手に私をリードしてくれました

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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『グレート・ネイチャー』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 3枚組」:1万1000円
「DVD BOX 3枚組」:9800円
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※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。

地獄の季節 (by西田洋平)
2010年07月05日

ドキュメンタリー番組をこよなく愛する個性あるメンバーが、英国BBCのドキュメンタリー映像として初のブルーレイ作品となった『BBC EARTH』の各シリーズを鑑賞し、独自の視点で作品の魅力や感じたことなどを綴る当コラム。
第2回目の今回は、『BBC EARTH』のシリーズ1作目「グレート・ネイチャー」を鑑賞した西田洋平がお届けします。
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私がドキュメンタリーを見るときにいつも気になるのは、視点の公平性があるかないか。テーマとなっている事象が偏って作られていないかを見るようにしている。世に出る作品で厳正中立な作品などありえないと思いつつも・・・。

今回視聴したBBCのドキュメンタリーシリーズ『BBC EARTH』の「グレート・ネイチャー」は、動物を扱った自然ドキュメンタリーではあるものの、公平性を持って、自然の美しさや厳しさが多面的に描かれていた。その中でも一番印象に残ったのは、最初のエピソードの「氷の大融解」。HD映像を駆使して、北極に住むホッキョクグマやウミガラスなどの生態を捉えたものだった。

映像は北国の長い冬が明けて春が訪れるところから始まる。日の光が降り注ぎ、氷が解けて多くの魚や生物が活動し始める。食料が豊富になるこの季節は、多くの動物にとって天国を思わせるシーズンだが、ホッキョクグマにとっては地獄の季節の始まりとなる。陸棲で狩りをするホッキョククマにとって、氷が融けてしまうと、アザラシなどの動物が狩りづらくなるからだ。さらに近年の温暖化により、ホッキョクグマのエサ不足は絶滅が危ぶまれる状況にまで陥っている。ホッキョクグマにとっては氷雪に閉ざされた冬こそが、救いの到来になることが描かれていた。春を迎え、活動を活発化させる多くの生き物とは対照的に、この季節に苦しむホッキョクグマの姿が印象に残る。

また、ウミガラスの巣立ちを紹介する映像では、断崖から海を目指し飛び立つヒナ鳥たちをベースに自然の厳しさが映し出されていた。ヒナたちは生まれて初めて翼を広げ、海に向かって飛び立つのだが、何羽かは海までの距離に届かず海岸沿いの陸に墜落してしまう。すると、陸には落ちたヒナ鳥をエサとするホッキョクギツネが待ち構えているのだ。せっかく成長したヒナたちが次々と襲われていく光景は一見残酷だが、ウミガラスを捕らえたホッキョクギツネを追っていくと、そこには子ギツネたちがエサを待っており、キツネにも家族がいることを気づかせてくれる。

この手のドキュメンタリーは、「食う側」か「食われる側」のどちらかの視点に偏ったものが多い。そういった安易な手法を抑え、自然の営みをそのまま伝えようという姿勢にはBBCの余裕さえ感じられた。世界で初めてテレビ放送を開始した老舗放送局の上質な作品が見たい方にはオススメと言えるだろう。

ホッキョクグマの親子         ホッキョクギツネの子どもたち

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(C)BBC Worldwide Limited 2010 Distributed under licence from 2 entertain Video Limited. All right reserved.

※当コラムは『BBC EARTH』全6シリーズの発売月に合わせ、月2回以上の頻度で10月まで更新していきます。
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【今回視聴した作品情報】
■「BBC EARTH」シリーズ『グレート・ネイチャー』■
公式サイト:http://love-bbcearth.jp/
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
購入先:http://store.sonypictures.jp/item/documentary/
「ブルーレイ デラックスBOX 3枚組」:1万1000円
「DVD BOX 3枚組」:9800円
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