斬って、斬って、斬りまくれ! サムライ映画2本の予告編 『十三人の刺客』&『サムライアベンジャー 復讐剣 盲狼』
2011年01月26日
NHK大河ドラマ『龍馬伝』にハマッている。幕末を生きる人間たちの、歴史に翻弄されながらも日本を変えようとする物語から目が離せない。
『龍馬伝』の影響なのかは分からないが、今年の秋以降は『桜田門外ノ変』『最後の忠臣蔵』『武士の家計簿』など、時代劇映画が次々と公開される。今回はサムライ映画の予告編を2本紹介しよう。
1本目は『十三人の刺客』。
"監督 三池崇史 『クローズZERO』シリーズ"とのテロップから始まった。
三池崇史はホラー『オーディション』(2000年)や日本製西部劇『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』(2007年)、アニメを実写化した『ヤッターマン』(2008年)など、多岐に渡るジャンルの映画を撮っている。しかも多作で、2000年から2010年の間に監督した映画は40本近く(!!)もあり、まさに"ひとり映画工場"である。そんな三池監督は海外での人気も高い。あのクエンティン・タランティーノ監督も熱烈な三池ファンの1人だ。そういえば、タランティーノは『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』に出演も果たしている。
役所広司が扮する主人公、島田が12人の男たちを引きつれて、暴君の明石藩主である松平を暗殺する計画を実行しようとする。ちなみに本作は、工藤栄一監督の『十三人の刺客』(1963年)のリメイク版だ。
オリジナル版での松平はかなりの悪党だったのだが、リメイク版でこの役を演じるのはSMAPの稲垣吾郎。この役にジャニーズの人気タレントとは意外なキャスティングで、これは面白い。
島田が12人のサムライたちに言う。
「預かった命、使い捨てにいたす」
"使い捨て軍団"っていえば、前回このコラムで紹介した『エクスペンダブルズ』(2010年)と同じ。ということは、これは"サムライ版エクスペンダブルズ"なのか!?
13人の刺客と300人の護衛を率いる藩主の対決が迫る。
オリジナル版では敵の数は53人だったのが...300人って。流行りのRPGゲームの影響なのか、敵の数が多すぎないか?
「斬って、斬って、斬りまくれ!」
激しい戦いが始まるのだが、このシーンで流れる曲がなぜか1970年代を代表するバンド、イーグルスの名曲『デスペラード』...。
邦画で流れる英語の歌というと、思い出す作品がある。横溝正史の原作を映画化した『悪霊島』(1981年)では、あのビートルズの『レット・イット・ビー』が使われていたが、当時小学生だった僕はビートルズを知らなかったために、しばらくの間、「レット・イット・ビー」を"『悪霊島』の歌"と勝手に名前をつけて覚えていた。
キャスティングは『クローズ ZERO』(2007年)の山田孝之と高岡蒼輔、『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』の伊勢谷友介、『神様のパズル』(2008年)の谷村美月、それに脚本は『オーディション』の天願大介と、三池組のスタッフと俳優が大集結している。
三池監督が初めて手がける本格的時代劇。どんな映画に仕上がっているかという期待を込めて、劇場に向かって走れレベルは★★★★★!
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次は『サムライアベンジャーズ 復讐剣 盲狼』。
「世界中の映画祭が騒然!脅威のハイ・インパクト・ムービー、ついに日本上陸」のナレーションから始まる。
監督・主演は日本人。現在ハリウッドで活躍している光武蔵人(みつたけ くらんど)である。家族を殺されて盲目となった男が、剣を手に復讐を遂げようとするという内容だ。
盲目の主人公が登場する時代劇といえば『座頭市物語』(1962年)を始めとする『座頭市』シリーズを思い出さないわけにはいかない。『座頭市』はアメリカでも評価を得ており、ハリウッドではリメイク版『ブラインド・フューリー』(1989年)が製作された。他にも『盲目ガンマン』(1971年)という西部劇もある。
『サムライアベンジャー』も斬りまくっているが、刀で斬られて血が噴水のように出るスプラッター・ムービー系の描写に加え、ゾンビまで登場。ごった煮の感覚が満載の映画だが、予告編を観るかぎりかなりのインパクトがある。
この予告編を観て頭に浮かんだのがクエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル Vol.1』(2003年)である。『キル・ビル Vol.1』のクライマックスでも激しいチャンバラが繰り広げられていたが、これは若山富三郎主演の映画版『子連れ狼』シリーズ(1972~1974年)にタランティーノ自身が強い影響を受けていたからだといわれている。アメリカでは、シリーズ1作目『子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる』(1972年)と2作目『子連れ狼 三途の川の乳母車』(1972年)を1本にまとめて公開された『Shogun Assassin』(1980年)の影響だが、タランティーノは自作で『子連れ狼』の人斬りシーンを再現したかったのだろう。
タランティーノは自分の好きな作品のシーンをあからさまに引用する特徴がある。監督デビュー作『レザボアドッグス』(1991年)だって元ネタは香港映画『友は風の彼方に』(1986年)だし。光武監督は「自分が大好きな作品の影響を受けた作品を作るタランティーノの作品に影響を受けた監督」なのかもしれない。『サムライアベンジャー』も時代劇や西部劇、ホラーなど、監督の好きなものをありったけ詰め込んだ作品になっているようだ。
こういう映画、好きですよ。もし自分が映画を監督していいと言われたら、こんな映画になりそうだし。それに『サムライアベンジャー』には『パルプ・フィクション』(1994年)の渋い脇役、アマンダ・プラマーも出演している。そんなところにもタランティーノの足跡を見つけることができる。
『サムライアベンジャー』はすでに公開済みでDVDがリリースされている。新しい才能を見つけるためにレンタル屋に向かって走れレベルは★★★★★!
今回注目した予告編
『十三人の刺客』と『サムライアベンジャー 復讐剣 盲狼』
★『十三人の刺客』
監督:三池崇史
脚本:天願大介
出演:役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、高岡蒼輔
制作国:日本
9月25日より公開中
公式サイト:http://13assassins.jp/main.html
★『サムライアベンジャー 復讐剣 盲狼』
監督・脚本・主演:光武蔵人
出演:ジェフリー・ジェームズ・リボルド、ドミチアーノ・アーカンジェリ、
アマンダ・プラマー
制作国:アメリカ
公開済み。8/27よりDVDリリース
公式サイト:http://www.samurai-avenger.jp/index.html