リメイク映画2本を斬る!『ベスト・キッド』&『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』
2011年01月26日
リメイク映画2本の予告編
『ベスト・キッド』&『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』
バック・トゥ・80年代な気分になれる予告編!
最近ハリウッドではリメイク映画が多い。新しいアイディアがないなら昔の映画をリメイクしようという考えからか、テレビドラマや往年の映画のリメイクした作品が目立つ。『オリジナル版を好きなファンとしては複雑な心境だが、どうやってリメイクされているのかと気になって、今日も映画館に足を運ぶ。今回紹介するのは、80年代のテレビドラマと映画をリメイクした作品の予告編である。
まずは、『ベスト・キッド』である。
予告編を観る前に、この映画について説明します。オリジナルの『ベスト・キッド』(1984年)は、東海岸からカリフォルニアに転校してきた高校生ダニエル(ラルフ・マッチオ)が、不良にからまれたところを日系人のミヤギ(ノリユキ・パット・モリタ)に助けられる。自分の身を守るためにミヤギから空手を習い、空手大会に出場するという物語である。
監督は『ロッキー』(1976年)のジョン・G・アヴィルドセンで、青春とスポーツを組み合わせた構成は『ロッキー』に似ている。『ベスト・キッド』は大ヒットし、のちに続編が3本製作された。ちなみに『ベスト・キッド4』(1994年)には当時無名だった『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)のヒラリー・スワンクが主演していた。『ベスト・キッド4』の出来は決していいとは思えないが、空手を通したミヤギとスワンクの関係は『ミリオンダラー・ベイビー』におけるクリント・イーストウッドとスワンクの関係に似ている...かもしれない。
では予告編を観てみよう。
主人公ドレ(演じるのはウィル・スミスの息子、ジェイデン・スミスである)が中国での新しい生活を始めるために、母親と北京へ行く。
母親と北京での暮らしを始めたドレだが、「少年を待ち受けていたのは...」というナレーションと共に、いかにも乱暴そうでガキ大将みたいな男子が登場する。予想通り、ドレはガキ大将にボコボコにされる。
「もう家に帰りたいよ!」とせがむドレに、母親は「ここが家なのよ」と答える。そう、逃げる場所はないのだ。
ふたたび、ガキ大将のイジメにあうドレ。そこで登場するのは...
ジャッキー・チェン!
ジャッキーは言う。「いじめを止めたいのなら、立ち向かえ。私が教えよう」
そしてトレーニングが始まる。
「上着を脱いでかけろ」とジャッキーに言われて、木に上着をかけるドレ。しかしジャッキーは「それを取れ」、「それを着ろ」と言う。言われるままにするドレ。上着をかけて、取り、着る。この動作を繰り返させるジャッキー師匠。
オリジナルの『ベスト・キッド』を観た人には、ピンとくる場面である。自動車のワックスをかけろと言うミヤギが、ダニエルに「右手でワックスをかけ、左手でワックスを拭くのじゃ」と命ずるシーンがある。この訓練が何のためなのか分からないまま、ダニエルはワックスをかけて拭く動作を繰り返す。だが、それが空手の防御になる訓練だとダニエルは気づく。ドレが特訓を受けるシーンは、ジャッキー・チェンの出世作『スネーキーモンキー/蛇拳』(1976年)や『ドランクモンキー/酔拳』(1978年)でジャッキーが修行する場面を思い出す。ドレをいじめるガキ大将がいる空手道場の師範が登場するが、この師範を演じるのはユー・ロン・グアンである。ユー・ロン・グアンは『香港国際警察 NEW POLICE STORY』(2004年)でジャッキー・チェンと敵対する刑事を演じていた。
最後にジャッキーがハシでハエを捕らえようとするシーンで予告編は終わる。これもオリジナル版でミヤギが「ハエをつかむ者はすべてを制する」と言ってハエを捕まえようとするシーンを思わせる。リメイク版でも、ジャッキーがハエを捕まえるかと思ったら...。
予告編を観て、今から前売り券を買っておきたいレベルは★★★★である。
(★五つが満点)。
星ひとつ減点の理由は、主人公が中国で空手の訓練をするという設定に疑問だからである。それにジャッキー・チェンは空手ではなくカンフー映画スターですから。せっかくジャッキーが師匠の役を演じるのなら『カンフー・キッド』にすればいいのに。
でも、中学生の時からジャッキーの映画を観ていたファンにとっては"ジャッキーに指導されて武術の特訓をする"という憧れの設定だから、この映画は期待してもいい。
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続いては、『特攻野郎Aチーム MOVIE』の予告編である。
『特攻野郎Aチーム』は、1985年から1988年に日本でも放送されたドラマである。土曜日の午後3時に放送されていたので、当時高校生だった私は3時前に家に帰るようにして観ていた。この時代は"ゆとり教育"という優雅なものはなかったので、土曜も授業は普通にあったのである。
予告編を観る前に、80年代に日本でも放送されたこのドラマについて説明します。
ベトナム戦争でならした特攻部隊の兵士であるハンニバル、フェイスマン、マードック、B・A・バラカスの4人は、濡れ衣を着せられアメリカ当局に逮捕された。だが刑務所を脱出した彼らは、弱き者を助けて悪を倒す正義の味方、Aチームとなる。
さっそく予告編を観てみよう。まずは裁判所で「当法廷はアルファ部隊、別名Aチームを10年間の刑にする」と判決を受けるシーンから始まる。オリジナル版が放送された80年代ではベトナム戦争に出撃したAチームだったが、リメイクではイラク戦争に変更されている。
Aチームのリーダー、ハンニバル大佐を演じるリーアム・ニーソンは『96時間』(2008年)でもアクション映画の俳優として活躍している。他のメンバーもフェイスマン(ブラッドリー・クーパー)をはじめ、マードック(傑作『第9地区』のシャールト・コプリー!)、B・A・バラカス(格闘家のクイントン・"ランペイジ"・ジャクソン)に扮する俳優はドラマ版のキャストに近い雰囲気を持っている。そしてAチームを追うのは『ブレイド3』(2004年)に出ていたジェシカ・ビールと『ウォッチメン』(2009年)のパトリック・ウィルソンである。
そして、モヒカンヘアの屈強な男、BAバラカスは飛行機を見て言う。
「飛行機だけはカンベンな」。
このセリフを聞いてピンときた人は、ドラマ版『Aチーム』が好きな人ですね。
実はバラカスは飛行機に乗るのが大嫌いなのである。もし飛行機で移動する必要がある時は、睡眠薬を飲まされたりして飛行機に乗せられるという"お約束の展開"がドラマには出てくる。このセリフを聞くだけでドラマのファンは嬉しくなるのだ。
予告編ではAチームが派手なアクションを展開し、ジェシカ・ビールが「連中はバカをやらせたら天才」と言う。ハイ、その通りです。Aチームは無敵ですから。そしてドラマ版『Aチーム』の特色として、激しい銃撃戦や爆発、カーチェイスはあるが死人が出ない点である。悪党は罰するが命までは奪わないという健全なアクションドラマだったが、このポイントもリメイク版では守られていると信じている。
今回のリメイク版「Aチーム」の監督はジョー・カーナハンである。カーナハンは麻薬捜査官の実態をリアルに描いた『NARC/ナーク』(2002年)で監督デビューし、注目を浴びる。『NARC』を観たトム・クルーズがカーナハンを『ミッション:インポッシブル3』の監督に抜擢するが、クリエイティブ面での意見の相違で降板。その後『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』(2007年)を撮る。『スモーキン・エース』は殺し屋、マフィア、FBIが入り乱れたアクション・クライム・コメディだったが、カーナハン監督が「三池崇史監督が作るような映画を目指した」というとおり、ハジけた映画になっていて、個人的には好きな作品である。そして今回のリメイク版『Aチーム』の予告編を見るかぎり、カーナハンが得意とするアクションとコメディがうまく作用していると思うのだ。
予告編にはドラマでも使われていた音楽が流れて、ファンにはたまらないですね。
正直言って、このドラマの映画版を映画館のスクリーンで観る日が来ようとは夢にも思わなかった。この予告編を見た瞬間、自分が"土曜日の高校生"に戻りました。いくつになっても、心に学ランを着る人間にとっては至福の予告編である。
よって、今から前売り券を買っておきたいレベルは文句なしの★★★★★!
でも、つまらないリメイクだけはカンベンな!
今回注目した予告編
『ベスト・キッド』と『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』
★『ベスト・キッド』
監督:ハラルド・ズワルト
脚本:クリストファー・マーフィー
出演:ジャッキー・チェン、ジェイデン・スミス
製作国:アメリカ
2010年8月14日より公開
公式サイト:http://www.bestkid.jp/#
★『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』
監督:ジョー・カーナハン
脚本:ジョー・カーナハン、ブライアン・ブルーム、スキップ・ウッズ
出演:リーアム・ニーソン、ブラッドリー・クーパー
2010年8月20日より公開
公式サイト:http://movies.foxjapan.com/ateam/#