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韓流パワーは、まだまだ止まらない!?
韓国映画2本の予告編!

2011年02月24日

【written by 鈴木純一(すずき・じゅんいち)】映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
【最近の私】「午前十時の映画祭」で念願の『フォロー・ミー』を観ました。ミア・ファローが可愛かったです。映画のように、可愛い女の子の追っかけ(フォロー)をしたくなりました。でも現実で女の子を追いかけたら単なるストーカーだって!
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韓流映画が日本でもブームとなって久しい。自分にとってのブームは、今思うと『復讐者に憐れみを』(2002年)から始まった。先が読めない展開に驚いたが、復讐を遂げようとする人間たちの怒り、そして壮絶な暴力描写に「韓国映画は、"やりすぎ(いい意味ですよ)"をためらわない!」と、欧米のメジャー作品とは一味違うものを感じた。その後も『殺人の追憶』(2003年)や『チェイサー』(2008年)、『息もつけない』(2008年)など、数々の衝撃的な映画を世界に突きつけてきた韓国映画界。今回はそんな"やりすぎ"遺伝子を継ぐ作品の予告編を紹介しよう。

まずは『悪魔を見た』の予告編から。
フリードニヒ・ニーチェの「怪物と闘う者は、自らが怪物と化さぬよう心せよ。お前が深淵を覗き込む時、深淵もまたお前を覗き込んでいるのだ」というテロップ。 婚約者を殺されたスヒョン(イ・ビョンホン)は誓う。 「君の苦しみを、そいつに倍にして返してやる」 悲しみは絶望となり、彼は怪物へと姿を変えた。

イ・ビョンホンは、いい男系な韓流スターというより、『甘い生活』(2005年)で復讐を果たそうとするヤクザや、オムニバス映画『美しい夜、残酷な朝』(2004年)では究極の選択を迫られる映画監督を演じるなど、痛い目に遭う役を演じていたので、意外にバイオレンス系な俳優なのではと個人的に思っている。
スヒョンは、ついに殺人犯ギョンチョルと対峙する。殺された恋人の復讐を遂げる...となるはずのところが、なんと犯人を逃がしてしまうのだ。なぜか?

ギョンチョルも、殺されなかったことを不信に思い、「あいつは何者だ?」とつぶやく。
ギョンチョル役は『オールド・ボーイ』(2003年)や『親切なクムジャさん』(2005年)の、こちらは文句なしのバイオレンス系俳優チェ・ミンシク。

実は、スヒョンはギョンチョルにGPS(全地球測位システム:どこにいるか分かる機器のこと)入りのカプセルを飲ませたのだ。捕まえた犯人を解放し、そしてさらに狙い続けるという恐ろしい復讐を始める。
でも、カプセルを飲んだとしても次の日にはトイレで体外に出るという疑問も湧くが......それは劇場で確認します。
しかしギョンチョルは、恐れるどころか「俺を甘く見るな!」と逆に怒りに狂う。
殺人犯を甘く見たら、大変なことになります。
予告編は、ここから暴力のスパイラルがすごい勢いで回転し始めた。
悪魔と化した男たち2人の対決はすさまじいことになりそうだ。
「だんだん残酷になる」と言うスヒョン。「面白い」と微笑むギョンチョル。
韓国では、日本の映倫にあたる等級委員会から、あまりの残酷さに上映が却下。編集の末に、やっと18歳未満禁止で上映が可能になった。日本でももちろん18歳未満禁止で公開! 予告編の断片的な映像からも、その凄さは伝わってくる。
ギョンチョルがつぶやく。「俺は、苦しみなど知らん」

本当の悪魔は殺人犯のギョンチョルか、それとも復讐に燃える男スヒョンなのか。
『悪魔を見た』がエンディングを迎えた時、観客は絶望の果てに何を見るのか。(そのためには、極限の暴力シーンもしっかり見届けなくては)

        * * * * * * * * * *

次は『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』の予告編だ。
タイトルを聞いて懐かしく思った人も多いだろう。そう、香港映画の金字塔『男たちの挽歌』(1986年)のリメイク版である。

オリジナル版は、かつて黒社会(ヤクザ社会)で生きてきたホーと弟分のマークが、失ってしまった自分の誇りを取り戻そうと戦う、男泣き必至(女性の観客でも)の傑作で、日本でも大ヒットした。マークに扮したチョウ・ユンファが二挺拳銃を持って殴りこみをかけるシーンは、本当にカッコよかった。

今回の映画は厳密に言うとリメイクではなく「再覚醒(リウェイク)」らしい。眠っている名作映画を、再度作り直す(覚醒させる)の意味であるが、これって言葉を変えただけで、リメイクと同じ気がしますが。自分はオリジナル版をリアルタイムで観て虜になり、「男たちの挽歌Tシャツ」も持っている。心に二丁拳銃を持つ者(自分みたいなファン)としては、寝た子は起こさなくてもいいのにという不安もある。ちなみに、"A BETTER TOMORROW"とはオリジナル版『男たちの挽歌』の英語タイトルと同じだ。

「幼い日、離ればなれになった兄弟」
兄が弟を置いて脱北し、韓国でヤクザをしているという設定だ。韓国映画らしい変更ですね。『義兄弟 SECRET REUNION』(2010年)でも北朝鮮のスパイと韓国の諜報員の友情が描かれていたし。でも予告編ではそれ以外にオリジナル版とはそう違いはないように見える。

『悪魔を見た』の予告編に漂っている"ドス黒い高揚感"に比べて、『男たちの挽歌』の予告編にはあまり特徴がないように感じた。主演のソン・スンホンやチュ・ジンモに心酔する女性ファンへの気配りなのかも。韓流スターのプロモーションビデオのような予告編である。
ところが!!!
終盤で流れるCHEMISTRYの歌に耳が止まってしまった。
「僕たちは~♪僕達の夢を~...」
ちょっと待て。何だよ「僕」って!?
『男たちの挽歌』だぞ、『僕たちの挽歌』にしないでくれよ!

心に2丁拳銃を持つ者(自分みたいなファン)としてはちょっと納得がいかない。

でもね、韓国の製作サイドに罪はない。日本での宣伝方針なのだから。
実直な映画ファンの間では常に物議をかもしている「洋画なのにエンドクレジットで流れるのが日本の歌現象」である。

『ウォーロード/男たちの誓い』(2008年)や『エクスペンダブルズ』(2010年)でもそうだった。自分が劇場で観た時は失笑が起きていた。大人の事情があるかもしれないが、ちょっと考えてもらいたい宣伝方法である。

オリジナル版『男たちの挽歌』でマークはこう言った。
「奴らを見返してやりたい。失ったものを取り戻したいんだ!」。
オリジナル版を越えられるわけがないと思っている奴ら(自分を含む)を見返すような映画であってほしい。
そんな期待を込めて、僕は(「男たちの挽歌Tシャツ」を着て)映画館に行きます......じゃなくて、俺は映画館に行くぜ!

今回注目した予告編 

『悪魔を見た』『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』


★『悪魔を見た』
監督:キム・ジウン
出演:イ・ビョンホン、チェ・ミンスク
2011年2月26日より公開
公式サイトhttp://isawthedevil.jp/


★『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』
製作総指揮:ジョン・ウー
監督:ソン・ヘソン
出演:チュ・ジモン、ソン・スンホン
2011年2月19日より公開
公式サイトhttp://banka2011.com/top.html